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長編アニメーション映画「この世界の片隅に」

長編アニメーション映画「この世界の片隅に」
監督・脚本:片渕須直(かたぶちすなお) 主演(声):のん
平成28年11月公開
原作は西区出身の漫画家こうの史代の同名マンガ。昭和19年に江波(現・中区)から呉に18歳で嫁いだ主人公すずが、戦時下の困難の中にあっても工夫を凝らして心豊かに生きる姿を描く
描かれた場所は、江波をはじめ、紙屋町、胡町、八丁堀、現在平和記念公園となっている中島本町など。当時の写真や住民への聞き取りなどにより正確な風景描写にこだわって制作された
ヒロシマ平和映画賞2016、第90回キネマ旬報日本映画ベスト・テン第1位ほか数々の賞を受賞
【DVD情報】
DVD定価3,800円。Blu-ray(ブルーレイ)(定価 通常版 4,800円、特装限定版 9,800円)


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©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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(上画像)作品の冒頭シーンで登場する「大正屋呉服店」周辺(当時の中島本町。現中区中島町)。正面玄関前に立っている男性は、現存する当時の法被(はっぴ)を着た姿で描かれている。手前右側の「大津屋商店」前に立つ人々の姿、格好も、かつてこの場所に暮らした方々からの聞き取りをもとにしている。商店の建物は、大正屋呉服店ガラス窓に写っていた当時の写真も参考に描かれた
(下写真)平和記念公園レストハウスとなっている現在の建物と周辺

監督のこだわりに向き合い できる限り支援

 昨秋公開され大ヒットしたアニメーション映画「この世界の片隅に」。舞台は戦時下の広島と呉です。登場人物の服装や声、料理の材料、調理法から、店頭に並ぶキャラメルの箱の色かたちに至るまで、画面に映るあらゆる物・事を当時のまま再現することにこだわって制作された作品です。
 公開の5年ほど前からロケハンや資料探し、PRなどで関わってきたのが、広島フィルム・コミッション(FC)です。「○年○月のこの場所の写真、とか、この絵のお坊さんと同じような体形の安芸門徒の読経の声、とかピンポイントの依頼が来るんですよ」とFCの西﨑智子(ともこ)さんは笑顔で振り返ります。そのたび、図書館や平和記念資料館、知人に電話を掛けたり直接出向いたりして探し回りました。「片渕監督は思い立ったら夜行バスででも現地を訪れ、確認を徹底する人。その熱意に少しでも応えたいと思いました」と話します。

多くの市民や団体を巻き込み 映画を支援する会を発足

 製作には、インターネットで広く資金を集めるクラウドファンディングの手法が取られました。「宣伝費が十分ある映画ではないため、公開までに映画タイトルが浸透するよう、なるべく多くの施設、団体に支援をお願いしてPRイベントを開催したり、映画の舞台を巡るツアーを行ったりしました」と西﨑さん。公開前から戦略的にファンを作っていきました。
 公開1年半前、市民団体などと共に「「この世界の片隅に」を支援する呉・広島の会」を発足。公民館でのパネル展示や監督トーク会に訪れる人は増え続け、ロケ地マップは、東京のアンテナショップTAU(タウ)で1,000枚が10分で無くなりました。

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(写真左)中島本町(現平和記念公園)を監督、かつての住民の皆さんと共に巡りました(平成26年7月)
(右)呉のロケ地巡りには原作者こうの史代さんもサプライズで参加

映画を「見に行く」ではなく 登場人物に「会いに行く」

 映画には、実際にそこで生活していて被爆した人が多く登場します。街並みや人物描写に協力した男性の「映画は10回以上見ました。見に行くというより、その人に会いに行くという気持ち」との言葉に、西﨑さんは、監督がこだわった意味に思いをはせました。「まさに、地元の人みんなと一緒に作り上げた映画なんです」とやさしく微笑みます。

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