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ウクライナ侵攻を「プーチン氏の暴走」と結論付けることのリスク

もうすぐ70才とは思えぬ肉体 写真/アフロ

もうすぐ70才とは思えない肉体で休暇を楽しむプーチン氏(写真/アフロ)

 日本のメディアは、連日のようにプーチン氏のいらだち、暴走、孤立を強調している。ロシア軍の苦戦と停滞を伝え、ロシアの反戦活動の様子を流し、大統領を公私に渡って支える新興財閥オリガルヒの離反の可能性や、ウクライナのゼレンスキー大統領のSNS戦略を詳しく分析し、彼の言動に対する各国の反応や著名人、有名企業による支援を伝えている。そこから見えてくるのは、ロシアの中でプーチン氏がますます孤立し、暴走していく姿だろう。

 誰でも持っている認知バイアスの1つに「確証バイアス」がある。自分の考えや予想に反する情報ではなく、一致する情報ばかりを探してしまうという傾向だ。身近なバイアスだけに、自分ではこのバイアスに気がつかないことも多い。

 ロシア国内では、政府により戦況などは国民に隠され、正しい情報が流されていないと聞く。日本のメディアも、厳しい情報統制はないが、米国の一方向からの情報や分析も目立ち、意図せずに情報にフィルターがかかり、コントロールされているようにも思える。どの番組を見ても、同じような内容ばかりが横並びに流されているからだ。

 もし日米の政府や情報機関、メディアに携わる人々が確証バイアスによって情報を収集分析し、流していたとしたら、プーチン氏の言動や意図を読み間違えることもあるのではないのだろうか。

 前出したバーンズ長官はプーチン氏の意志決定について「助言できる人がどんどん少なくなり、個人的な信念がより重きをなしている」と分析し、「プーチン氏はさらに危険なかけに出る可能性が高い」と指摘した。そしてウクライナ侵攻は「プーチン氏の個人的な強い決意」だとした。

 だが前出の佐藤氏は、番組の中でこんなことも述べている。「むしろ怖いのがロシア人が普通に考えていること。武力で実現しようとしていることは、プーチン氏だけじゃなくロシア全体の考えなんです」。 

 フィギュアスケート男子でトリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ氏が、ウクライナを批判するインスタグラムに複数の「いいね」をして批判が集まっているが、プーチン氏の言動に賛同し支持するロシア国民は、日本人が知らないだけで多いのだろう。

「民間人の犠牲を無視してウクライナ軍を打ち破ろうとするだろう」とも分析されたプーチン氏には、ロシア軍によるチェチェンでの虐殺という前例もある。暴走ではないからこそ、プーチン大統領は恐ろしい。暴君となっていくプーチン氏の行きつく先には、いったい何があるのだろう。

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