開学3年目へ農工連携意欲 経営と生産の養成を深化 静岡県立農林環境専門職大学長/鈴木滋彦氏【本音インタビュー】

2022.3.13

 農林業で全国初の専門職大として磐田市に開学し、2022年度に3年目を迎える。前身の県立農林大学校は今春最後の学生が卒業し、閉校する。農林業経営と生産のプロフェッショナル養成を掲げる専門職大の運営状況や目指す方向性を聞いた。

鈴木滋彦氏
鈴木滋彦氏


 ―2年間の運営は。
 「目指すのは経営の視点を持ち、農山村の地域リーダーとして活躍できる人材育成。本県農林業の未来を切り開く使命を持った大学。新型コロナウイルス禍で初年度は開学直後に休校という異例のスタートになった。ただ、豊富な実習・演習が特徴だけに、2カ月後にはオンラインから感染防止対策を徹底して対面授業に切り替え、コロナ禍でも順調にカリキュラムを進行した。大学初の卒業生となった短期大生の就職先は、農業法人や関連団体など多様。これまでの農林大学校の進路実績に支えられた」
 ―大学の浸透度は。
 「4年制大学の定員は24人。推薦入学を除く12人に対し、過去3回の受験は4倍~3倍程度の志願があった。2年制の短期大は、募集が秋以降になった初年度を除き定員100人を満たしている。知名度は課題で、県内外の農業高校長へのPRの機会を増やしている。21年は新校舎が完成し、22年は1年生が全員入る新学生寮が供用開始になる。教育設備環境はほぼ整った」
 ―地域との連携は。
 「今後の農業は人工知能(AI)など最新技術と切り離せない。磐田市は製造品出荷額と農業産出額がいずれも県内トップ級。農工業のバランスが取れたこの地域に大学が立地することは非常に利がある。輸送機器や光分野など多様な産業の研究力や経営力に学ぶ点は多い。市が立ち上げた産学官組織『未来の農林業連携懇話会』にも参画し、地元のヤマハ発動機と無人ヘリを使った森林計測で連携している。技術者を通じ最新のテクノロジーや情報に触れられる機会は貴重」
 ―今後の展望は。
 「SDGs(持続可能な開発目標)推進の動きなどを背景に、命をはぐくむものを生み、成長させる農林業が注目されている。本県は豊かな農業県で、ビジネスとして成り立つ素地がある。自ら農業生産法人の立ち上げに関わり、中核人材として活躍できる経営マインドを持った学生を育てたい。産業界や地域からの意見要望を取り入れた教育の提供で、学生に選ばれる魅力ある大学づくりに励む」

 すずき・しげひこ 静岡大農学部長、同大国際戦略担当副学長を経て2020年4月から現職。袋井市出身。68歳。

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