殛威たる吼戒のストリゴヰ

RRRRaika

【序】全てを失って

プロローグ 喪失と、憎悪の奮起と

 小さい頃、好きな子がいた。その子は人間の子供で、吸血鬼である少年とは違っていた。自分が吸血鬼であることをひた隠しにして会っていた彼女は多くのことを知っていて、小学校に通っていない自分にも色々教えてくれた。


 家では両親が思うように食事が取れないことに焦り始め、夫婦喧嘩をしていた。彼はそれが嫌で少女の元へ逃げ込んだ。けれど彼女もまた家でひどい仕打ちを受けていて、彼は一緒に逃げようと子供の浅知恵で逃げ出した。


 その間に彼の空腹は日に日にひどくなり、少女もそれを察していた。


 いつかの夜、彼女は自分の腕を差し出して言った。私を食べて、と。


 そんな真似ができなかった彼は必死に否定し、なんとか逃避行を続けた。けれどあっという間に彼は自分の両親にみつかり、その子を目の前で食われた。


 少年の怨嗟に呼びつけられるように現れた悪鬼がわらわらと集まり、それらは瞬く間に喧嘩慣れしていない両親を追い詰めて惨殺した。少年も死を覚悟したが、そこに二人の女が現れた。


 一人はライトブラウンの半分に犬人の血が流れていたハーフウェアウルフで、もう一人は竜族の女。


 激しい戦いの末、隻眼の黒い狼のような悪鬼以外を死滅させ、件の隻眼の黒狼を追い払った彼女らは、少年の手を引いてこういった。


「力の扱い方を教えてあげる」


 少年は「そうしたら、あの黒い狼も殺せる?」と聞いた。二人は頷いて、少年は彼女らの手を取った。


 それが今から五年前、芽黎がれい二一年の秋の出来事だった。

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