【3月4日 時事通信社】ロシア軍は4日、ウクライナ南東部にある欧州最大規模のザポロジエ原子力発電所を制圧した。原発ではウクライナ部隊との交戦で火災が発生。原子炉は損傷せずに停止し、放射線量の変化もないが、爆発すれば大惨事を引き起こしていた可能性がある。ウクライナのゼレンスキー大統領は「核テロ」とロシアを非難し、「ウクライナや欧州の歴史を止めかねなかった」と語った。

 制圧前の4日未明(日本時間同日午前)、原発の施設から炎や煙が立ち上った。ウクライナ軍高官は、研修施設と研究所が攻撃を受けたと説明。ウクライナ非常事態庁によれば、その後火災は消し止められ、犠牲者は出ていない。グランホルム米エネルギー長官はツイッターに、「原子炉は頑丈な格納容器によって守られ、安全に停止した」と投稿した。

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、原子炉が損傷すれば「深刻な危険」が生じると警告。IAEAはその後、ウクライナ当局から、「重要施設」に影響は出ておらず、原発の放射線量の変化も報告されていないと説明を受けたことを明らかにした。

 ゼレンスキー氏は動画メッセージで「原発施設に攻撃を加えたのは、(人類史上)ロシアだけだ。テロ国家は今や核テロに走った」と糾弾した。ゼレンスキー氏はバイデン米大統領と電話で会談。ホワイトハウスによれば、バイデン氏はザポロジエ原発の状況について説明を受け、両首脳は攻撃停止をロシアに求めることで一致した。

 一方、ロイター通信によると、ロシア国防省は原発攻撃は「ウクライナの破壊工作員」が実行したと主張している。

 ウクライナのクレバ外相はツイッターで、1986年のチェルノブイリ原発事故に触れ、「もしザポロジエ原発が爆発すれば、チェルノブイリの10倍以上の規模となるだろう。ロシアは直ちに攻撃を停止しなければならない」と訴えた。

 ロシア軍はウクライナ各地で市街地への軍事作戦を強化。原発付近の都市ザポロジエも攻撃対象となったもようだ。一連の作戦では多数の民間人が巻き込まれ、国際社会で非難の声が一段と高まっている。

 しかし、作戦を指示するプーチン大統領は「全ての任務は成功裏に果たされている」と述べ、軍事作戦を続行する構えだ。3日にはロシアとウクライナの代表団による停戦交渉で2回目の協議が行われたが、成果は乏しく、人道危機は深刻化の一途をたどっている。(c)時事通信社