セリフになっていないから、「凛の恋心」を見つけるには、彼女をずっと追うしかない。
追っていないと見逃してしまう。
画面に何人か映って端っこにいるときでも、そういう表情をしている。
ヒロイン清原果耶に寄り添うときにも、せつない表情していることがある。
声の魅力
藤原さくらの声は低い。ちょっと男性的な声である。
声の力も強い。歌い手だからだろう、その音だけで人を振り返らせるような声質である。身体に響いてくる声なのだ。
その声を追ってしまう。
2016年の『ラヴソング』での彼女が忘れられないからかもしれない。
『ラヴソング』はあきらかに藤原さくらのドラマであった。主役は福山雅治ではあったが、見終わったあとは、繰り返し強くおもいだされるのは藤原さくらである。
さくらがどうなるのか、ドラマの展開はそこに中心があった。
広大(福山雅治)がミュージシャンとしてふたたび一線に復帰できるのかも描かれる。でもそれは、予定調和的なハッピーな方向でしか描かれてなかった。
佐野さくら(藤原さくら)は、最後、修羅の道を選んでいた。
みんなが望んでいた道を行かず、行方をくらました。
仲間たちにも知らせずに、突然、姿を消した。
最終話ぎりぎりで彼女が消えてしまう物語だったのだ。
広大(福山雅治)は彼女を探す。やがて見つけ出す。
彼女は人前で歌っていた。
熱海の海辺で歌っている彼女を見つけるが、声はかけなかった。
福山雅治は、語り手であり、傍観者であった。