いくら法律の決まりがあろうとも、
公式表記以外ではその業界ごとの
寸法重量の言い表し方が分かりや
すい。
ビリヤードのキューの重さはオンス
で表すほうがピンとくる。ボウリン
グの玉みたいに。
日本刀の場合は長さで何尺何寸何分
というのがピンとくる。重さには
最近は刀剣愛好家もモンメはあまり
使わないが。
建物も部屋の広さは何畳かという
ほうが平米よりもピンとくる。
ただし、公的取引での標準は、メ
ートル法での表記をしないと違法
になる。日本刀も「二尺三寸五分」
という表記のみだと違法。ビリヤ
ードのキューも、グラム表示では
なくオンス表記のみだと違法。
それでも、日常的にはグラムや
センチで言われても脳内換算が
すぐにできない物が日常生活には
多くある。
建築費坪単価いくら、という類の
ほうが分かりやすい。
重い軽いも人それぞれの感覚だが、
ビリヤードキューでは、19.5オンス
以上が広く「重たいキュー」とされ
ている。19オンスを切る重量のキュ
ーは「軽い」とされる。
また、プールキューでは、凡そ長さ
の標準があり、それは58インチだ。
私は60インチの長めのオリジナル
キューを使うが、それはシャフトも
バットもあえて長くしてある。
60インチは152.4センチで、ちょう
ど私の身長よりも21センチ程短く
なる。立てると頷のあたりにキュー
先が来る。これが何ともピッタリで
しっくりくる。
逆に日本刀の場合は身長に関係な
く私はやや短めの刀を使うが、こ
れは、使い勝手で刀の長さなどは
選ばず、幕法と流派の定寸に則って
いるためだ。
封建時代には現代社会感覚の近代
合理主義などは介在しない。
幕府が定め、流派が定めたものは
それに従う。
流派の定寸が二尺三寸一分と決ま
っていたなら、長身だろうと背が
低かろうとそれを一つの定めとし、
そこから実用的な最小限の加減を
して差料を決める。
「私は長いのが好きだから長い
刀がよい」などという感覚は
幕藩体制時代の武士には許され
ない。幕末に警護武士の幕臣たち
が定寸の刀ばかりだったのはその
ためだ。
それと違い、ビリヤードはどんな
長さのキューを選んでもよいのだ
が、実はこれにも長さ規定の規則
が公式にはある。58インチ長さは
そのど真ん中の標準といえる。
誰が定めたかは知らぬが、ボール
の大きさと重量に決まりがある
ように、キューにも決まりがある。
19.75オンスで60インチはルール
のレギュレーションクリアである。
キューの長さを変えると、単なる
重量数値だけを追うとバランスセ
ッティングができなくなる。
マスの集中と適度な重量分散によ
って、キューの打球性能がかなり
上下するからだ。
そこが、キューが総重量だけで
推し量れない深さを持つ道具と
なっている所以だ。
最近ではバランスポイントを示す
傾向も出てきたが、あれはよい
指標判断材料表記かと思う。
釣りのロッドも従来は「先調子」
と「胴調子」しかなかったが、
ロッドはテーパー命の竿であり、
そんな二つの大雑把に大別して
説明などできない物だ。
ビリヤードのキューもそれがあり、
とにかく、撞いてみないとキュー
の特性は全く皆目分からない。
高価なカスタムキューでも撞くと
ダメダメなキューもあるし、数千
円のハウスキューでも撞いたら
「何これ?マジック?」というよ
うなアタリ個体がたまにある事も
事実だ。
木って面白いよね。
絶対に人間の予測計算通りには
数値も特性も弾き出せないもの。
ある程度、木の種類により絞り
込みの「予測」はできても、完成
した木製スポーツ道具は、個体差
がかなりある。
だからこそ逆に面白いのだけど。
ソリッドシャフト愛好者たちは、
「さらに良いシャフト」を求めて
常にさすらいの旅を続ける放浪者
たちだし(笑
でも、良材とそうでないのでは
「えー?」という程に違うのよね。
ダメ材のシャフトで撞くと、ただ
の棒みたいだもの、まるで。
そう、なんてのか、ヒバ材の丸棒
で玉を突いたみたいな感じ。腰
砕けというか。
やはり、どうしても楓の木がシャ
フトには適している。プールには。
トン撞き用にはアッシュでもよい
のではなかろうか。高反発を求め
ないタイプの種目や撞き方には。
ただ、キュー切れを出しての玉撞
きをやろうとするなら、もうメイ
プル一択になるかと思う。
20年ほど前、キューテックという
メーカーが、メイプルの外側に
透明の樹脂で包むシャフトを考案
した。
とてもキュー切れが良かったが、
とにかくシャフトが滑らない。
スポンサードを受けていた元世界
王者のアメリカのアール・スト
リックランドは、あまりに思い
通りにならないキューなので、
試合中に激怒してキューを折っ
てしまって、クビになった(笑
あれ、考えたら、ハイテクシャ
フトの一つだったのかも。