宅建試験に合格するためには,広い範囲の分野を正確に理解しなければなりません。
しかし,試験である以上,効率よく合格を目指すことが大切です。
そこで,試験内容を簡単に紹介し,次に試験戦略という観点から押さえておくべき事柄について解説していきます。
宅建試験の試験内容
効率のよい勉強をする上で,試験の全貌をしっかりと把握する必要があります。
そこで,これから宅建を受けようと考えている人に向けて,宅建がどのような試験であるかを簡単に紹介したいと思います。
試験の概要
不動産取引のエキスパートになるための国家試験
宅地建物取引士とは不動産取引にかかわる専門家であり,法律上,宅地建物取引士にしかできない業務が定められています。
不動産業界や建設業界で人気のある資格ですが,宅地建物取引士になるためには宅地建物取引士試験という国家試験に合格する必要があります。
申込者20万人以上の超人気試験
平成28年度は,245,742人もの人が宅建試験を申し込んでいます(受験者は198,463人)。
先ほども述べたように,法律上,宅地建物取引士にしかできない業務が定められている上,宅建業者(いわゆる不動産屋)の事務所では従業員の5人に1人以上の割合で宅建士を置くことが義務付けられているため,様々な業界で重宝されている資格です。
初心者でも合格を狙える
平成28年度の合格率は15.4%と難しいように思えますが,後述する試験戦略を参考に,数か月間集中して勉強をすれば,初心者でも十分合格をすることができます。
試験科目
宅建は4肢択一式によるマークシート式(計50問)で行われ,大きく分けて,①宅建業法,②権利関係(民法など),③法令上の制限,④税・その他の4科目に分類することができます。
1.宅建業法
正式には宅地建物取引業法といい,宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施する等,宅地建物取引業に対して必要な規制を行うために定められたものです。この科目は基本的な問題が多く点数が取りやすいので,高得点を狙いましょう。
2.権利関係(民法など)
この科目では,不動産に関する権利関係について問われます。具体的には,民法,借地借家法,区分所有法,不動産登記法から出題されますが,難しい問題が多く点数を稼ぎにくい科目ですので,深入りせずに基本事項を押さえることが大切です。
3.法令上の制限
この科目では,土地の利用に関する法令上の制限について問われ,具体的には都市計画法や建築基準法等,様々な法律の中から出題されます。初めて見る言葉がたくさんある上に暗記すべき事項が多いため,言葉の意味を具体的にイメージすることが大切です。
4.税・その他
税金では,登録免許税や固定資産税等,不動産に関する税について出題され,その他の部分では,鑑定評価や土地,建物等について出題されます。税・その他は疎かにされがちな科目ですが,過去問を解いて出題傾向を把握することが重要です。
宅建試験の試験戦略
戦略1目標点を設定する
目標点を設定する意味
宅建の例年の合格率は15%~18%と低く,難関試験のひとつとされています。
難しい理由として,出題範囲が膨大である点が挙げられます。そのため,効率よく勉強するためにはゴールを明確にする必要があり,目指すべきゴールとして目標点を設定することが重要になります。
過去の合格点からみる目標点
過去5年間の合格点を見ても分かるように,宅建の合格点はおよそ31~35点の間を推移してきました。
そこで,確実に合格することを目指すために,目標点として36点を目指して勉強することをお勧めします。
2016年(平成28年) 35/50点
2015年(平成27年) 31/50点
2014年(平成26年) 32/50点
2013年(平成25年) 33/50点
2012年(平成24年) 33/50点
科目別の具体的な目標点
1.宅建業法(16~17点)
宅建業法は,例年20問出題される科目であり,全科目の中でもっとも配点の高い科目です。
また,出題範囲も似たような問題が繰り返し出題されるため,得点源となる科目です。
全問正解を目指そう!と言いたいところですが,現実的な戦略として,16,17点を目標にしましょう。
2.権利関係(7~8点)
権利関係は,例年14問出題される科目であり,配点は高いのですが,範囲が膨大であるだけでなく,細かい知識も問われるので,目標として7,8点を取れれば十分です。
戦略的な観点からも,あまり深入りせず,ポイントを押さえて勉強することが大切です。
3.法令上の制限(6点)
法令上の制限は,例年8問出題されます。
暗記しなければならない事項が多い科目ですが,正確に暗記さえしていれば確実に得点が取れるため,宅建業法と並んで得点源となる科目といえます。6点を取れるのが理想的です。
4.税・その他(5~6点)
この科目は,法令上の制限と同じように,例年8問出題されます。
その範囲は,税金の知識から地価公示法,不動産鑑定評価基準など,相当広くなっており,対策がしにくい科目です。
そこで,現実的な目標として5,6点を目指して勉強の計画を立てましょう。
戦略2問題を解く際の留意点
1問2分で解く
宅建は,4肢択一式によるマークシート式(計50問)で,試験時間は2時間です。
単純計算をすると,1問につき2分24秒で解かなければなりません。
しかし,本番になると,多くの受験生は慎重になってしまい,時間が足りなくなる場合が少なくないので,普段から1問を2分で解く訓練をすることをお勧めします。
難しい問題は捨てる
宅建の過去問を解いてみると,非常に細かい知識が問われ,どれだけ考えても正解に辿り着けそうにない問題に出くわすことがあります。
このような場合,時間をかけて思い出そうとするよりも,思い切って捨て問として割り切り,他の問題に時間を割くべきです。
なぜなら,時間不足によって確実に正解できる問題を落とすおそれがあるうえに,例年正答率が50%を超える問題が40問近く出題されるので,これらの問題をしっかり正解さえすれば,2,3問程度捨て問としても目標点をクリアすることができるからです。