子どもに「向精神薬」を飲ませた親の深い後悔 成長過程の脳への長期的な影響はわかってない

薬が手放せなくなった娘を心配する女性(記者撮影)
日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。
発達障害とされる児童数はなぜここまで増えているのか。そして、発達障害の早期発見、投薬は子どもたちを救っているのだろうか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第2回は「子どもに向精神薬を飲ませた親が後悔すること」。

第1回
学校から薬を勧められる「発達障害」の子どもたち

第3回:3月8日配信予定
低年齢の発達障害、薬で隠される子どもの危機

第4回:3月9日配信予定
いじめを受けた発達障害の女性が語る「薬の闇」


「娘が薬を飲み始めたのは、小学5年生のとき。きっかけは、地区の学校が参加する音楽祭に参加したことです」

現在26歳の娘について、吉田京子さん(仮名)はこう振り返る。吉田さんの娘は発達障害の1つである自閉症と軽度の知的障害がある。小学生のときから現在まで、向精神薬を飲み続けている。

薬を飲むきっかけとなった音楽祭は、地域を挙げての行事のため、教員たちの指導にも熱が入る。音が合っていなかったり、やる気のない子どもがいたりすると、全員が連帯責任で怒られた。練習は半年の間、毎日続いた。

それまで家でも学校でも大きなトラブルがなかった娘だが、ストレスから練習中に泣いたり、パニックを起こしたりするようになった。こうした状況をかかりつけの精神科医に相談すると、「不安を取り除くリスパダールを出そう」と言われた。

リスパダールは、主に大人の統合失調症の治療に用いられる抗精神病薬だ。2016年からは小児の自閉症患者にも用いられるようになったが、当時はまだ認められていなかった。

【2022年3月7日14時50分追記】初出時の表記を一部修正しました。

「ずっと後悔している」

薬を飲むようになっても、娘に大きな変化はなかった。結局、教師の提案で音楽祭の練習時間を短くしてもらい、本番も出場することができた。音楽祭で歌う娘の姿に涙が出たという吉田さんだが、「いま思えば、音楽祭なんて出なくてもよかった」と当時を振り返る。

「みんなと一緒に出場する娘の姿を見たいという気持ちもありました。音楽祭が終わったとき、薬をやめるべきだったのに、ずるずると飲ませてしまった。ずっと後悔しています」

娘が中学に進学したとき、薬の量と種類が増えた。娘の症状に何か変化があったというわけでない。医師が言うには、「体が大きくなった」「中学で環境が変わるから」というのが理由だ。これまで飲んでいたリスパダールが増量され、新たにADHD(注意欠陥・多動性障害)の患者に用いられるコンサータが処方された。

当時、吉田さんから見れば、薬を飲んでいても飲んでいなくても、娘の様子に変化はなかった。しかし、学校からは服薬について指摘されるようになった。

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