JR東日本・信越線の直江津(新潟県上越市)-新潟間を直通する特急列車が、12日のダイヤ改正で減便される。感染禍の影響などによる利用客減少に伴う措置で、特急列車の減便は2015年の北陸新幹線開業後では初となる。上越地域ではJR西日本・大糸線の糸魚川-南小谷(おたり)(長野県小谷村)間の存続も危ぶまれる事態となっており、鉄路を取り巻く環境は急速に厳しさを増している。
減便となるのは、直江津-新潟間を最速1時間40分程度で結ぶ特急「しらゆき」。えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインにも乗り入れ、上越妙高駅で北陸新幹線と接続する。改正では1往復が廃止され、直江津発は午後5時38分発が最終列車となる=ダイヤ参照=。
さらに、早朝に直江津、夜に新潟を発車する快速「信越」も廃止。代替措置として、直江津-長岡間の快速が新設される。
北陸新幹線開業以来、JR東はしらゆきの1日5往復を維持していた。減便に踏み切った理由について、新潟支社広報室は「廃止する列車はいずれも利用客が非常に少なかった」と説明している。
上越地域の鉄路を巡っては、JR西日本は2月3日、利用が低迷する大糸線の糸魚川-南小谷間について、沿線自治体などと「持続可能性について議論する場を設ける」と発表した。事実上の廃止となるバス転換も議論される見通しだ。
◆関係者ら悪循環懸念「新潟 遠くなるばかり」
上越地域と県都を結ぶ特急しらゆきは、マイカーや高速バスに押され、苦しい営業を余儀なくされている。今回の減便でさらに利用者が減る悪循環に陥らないか、上越市などの沿線自治体や商工関係者からは懸念の声が出ている。
1日午後8時半ごろ、直江津駅の2番線ホーム。新潟行きの「しらゆき9号」に乗り込んだのは、わずか3人だった。計約270人が乗れる4両編成は、閑散としていた。
県が2020年、新潟・長岡地域の住民を対象に、上越地域3市を訪れる際にどの交通手段を使うか尋ねたインターネット調査では、95%が「自家用車」と回答。「鉄道」は3%弱にとどまった。
県や上越市、柏崎市など信越線の沿線自治体は毎年、国やJRに特急の本数維持を要望。本年度は乗客向けに地場産品が当たる抽選キャンペーンも開くなど、利用促進策を講じてきた。
上越市企画政策部の池田浩部長は「減便はJRの経営状況を考えるとやむを得ない。これ以上の減便で移動に支障を来さないよう注視したい」と話す。
午後8時22分直江津発の普通列車が新設されるが、新潟までの所要時間は、北陸新幹線の上越妙高-東京間を大幅に上回る約3時間に及ぶ。
県内の鉄道ファンらでつくる「鉄道友の会」新潟支部長の中村稔さん(75)=上越市=は、「新幹線で東京は近くなったが、新潟は遠くなるばかりだ」と肩を落とした。
今回のダイヤ改正で、特急の直江津発最終は夕方の5時台となる。上越出張の帰りに、直江津駅前で一杯飲むビジネス客も減りそうだ。しらゆきに乗車した新潟市の会社員男性(36)は、「上越の知り合いと夕飯を食べてから帰ることができなくなる」と残念がった。
宴会場がある直江津駅前の「ホテルセンチュリーイカヤ」の荻野康次郎専務(34)は「最終のしらゆきがあるから飲んでいく、という人もいた。これからどう影響が出てくるか」と不安を口にした。
◆トキ鉄 新幹線接続列車を新設 上越妙高―直江津間
上越妙高駅に乗り入れ、北陸新幹線と接続していた特急「しらゆき9号」が廃止されることを受け、えちごトキめき鉄道は12日から、新幹線からの乗り換え客をターゲットとした普通列車「おかえり上越」を上越妙高-直江津間で運行する。
おかえり上越は上越妙高を午後8時28分に出発。南高田や高田、春日山の各駅に停車し、直江津へ8時43分に到着する。直江津午後7時54分発、上越妙高8時10分着の普通列車も運行する。
今回のダイヤ改正では、上越妙高を午後8時24分に発車するしらゆき9号と、直後の普通列車(いずれも直江津方面行き)が廃止される。
上越妙高に午後8時台に到着した乗客は、在来線への乗り換えに50分近く待たされる可能性が出てきたため、トキ鉄が列車の新設を検討していた。
トキ鉄は「ダイヤ改正で利便性が低下しないよう、可能な範囲で対応した」と話している。


















