かわいい嫉妬
どっちかと言うと、重岡くんがおちゃらけて小瀧くんが怒るのが普段の光景ですけど…
こういうこたしげも良いかなと
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近頃しげの様子がおかしい
いや、おかしいと言うよりも、いつも纏っている空気が少しだけ不穏なことが多くなった
俺は犬じゃないから特別鼻が利くわけじゃないけど、顔色を見れば分かる
今も仕事が終わって楽屋で皆が帰り支度をする中、一人黙々と不機嫌そうにスマホをいじっている
「しげ、今日俺んち来る?」
「行かへん」
はやっ!返事早すぎやろ~
やっぱ怒ってるやん、何かした?俺なんか怒らせること言うたかな?
「しげ、何か怒ってるん?」
「怒ってへんよ、別に…」
変なところでしげは素直やない
俺が汲み取ろうとしても、向こうが拒否してくるからどうしようもない
はあ、と俺は溜息をつきながら近くに居た神ちゃんに抱き着いた
「神ちゃ~ん」
「ふふ、のんちゃん最近甘えたやな」
「神ちゃん抱きしめると癒される」
「俺は全然ええねんけど、後ろ見てみ」
神ちゃんにそう言われ、素直に視線をそちらの方向へ向ける
その瞬間、背筋が凍るような冷めた目でこちらを見ているしげが居た
目が合うと、しげは顔をしかめたままそっぽを向く
「何あの態度」
「嫉妬してるんちゃう?」
「あ~しげ、普段あんま神ちゃんに接触できへんから俺に妬いてるんかな」
「逆やろ」
「え?」
「最近のんちゃんが俺にばっか構うからちゃう?」
「何それ…可愛すぎやろ」
「そう思うなら抱きしめてやってよ」
神ちゃんにそう後押しされたのはいいけど、本当にその理由が正解なのか自信が無かった
「しげ~」
「なんやねん」
相変わらず機嫌が悪い
でも神ちゃんが言ってることが本当だとしたら…
少しくらい自惚れてもいいかもしれない
「しげっ!」
「うわっ」
真正面からしげを抱きしめると、しげは驚いて俺から逃れようと暴れだす
神ちゃんみたいに大人しくしてくれたら可愛いのにな~
そんなところが、しげらしくて好きなんやけど
最近鍛えている俺に、いくら腕力のあるしげでも敵わないと悟ったのか大人しくなった
それと同時に耳が真っ赤になっているのが分かる
自惚れが確信に変わって嬉しくなる
「しげ珍しいやん、嫉妬なんて…」
「なにがやねん!」
「まあまあ、素直になれって!」
「お前に言われたくない!」
いつのまにか兄弟喧嘩に発展していく光景に、他のメンバーの笑い声が響いた
END