4月の開設に向けて漫画が陳列された宝達志水町まんが図書館=同町広域勤労青少年ホーム

  ●先行地はエヴァも制限

 宝達志水町が4月に開設する北陸初の公立まんが図書館で、町は10日までに子どもに配慮し、過度な暴力、性的、反社会的な表現がある漫画を陳列しないことを決めた。町は4万5千冊のうち1割程度を除外対象とする予定だが、同様の施設を持つ全国の自治体で制限されている「ゴルゴ13」「ルパン三世」「進撃の巨人」は閲覧できる。「有害図書」の明確な線引きはなく、どの漫画を陳列するか制限するかの判断は意見が分かれそうだ。

  ●ルパン、鬼滅も○

 まんが図書館は、宝達志水町北川尻の町広域勤労青少年ホームに開設される。23日に書棚91基に並べた少年・少女漫画、青年・レディース本から有害図書を選定する。町職員は「相談しながら子どもに見せていいか判断する」と説明する。

 出版当時は差別用語でなかった言葉が出てくる「ブラックジャック」や、町ゆかりの末森合戦が描かれた「花の慶次」も陳列される予定だという。

 一方、北九州市漫画ミュージアムでは「ルパン三世」「ゴルゴ13」など泥棒や暗殺者が主人公の作品の閲覧を制限している。書棚を約140センチの高さで「上段」「下段」に区切り、子ども向けの本は手の届く下段に陳列している。

 過激な描写が登場する「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」「進撃の巨人」は、テレビなどで公開されていることを理由に制限をかけていない。北九州市漫画ミュージアムの担当者は「明確な基準はなく判断は難しい」と話した。

 広島市まんが図書館は、図書館独自に中学生卒業時から読むのが望ましい漫画を決めている。人間を食べるシーンが多く出てくる「進撃の巨人」などが対象という。

 宝達志水町は、まんが図書館を新たなにぎわい創出の拠点に位置付けるが、町民からは「子どもにふさわしくない本もある」との声が上がっていた。3日の町議会3月定例会一般質問でも、差別的な本や過度な描写がある本を制限すべきとの指摘があり、漫画本の選別を行うことにした。

 宝達志水町の高下栄次副町長は「さまざまな漫画を読むことで学べる知識は多い。できる限り陳列したい」と話した。

  ●住民と議論重ね慎重に 金沢学院大・中川講師

 図書館情報学が専門の金沢学院大の中川恵理子講師は収集、保存、提供などが役割の「図書館」は資料提供の自由が原則となるとした上で「有害図書についてはこれまでも、さまざまな議論があり、何を有害図書にするか線引きが難しい。よい施設にするために町と住民が議論を重ねて慎重に決める必要がある」と指摘した。

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