学校であった怖い話の声劇台本
男4:女3(被りありなら4)
倉田恵美 ♀ この物語の聞き手。一年生。先輩である日野に頼まれ、学校であった怖い話の取材をすることとなった。
新堂誠 ♂ 語り部の一人。三年生。好青年っぽいが、一旦怪談話を始めると威圧するような口調で主人公を驚かす。少し口調が荒い。
荒井昭二 ♂ 語り部の一人。二年生。暗い性格で、話すときもぼそぼそと話す。
福沢玲子 ♀ 語り部の一人。一年生。とても明るい性格で社交的。怪談を語るときも、世間話のような口調で明るく話す。
風間望 ♂ 語り部の一人。三年生。いつも飄々としていてふざけているのか真面目なのかわからないつかみ所のない男。
岩下明美 ♀ 語り部の一人。三年生。美しい容姿をしているが、口調に遠慮がない。話すときはお嬢様のように上品に話す。
細田友晴 ♂ 語り部の一人。二年生。巨漢のわりに気の小さいいじめられタイプの青年。トイレの話になると俄然張り切る。
??? ♀(被りあり) 物語の終盤に出て来る少女の声。
倉田N「一話、また一話と、怖い話が語られる。七不思議の取材だったはずなのに、ずいぶん沢山の不思議を知ったような気がするわ。
学校全体が呪われてる、って誰かが言ってたけれど、それもまんざら嘘じゃないのかもしれない。
首筋の毛がチリチリと逆立って、背筋をつめたいものが走る。室内を包む重苦しい沈黙で息がつまりそう…
こんなにドキドキしてるのは私だけ?それとも、皆も何かを感じ取っているの?」
福沢「ねぇ、恵美ちゃん?」
倉田「は、はい!」
福沢「あはは!驚かせちゃった?ごめんね?でも、さ…なんだか…嫌な雰囲気だと思わない?こう…空気がよどんでるっていうのかなぁ?」
細田「福沢さんもそう思うのかい?実を言うとね、僕もさっきから震えが止まらないんだ…なんだかトイレに逃げ込みたい気分だよ…」
岩下「あら、今頃になってそんなこといっても遅いんじゃないかしら。うふふふ…よく言うじゃない?こういう話をしていると…」
荒井「霊が集まってくる…ですか?」
福沢「いやっ!」細田「ひぃっ!」(二人同時に)
新堂「おい荒井。あんまり人を驚かすなよ」
荒井「はぁ…驚かしたつもりはないんですが…」
新堂「なに言ってんだ。見ろよ、倉田なんか恐怖で顔引きつらせてんだぜぇ?」
倉田「…っ!そんな!引きつった顔なんてしてません!」(気取られまいと必死に)
岩下「あらあら、倉田さんが怖がってるのは、どうやら新堂さんの方みたいね」(からかうように)
新堂「なんだってぇ!?」(岩下が言い終えると同時に明らかに癇に障ったように怒鳴って)
細田「うわぁっ!新堂さん…あんまり大きな声出さないでくださいよぉ~…」
新堂「…ちぇっ、わかったよ…ったく…なんで日野はこんな臆病な奴ばっかり集めたんだ?なぁ風間、お前もそう思うだろ?」
風間「…あぁ」(小さく返事)
新堂「なんだよ?すっきりしない返事だな…まさかお前までビビってんじゃねぇだろうな?」
風間「…あぁ」
細田「…風間…さん?」
倉田N「このときになって初めて私は、風間さんがさっきから黙り込んだままだということに気づいたの。こんなのちっとも風間さんらしくない…
一体どうしたのかしら…」
倉田「あの…風間さん?」
風間(静かな声で)「大丈夫、ちゃんと聞こえてるよ…」
倉田N「そういいながらも、風間さんの目はどこか別の世界を見つめてる。その視線が、ふっと動いて…」
風間「恵美ちゃん、それに皆も聞いてくれ。玲子ちゃんの言ったとおり、この部屋の中はいやな空気に包まれている…
(少し間を空けて)はっきりいって僕は後悔しているよ…日野からこの集まりに誘われた時、どうしてもっと強く反対しなかったんだろうってね…
霊の世界というのは、君たちが思っている以上に神聖なものなんだ。遊び半分に首を突っ込んだりするととんでもない目にあう。
恵美ちゃん。どうやら僕達は、霊の世界に住むものたちの怒りを買ってしまったようだ…」
細田「倉田さん…もう終わりにして帰ろうよ…その方が絶対いいって!僕こんなところにいつまでもいたくないよ…」
倉田「…そんなこと急に言われても…」
風間「細田君…残念ながらもう遅いんだ…こんな中途半端な状態で解散なんかしたら、僕達の命はないと思っていい。
この部屋に充満している邪悪なエネルギーが暴走してしまう危険性の方が、非常に高い。
僕達が危険から身を守る方法はただひとつ。七不思議の取材を、きちんと終わらせるしかないのさ。
これから僕がひとつの話をしてあげるよ。その話で七不思議を完成させる。恵美ちゃん。それでいいよね?」
倉田「は、はい…」
風間「怖かったら遠慮なく僕にしがみついていいよ。この僕の胸は、君のためにいつでもあけておくからね…」
