あるいは、日本の敗戦後もインドネシアに留まって同国の独立のために戦った日本兵のように。オランダの植民地だったインドネシアに進駐した日本軍は、大きな戦闘もないままに終戦を迎える。そこへ旧宗主国の再上陸にあわせて、独立戦争をいっしょに戦ってほしい、とインドネシア軍から呼びかけられる。これに1000人とも2000人ともいわれる日本兵が応じて、日本が掲げたアジア解放のために独立戦争を戦った。かつて、その残留日本兵から聞いた話では、軍事指導として参戦したものの、最後は山中に逃げ隠れ、手製の爆弾と竹槍で夜討ちと奇襲を繰り返して、やがて宗主国オランダから独立を勝ち取ったという。そこには決意と執念が必要になる。
ウクライナ人の心に深く浸透している「プーチン憎し」の思い
いま、ウクライナの士気を高めているのは“クソ野郎”の存在のはずだ。積年の思いは8年前からだ。
ただ、写真にもあるプーチンのトイレットペーパーにはオチもついていて、この顔でケツを拭いてやろうとしても、印刷が施されているのはカバーのように一巻きだけで、そこから出てきた中味は市販のトイレットペーパーだった。期待していると裏切られる。それで人目を誘って商売にしているのだから、あこぎでもある。
ウクライナという国は、汚職が蔓延ることでも知られる。IMF(国際通貨基金)から繰り返し融資を受けているが、その度に汚職の撤廃や年金制度の見直しなどの構造改革を求められている。私が知るところでは、キエフの大学を卒業しようとした日本人留学生は、担当教授から単位と引き換えに賄賂を請求されたという。そうした国情が、EU(欧州連合)側からしてみると敬遠したくなる事情でもあった。
しかし、いまはそんなことを言っていられる状況にない。見方をかえれば、誰の眼にも“クソ野郎”に映る仇役をトイレットペーパーに巻き付けて商売にする、そのアイディアと強かさは相手を出し抜くには十分だった。その逞しさで侵略者に立ち向かうべき時にきている。いや、商売もさることながら、“クソ野郎”を店頭に並べることによって、連帯の意志を示したい心理のほうが強かったのかも知れない。だからこそ、あのトイレットペーパーは抵抗の象徴になる。ロシアが大量破壊殺戮兵器による大規模攻撃を仕掛けて壊滅状態に陥らない限りは、徹底抗戦を続けるはずだ。
西側諸国も武器供与によって、ウクライナの徹底抗戦に期待をかける。シナリオは戦況の泥沼化によるロシア本国の弱体化だ。それこそ、8年前の“クソ野郎”が共通の敵となった証だ。