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進 履 橋 「新陰流兵法の書」 |
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○ |
三学 |
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一 身構 一 手足 一 太刀 右の三个を以て、初学の門として、是より学び入るべし。 |
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○ |
三学に就き、又五ヶの習 |
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一 身を一重になすべき事 一 敵の拳を我肩にくらぶべき事 一 我拳を楯につくべき事 一 左の肱を延ばすべき事 一 さきの膝に身をもたせ、あとの膝をのばすべき事 |
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○ |
右 三学の初手 是はかまへ也。 |
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初手を車輪と云ふ。是は太刀の構也。まはるを以て、車と名付けたり。脇構なり。左の肩をきらせて、きるに隋つて、まはりて勝つ也。ひきくかまゆべし。惣別かまへは敵にきられぬ用心なり。城郭をかまへ、堀をほり、敵をよせぬ心持也。敵をきるにはあらず。卒尓にしかけずして、手前をかまへて、敵にきられぬやうにすべし。故に先づ構をはじめとする也。 |
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一 一刀両段 一 斬釘截鉄 一 半開半向 一 右旋左転 一 長短一味 右、一々立相の習、口伝にあり、書き顕はし難し。 |
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○ |
九箇 |
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一 必勝 一 逆風 一 十太刀 一 和卜 一 捷径 一 小詰 一 大詰 一 八重垣 一 村雲 右、師弟立相ひて以て之を教へ、書面に顕はし難し。 |
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○ |
天狗抄 太刀数八 |
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一 花車 一 明身 一 善待 一 手引 一 乱剣 一 序 一 破 一 急 |
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右の外太刀数六 一 添截 一 乱載 一 極意 一 無二剣 一 活人剣 一 神妙剣 右の数々を能々習ひ得て、此の中より、千手万手をつかひ出すべし。三学九ヶなどと云ふは、大体を云ふ也。此道をよく得てより、太刀の数を伝ふべからず。 |
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○ |
策を帷幄の中に運らして、勝つことを千里の外に決す。 |
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此句の心は、幕をうち、その中に居ながら様々のはかりごとをなして、千里の外の敵に勝つと也。然れば、此句を兵法に簡要と用ゐる心は、我胸の内を帷幄の中と心得べし。わが心のうちに油断もなく、敵のうごき、はたらきを見て、様々に表裏をしかけ、敵の機を見るを、策を帷幄の中に運らすと心得べし。さてよく敵の機を見て、太刀にて勝つを、勝つことを千里の外に決すと心得べし。大軍を引きて合戦して勝つと、立相の兵法と、かはるべからず。太刀二つにて立相ひ、切合ひて勝つ心を以て、大軍の合戦にかち、大軍の合戦の心をもって、立相の兵法に勝つべし。太刀さきの勝負は心にあり。心から手足をもはたらかしたる物也。 |
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○ |
序破急に就き、三九廿七ヶの截相の事 |
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○ |
序 上段三 中段三 下段三 |
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破 上段三 中段三 下段三 刀棒 切合 截甲 |
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急 上段三 中段三 下段三 上中下何も一拍子 |
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右 此の一巻は、師弟立相ひ、教ふべく習ふべきを以て、委曲に書述ぶるに及ばず。右の目録相窮むる人に於ては、此の一巻を以て之を書写して授け、以て門弟の証と為すべき者なり。子孫の為に之を誌す。 |
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上泉武蔵守 藤原 秀綱 |
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亡父 柳生但馬守 平 宗厳 |
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的子 柳生但馬守 平 宗矩 |
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○ |
此一巻を進履橋と云ふ事は、張良、曾て石公に履をすゝめて、兵道を伝へて後、張良がはかりごとにより、高祖天下を治め、漢家四百年を保ちし也。是によりて、其心を取りて進履橋と名付けたるなり。此一巻を橋となして兵法の道をわたるべしと也。 |
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