倉田「…はぁ…」
風間「いいかい?本当に遠慮なんかしないでくれよ?約束だからね。それじゃあ、話を始めようか。
これは今まで、誰にも喋ったことのない、とっておきの話なんだ…」
倉田N「こうして、風間さんのとっておきの話が始まった…」
風間「君たちは…幽霊の声というものを聞いたことがあるかい?」
福沢「幽霊の…声?」
風間「そう、空中には目には見えない沢山の放送電波が飛び回っている。そしてその中には霊界からの通信、つまり幽霊の声も混じっている。
たとえば、つい最近コンサートの途中に事故死したある男性アイドルのCD…彼の遺作となった最新アルバムは色々なヒットチャートで上位を独占しているんだけど
実はそのアルバムのラストの曲に、変な声が混じって聞こえるというんだ…僕も聞いてみたよ。歌が終わって音楽が静かに消えていく…その瞬間…
『もっと…歌を…』」
細田「っ…!風間さぁん!」(勘弁してくれというように)
新堂「あんまりびびらすなよ!」
風間「あぁ、ごめんごめん…でも君たち、こんなことでこわがっていてどうするんだい。あんまり過剰な反応を見せていると霊に漬け込まれてしまうぞ?
ほら、玲子ちゃんも恵美ちゃんもそんなにおびえてないで、この僕がついてるじゃないか」
福沢「きゃっ!」
倉田「風間さん!肩に手を回すのやめてください!」
風間「何いってるんだい恵美ちゃん。これから話はますます恐ろしくなっていくんだ。こうやって僕が支えていてあげないと、か弱い女の子には耐えられないほどにね。
さぁ、岩下さんも僕の傍においで。この風間様が、邪悪な霊の手から君達を守ってあげるからね」
岩下「あら、私は守っていただかなくても結構よ。私には立派なボディガードがついているから。クスクスクス…それより早く話を続けましょうよ。
グズグズしていると悪霊たちが痺れを切らしてしまうわ」
風間「岩下さんの言うとおりかもしれないな。それじゃあ話を続けさせてもらうよ。恵美ちゃん、今の新聞部は意欲的に活動しているし、こんな立派な部室まで持ってるよね?
でもね?ほんの数年前までは同好会のような細々とした活動しかしてなかったんだよ」
倉田「え?そうなんですか?」
風間「本当だよ。一応正式な部としては認められてはいたけれど、部員が集まらなくて目立った活躍が出来ないでいたんだ。強力なライバルのせいでね」
倉田「ライバル…」
風間「その頃、最新の設備を武器に、多くの部員を抱えて派手に活躍していた新聞部の最大のライバル…どこだかわかるかい?
それはね、ほかでもない放送部のことなんだ。と…突然にこんなことをいってもすぐには納得できないと思うよ。
今の放送部は名前だけで、生徒会が仕事を肩代わりしている状態だからね。ほんの数年の間にここまで寂れてしまうなんて…
勿論、そうなる理由があったのさ…
あるとき、放送部が昼休みに放送している番組で、怖い話を取り上げることになったんだ。詳しくは知らないけれど、身近な怪談を取材するというよりは
有名な古典的怪談のドラマを制作するといった企画だったそうだよ。それで放送部員たちは毎日のように放課後の校舎に残って作業していたんだ。蒸し暑い校舎の中でさ」
福沢「やだ…まるで…今の私たちみたいじゃない…」
風間「ふっ、そうかい?でもね、さっきも言ったようにその頃の放送部って言うのは派手に活躍していたからさ。ドラマの制作はとても順調だったよ。
七人目の来ない七不思議とは比べ物にならないくらいにね」
倉田「それじゃ、さぞかし素晴らしいドラマが完成したんでしょうね」
風間「そう思うだろう?ところがね、残念ながらそのドラマは完成しなかったんだ。いや、もしかすると完成はしたのかもしれない。でもそれが放送されることは遂になかったんだ」
細田「もったいないな」
新堂「なぁ風間!一体何があったんだ?もったいぶらずに教えろよ!」
風間「いやだなぁ、僕が真相を隠してるっていうのかい?しかもそれをもったいぶって教えようとしない、いじわるで最低な奴だって?」(冷静な口調で)
倉田「誰もそんなこと言ってませんよ…」(半ば呆れたように)
風間「あ、そう。じゃあ僕の耳に聞こえたのは幽霊の声だったのかもしれないな。まぁいいや」
倉田「それで、放送部に何が起こったって言うんですか?」
風間「…火事さ」
新堂「…火事ぃ?」
風間「そうだよ。彼らが作業していた放送室で、原因不明の火災事件があったんだ。といっても、実際に火が燃えているところや、煙が立ち昇っているところを見た人はいない。
目撃者がいないんだから、当然火を消した人もいないし、消防車だって呼ばれなかった」
倉田「ちょっと待ってください。見た人がだれもいないって…放送部の人達はどうしたんですか?
