【山下美智代コラム】民団新年会「相手が変わるのを待つのではなく、まず受け入れ近づく」: ASIA NEWS

【山下美智代コラム】民団新年会「相手が変わるのを待つのではなく、まず受け入れ近づく」

2020年01月28日

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去る１月１０日都内で、今年も在日本大韓民国民団（以下民団）の新年会が行なわれた。毎年、駐日本大使をはじめ韓日議員連盟・日韓議員連盟所属の国会議員や日本の各党から代表議員達が参加する。今年は団員を合わせると５００名余りが参加した。

私は今年初めて覗かせていただいたのだが、日韓両国から多くの議員達の参加を見て民団の力の大きさを感じた。各役員、議員代表が祝辞を述べられたが、その多くの方が「今年は日韓・韓日関係、友好関係は改善の方向に向かうだろう。明るい未来に期待する」という内容を述べられた。　

本当にそうであって欲しいと願う。一番打撃を受け苦しい立場にあるのはこの民団の方たちであろうと思う。「韓国と日本の架け橋」と言われながらも、民団の方たちが「本国」と言っている韓国からは韓国内であっても親日派があの様に攻撃を受け、潰される様な勢いなのだから、在日同胞となるとその批判は更に厳しいものではないだろうか。

日本国内からはヘイトスピーチで数知れない攻撃を受けている。これは今に始まった事ではない。「在日」と言われる様になってから７５年にもなる迫害の道だ。未だにこの差別・迫害が無くなっていないのに、その上にこれ（「日韓断絶」とまで言われた両国関係の冷却）だ。もし日韓関係が改善されたならこのヘイトスピーチ問題は改善されるだろうか。差別・迫害はなくなるだろうか。　

議員挨拶の中でも「ヘイトスピーチ問題をなくす為の努力をしていきたい」という内容が語られた。日本では、韓国での反日・嫌日運動についての報道はよくなされるが、日本国内でのヘイトスピーチ問題が報道されることは少なく、一般人からは関心が薄い様に思う。日韓両国が民団に対して「韓国と日本の架け橋」であり、両国関係の要であると言うならば、ヘイトスピーチ問題から取り組むべきであろうと思う。

この日、日韓関係を改善していく為の策については述べられなかった。両国が互いに相手国が変わる事を望んでいる、待っているいる様にさえ思う。今、日本でのヘイトスピーチが在日同胞の中で大きな問題となり、苦しめることになっているのならば、まずこの問題の解決策を考えるのが順序だろう。相手国が変わるのを待つのではなく、まず相手国を受け入れ近づく姿勢、その為の努力が必要であろう。

この頃「ナショナリズム」と言う言葉をよく耳にする。「ナショナリズム」とは何なのだろう。一つの国の中で日本人は日本人であることを誇り、韓国人は韓国人、朝鮮人は朝鮮人であると主張する。自国を誇りたいのは当然であり、民族としてのアイデンティティの確立を望むのも当然である。自国を誇り愛国を叫ぶなら、他国を受け入れる度量が必要ではないだろうか。しかし、我が国では相入れないこのナショナリズム！どの様に解決していけば良いのだろうか。

２０２０年、世界が注目する東京オリンピックを目の前に、日本が大きく変わっていく時なのではないだろうか。その為にも、一番近い国韓国との架け橋役である民団に活躍していただかなければ。日本と韓国両国が、どの様に歩み寄っていくかは分からない。しかし両国が近づきたいと、信頼関係を取り戻したいと願っていることに希望を感じる。

会場で野田聖子議員にお会いし、ご挨拶させていただいた。その時、韓日女性親善協会の話をさせていただいた。以前、野田議員が日韓女性親善協会の会長をされており、私が韓日女性親善協会にお世話になっているからだ。お話の中で「今年、また日韓女性親善協会の会長を引き受けることになったのよ」と言われたことに、私は大きな希望を感じた。

韓日女性親善協会の李会長は、昨年の両国関係の最悪状況に力を無くされ、辞任か解散かとまで考えられていた。すぐにこの吉報を会長にお伝えしなくては、と私は喜んだ。去年、「お待ちください。もう少しの間、頑張ってお待ちください。私たちが頑張りますから。私たちが力になれるよう努力いたしますから」と李会長の手を力強く握って約束した言葉が天に届いたような気がした。

左から野田聖子衆議院議員、朴善岳民団婦人会長、山下美智代記者