マイアミは仮想通貨の主要企業が拠点を置く場所になりつつある。
Ian Witlen
もうシリコンバレーなんて目じゃない。フロリダ州マイアミのフランシス・スアレス(Francis Suarez)市長が作りたいのは、仮想通貨の中心地「クリプトコースト」だ。
スアレス市長ほど、現在黎明期にある仮想通貨業界に好意的な政治家はいないと言ってよい。スアレス市長は地元マイアミ出身の44歳。フロリダの「ブロックチェーン・タスクフォース」の元メンバーだ。選挙で選ばれたアメリカの政治家として初めて、給与をビットコインで受け取ることを2021年秋に発表した。その数カ月前にはアメリカ初のシティコイン(CityCoin)である「マイアミコイン(MiamiCoin)」も導入している。
こうした先例のない取り組みは、仮想通貨の人気と価値がコロナ禍で急上昇したことを受けている。デジタル資産は金融の一極集中を是正し、越境決済を安く簡単にするための一つの道だと言う仮想通貨推進派もいるし、仮想通貨は手軽に稼ぐ方法だとみる人もいる。
最近のInsiderとのインタビューで市長自身が語ったように、スアレス市長の仮想通貨支援策はシンプルだ。アメリカ経済は以前にも増して、テクノロジー中心で動いている。仮想通貨も当然、今後主要な役割を担うようになるという。さらにスアレス市長が重視するのは、マイアミを未来が生まれる場所にするということだ。
マイアミの気候や景観は穏やかで美しい。それだけでなく、税制面でもやさしい。フロリダ州には州所得税がなく、法人税率は最も高い場合でもたった5.5%だ。ターキーポイント原子力発電所が近く、カーボンフリーのエネルギーを豊富に、かつ比較的安価に使える。リーダーであるスアレス市長は仮想通貨に入れ込んでいるし、他の地方政治家も支持してくれそうだ。
嫌がる理由などあるだろうか? 暗号資産関連企業がこぞってマイアミに押し寄せる中、仮想通貨に及び腰になったほうがいい理由を探すほうが難しくなってきている。
「現在のところ、マイアミ以上に仮想通貨事業を行いやすい環境はないと思いますよ」と、仮想通貨専門の投資会社ブロックタワー・キャピタル(BlockTower Capital)で、パートナー兼グローバル戦略パートナーシップの責任者を務めるマイケル・ブセラ(Michael Bucella)は言う。
スアレス市長と仮想通貨業界は相思相愛
2020年12月、スアレス市長はわずか4語のツイートだけで、マイアミを暗号関連企業の“メッカ”にするための第一歩を踏み出した。
フランシス・スアレス市長「どうしたら役に立てますか?」
デリアン「OKみんな、聞いて。シリコンバレーをマイアミに移してみたらどうだろう」
仮想通貨業界のエグゼクティブたちが、今までアメリカ政府から蔑まれたり規制で縛るぞと脅されたりしていたのを考えると、「どうすれば創世記の仮想通貨業界の役に立てるか」とスアレス市長が聞く姿勢は、全く対照的だ。スアレス市長は仮想通貨や仮想通貨を実現するブロックチェーン技術に、少なくとも4年前から強い関心を持っており、マイアミの独自性を打ち出し雇用を増やすチャンスと考えたという。
「どういう環境ならいいのか、パズルのピースを1つずつはめるように、少しずつ始めました。約1年前に『どうしたら役に立てますか?(How can I help?)』とツイートして以降、このエコシステム構築プロジェクトは勝手に加速し始め、10年かかるはずのものが12カ月でできてしまいました」とスアレス市長は言う。
仮想通貨は連邦政府には冷たくあしらわれてきたが、ブロックタワー・キャピタル(Blocktower Capital)、ブロックチェーン・ドットコム(Blockchain.com)、FTX、イートロ(eToro)などの仮想通貨関連企業は、この1年の間にマイアミに拠点を移すか、マイアミに大きく投資をしてきた。それを大歓迎するのは、市長なら当然と言える。