それに、学校内で火事が起こったのに誰も気づかないっていうのはちょっとおかしいじゃないですか」
風間「そう思うのも無理はないんだけどね、奇妙なことに、放送室で起こった火事を見た人は一人もいないんだ。宿直の先生が見回りに来た時には
電気がつけっぱなしになっているだけで、炎どころか、こげあとすら見当たらなかった…いつもと同じ普通の放送室さ。
ただね…どうも様子がおかしいんだ。先生は驚きと恐怖で立ちすくんでしまったよ。なぜって?
火が燃えていた形跡はないのに、放送室の床には、『いくつもの焼死体が転がっていたんだからねっ!』」(『』の部分を強調して)
倉田&福沢「きゃあああああああっ!!」
風間「…死んでいたのは、残って作業していた放送部のメンバーだったよ。その日彼らは、制作中のドラマの台詞を録音していたらしい。
作業中の彼らに何が起こったのか…デッキの中に残っていたテープがたった一つの手がかりだった。
残念ながら、僕はそのテープを聞いたことはないんだけどね、ザーーー…と言うノイズ音に混じって、気味の悪いうめき声や悲鳴、変な歌声なんかが聞こえてくるらしいよ。
それは吹き込まれたドラマの台詞なのか、見えない炎に焼かれる放送部員たちの、断末魔の叫び声なのか…」
岩下「この学校にうごめく悪霊たちの声なのかもしれないわね…」
荒井「先ほどのアイドルのCDよりも、こちらの方がずっと興味深いですね…とても気になります」
風間「そうだろうね。こんな話を聞いたら誰だってそのテープを聴いてみたいと思うはずさ。だけど悲しいかなそのテープの行方は誰にもわからないんだ。
どこかの金庫に厳重に保管されてるとか、遺体と一緒にお墓に埋められたとか、お払いをしたあと処分されたとか、色んな説があるんだよ」
新堂「結局、そのテープを聞くのは不可能だってことか…」
荒井「…少し、残念ですね…」
風間「まったくだよ…でもね、放送室での怪現象はこれだけじゃなかったんだ。いや、このときから始まったといってもいい…」
倉田N「きっぱりと言い切った瞬間の風間さんの目には、鬼火のような青い炎が揺れていた。このままだと、何か恐ろしいことになりそうな気がする。
でも、それを止める術は私にはない」
風間「一日の最後に流れる校内放送に、変なものが混じって聞こえるようになったのさ。太陽がすっかり姿を消し、急速に夜の闇が迫ってくるそんな時、不意に聞こえてくる校内放送。
人影少ない校舎に鳴り響く、どこか物悲しいメロディ…耳慣れたこの放送に、謎の物音や奇妙な声が混じっているというんだ」
細田「どんな声なんですか…?」
風間「色々さ。気味の悪い笑い声だったり泣き声だったり、そうかと思えば「手遅れだね」とか、「知らないよ」といった、いまいち意味のわからない言葉だったり…
ここの放送室には、霊界に通じる道のようなものがあるのかもしれないね。あの火事が原因で、空間が歪んでしまったのか…霊界からの影響であの火事が起きたのか…
どちらにしても、放送部の連中が霊の世界に住むものたちの怒りを買ってしまった結果だと思うな。
さっきも言っただろう?霊の世界には遊び半分なんかで首を突っ込んではいけないって。どうだい恵美ちゃん。僕のいいたいことがわかったかい」
倉田「…はい」
風間「信じられないようだったら実際に聞いてみるといいよ。一日の最後に流れる、校内放送をさ…」
倉田N「話が終わったのか、風間さんは口をつぐんでしまった。誰も何も言わない。部室の中は急に静かになった。その静寂に紛れて何かが怪しくうごめいているのでは…
目には見えないだけで、テーブルの上や、天井の隅や、ドアの脇に邪悪なものたちがうずくまっているのでは…
そう、もしかすると私の後ろにも…そう思った瞬間」
福沢「やっだぁ~!風間先輩ったら冗談ばっかりなんだから、もぅ!」
倉田「冗談?」(驚いたように)
福沢「だって、一日の最後に流れる校内放送って言ったら、下校の時の奴でしょ?今日もここへ来る前に聞いたけど、そんな変なもの全然聞こえなかったもん」
倉田「じゃあ今の話は?」
福沢「ぜぇーんぶ作り話!そうでしょ?風間先輩!」
新堂「おいおい、貴重な時間を使ってホラ話かぁ?勘弁してくれよ!」
風間「んん?なんのことかなぁ?僕はただ怖い話をしただけだよ?」(ちゃかすように)
福沢「えぇ~?嘘の話じゃちっとも怖くないよ!」
風間「いやだなぁ、君たちにはわからないのかい?僕は『怖い話』をしたんだ」
荒井「怖い話…つまり…『ホラーな話』というんですね?」
風間「お!荒井君、この僕の高尚なギャグを理解できるなんて君、なかなかいいセンスしてるじゃないか!
