毎日毎日、音楽を聴いている。

Tom JonesのGreen Green Grass Of Home。

Traditional-Brues,The House Of Risingsun。


涙が止まらない。

小説の習作でも書こう。

小説といっても実話が元になっているが、

小説は所詮小説である。


昭和物語  僕の夜

---なんてタイトルはどうだろう

モチーフは映画『God Father』です。


僕は小学生のとき、僕の家庭環境を笑い話にダルマストーブ囲んでいた教師を親父の銃剣で刺し殺した。殺人か傷害致死か分からない。「少年法」なんかしらなかったよ。そんな計算するような不良じゃなかった。殺せば死刑だと信じていた。

実は僕が殺そうと狙ったのは1人じゃない。あと2人。村田緑、大高雅子。女教師だ。先に面倒な男を刺したが、結局それだけしか出来なかった。大高は2年のときの担任、村田は3年の担任。殺した奴は教務主任か何かの郡司ナニガシだ。

僕には母親がいない。

産んだ女はいるが「母親」じゃない。小学生高学年までに僕は「姓・名字」が3回変わった。死ぬまでにもう一回だけ変えなくてはならない。


父親は博徒だった。北関東最大の勢力を持つ大松澤一家の初代に可愛がられていた。安藤組の花形敬が栃木刑務所に入った時、父親は花形の一の子分と吾妻川の欄干で大喧嘩し、相手は心肺停止、父親は短刀で腹を串刺しにされた。


父親の義兄弟が在日朝鮮人一世で表はスクラップ屋、実は密輸もクスリも何でもやる梁川さん。倅が僕より2つ上の智章。

あと2人、父親には砂島という兄弟の子分がいた。新潟で「よっつ」「カボー」と周囲に疎まれ耐えきれず村長一家親戚を兄弟で半殺しにし、幸いにも被害者全員、生きながらえたため兄弟揃って5年で出所し父親の住み込み子分となった。要は彼らは東北地方でいう「被差別部落民」なのだが父親は全く気しなかった。


ある時、戦後の払い下げでやや遅く湧き上がった栃木県那須の払い下げの特需が起きた。東京からヤクザがやってきた。父親たちは大松澤先代の命令で町井久之の東声会とつるむ。そこで父親は澤井健一と出会った。


父親も梁川も砂島兄弟もいない。

僕は父親に教えられた「おねえちゃん」の実家に行こうと駅前のロータリーに止まるバスの後ろに隠れていた。竹という坊主頭のにいちゃんに捕まった。竹は前は父親の若衆だったが賭将棋の売り上げをごまかして指を詰めて逃げていた。ところが地場ヤクザ華駒に出入りし僕を産んだ女とできているという噂だった。そんな関係は以前からだと梁川のおじさんが話していたのを聞いた。だから僕は竹を避けていた。

当時、同じ市内とはいえ前のウチからいちばん東に工場みたいな新居に僕と父親、砂島兄弟で引っ越した。しかし、竹によって前のウチに連行された僕は土間の洗濯機に手錠で繋がれた。子供のおもちゃの手錠だが子供の力では取れない。

泣いた! 叫んだ!ごめんんさいと泣いて謝った!

狂ったようにワーワー騒いだ!足で洗濯機蹴り続けた!

産みの女と竹は隣の居間で酒を呑みながらテレビの高校野球を見ていた。


このウチの裏手に梁川さんちがあった。梁川さんが作った鉄板の壁がある。内側にも色んな重機があるし、梁川さんの事務所はずっと奥だ。僕はあきらめるしかなかった。第一今日も明日も父親と梁川さん那須にいるんだ。それでも僕はおしっこを漏らすだけで耐えていた。

そんな時、壁の間からヒョッコリ梁川おじさんが顔を出した。何も言わず顔を引っ込めた。それから3分も経たずに梁川のおじさんがウチに入ってきた。抜身の日本刀を担いでいる。


真っ直ぐ竹のもとに進むと竹に言った。

「タバコ、一本くれ」

竹がタバコを差し出した瞬間、梁川さんは思い切り刀を振り落とした。竹は悲鳴を上げたが斬られた手首はなかなか見つからなかった。


僕が学校の教師を刺そうと決意した時、自宅に転がっていた銃剣を梁川さんが砥石で研いてくれた。

「腹を刺せ。ヘソの周りだ。上を刺しちまうと肋骨に邪魔される。風呂敷被せて銃剣だと見つかる前に体ごとぶつかれ。スーといくはずだ。そしたら柄をグリグリ回せ。1人刺したら、油を染み込ませた手拭いで刃拭くの忘れるな」


小説手習い