つまり、パン屋を個別に指摘したのではなく、指摘を受けた出版社側が自主的にこの個所を選んで修正した結果という訳だ。
この教科書を提出した出版社は「確かに、教科書全体として『我が国』に該当する部分が充足していないとの指摘を受けました」と、事の経緯を話す。
「まず、話題になったのは祖父と一緒に近所を散歩する女の子の話です。事前に学習指導要領をチェックし、小学生に身近な国土とは何かを考え、話の中で神社やイチョウ並木などを登場させていましたが、不十分だったようです。そのため、友人の家が営むパン屋に立ち寄る場面を、和菓子屋に変更しました」
と述べる。和菓子屋を選んだのは、和菓子の「日本文化的である点と、四季の変化が表現されるという特徴」が、項目を充足させるために相応しいと判断したからだという。
■出版社「指摘内容によっては対応できる部分が決まってくる」
パン屋の記述外にも、「わが国や郷土の文化」という視点が不足していると指摘された教材は多々ある。学研教育みらいの『みんなのどうとく』(1年)もその1つで、公園のアスレチックの写真が和楽器店に変更された。同社の編集部は、
「和楽器店よりアスレチックのほうが子供達にとっては身近だと思いますが、検定を通過するためには指摘された意見を反映させなければいけませんので、こうした差し替えをしました」
と苦労を滲ませる。他のページでも、土手で花を見る写真を、公園で親子が凧揚げをしている写真に変更したという。検定意見を受けてから再提出するまでの35日間で6学年すべての教材を作り直さなければならないため、元々の話のあらすじを損なわずに意見を反映させるには、写真の差し替えが最適という結論に至ったのだ。