「ホラ」と「ホラー」…この二つをかけてみたんだけどね~ちょっといい感じだろう?」
倉田「…はぁ…」(若干引きつつ返事)
風間「んん~?まだ変な顔をしてるねぇ。恵美ちゃんには難しすぎたかな?知性と共用を兼ね備えたものでないとこのギャグの奥深さは理解できないからね。ふふふ♪
僕が話したのは『ホラー話』な・の・さ♪」
細田「なぁんだ~!そうだったのかぁ!怖がって損しちゃったよ!」
岩下「ふふふふ…私には細田さんよりも新堂さんのほうが、ずっと怖いのを我慢していたように見えたわよ?」
新堂「なっ!」
細田「そうなの!?怖がりなのは僕だけじゃなかったんだ!あは!よかったぁ~!あ、僕新堂さんとはいい友達になれそうな気がするよ♪」
新堂「…勝手に言ってろ」
福沢「あーあー…こんなことなら、早苗ちゃんもつれてくればよかった!早苗ちゃんならきっと凄い話を知ってると思うんだけどなぁ~」
(ここから前の人の台詞が終わったすぐさま言ってください。間髪いれずに)
岩下「そんなことより、もう一度桜を見に行かない?あの木にはもっと恐ろしい真実が隠されてると思うの」
新堂「いや、俺は美術室の方が気になるな。清水さん…っていったか?なんだか人事だと思えなくてさぁ」
細田「それより喉が渇いちゃったよ!サンブラ茶が飲みたいなぁ~!竹内さんどこにいっちゃったんだろう?」
倉田「ちょっと!皆さん落ち着いてください!」
(ここから台詞を言う人以外は適当にしゃべくりまくってください。自分の台詞の番が来たらすぐに言ってください)
岩下「この学校にはね、悪霊がいるのよ」
風間「一体僕にいくつ怖い話をさせれば気が済むんだ…」
荒井「ここの屋上から飛びおりたら、本当に即死するんですかね…」
新堂「なぁ倉田!13年前の卒業アルバムは見つかったのか?」
福沢「知ってる!?水泳部のロッカーにはね…」
細田「花子さんがいるんだよ!」
倉田「え!?ロッカーに花子さん!?」
風間「違う違う、げた箱だよ」
岩下「あら?荷車の上じゃなかった?」
新堂「体育館でもみたぜ!」
細田「いやだからトイレだってば!」
荒井「僕は視聴覚室だったと思いますけど…」
福沢「あれ?じゃあ私が反省室でみたのはなんだったんだろう?」
細田「なにいってんだよぉ、もー」
倉田「もぅ!皆さん静かにしてくださいってば!!」
(ここでおしゃべりSTOP)
荒井「風間さんって、本当にいい加減な人なんですね。僕はあなたみたいな人が、大嫌いなんです」
倉田(数秒置いて)「あ、あの…もうそろそろおひらきにしませんか」
細田「…そうだね…時間も遅いことだし…」
倉田「そ、それじゃあ…」
全員「!!?」
???「ぐす…ひっく…ひっく…うぅぅう…」
全員同時「※:思い思いの叫び声、悲鳴を上げてください)」
???「(泣き声でしゃくりあげながら)ひっく…ひっく…あのぉ~…日野先輩から、七不思議に出席するよう言われてたんですが…ひっく…新聞部ってどこにあるんですかぁ…?
この学校広くて…わからないんですぅ…ひっく…誰かぁ…たすけてくださぁい…ひっく…ひっく…うぅううぅぅぅ…」
全員で同時に「そして…恐怖は繰り返す」
FIN

5