ようこそ事なかれ主義者の教室へ   作:Sakiru

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2019年7月22日(1)。特別試験の結果について、作中、ポイント概算が行われるのですが、そこで表記の仕方に問題があり、さらに、ポイント計算にこちらに不備がありました。
ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。

20019年7月22日(2)。特別試験の結果について、またしても、こちら側の不備がご指摘されました。それに伴い、再度、見直したいと思います。なお、修正されるのはあくまでもポイント概算だけであり、順位については変わりません。
何度もご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません。


第47話

 

「──まずは特別試験、お疲れ様って言った方が良いのかな」

 

 松下(まつした)は栗色の前髪を弄りながらそう言った。

 オレが無言で居ると、やがて、彼女は嘆息してから頷いた。

 

「うん、やっぱり互いに労わないとね。お疲れ様、綾小路(あやのこうじ)くん」

 

「お疲れ、松下」

 

 我ながら愛想(あいそ)の欠片もないオレの短い返答に、けれど、松下は満足したようだった。

 近くの柵に身体を預け、道中、買ってきたのであろうミニペットボトルを羽織っている上着のポケットから取り出し、唇を湿(しめ)らせる。

 喉を潤した彼女は元の場所に器を戻してから、おもむろに口を開けた。

 

「綾小路くん、これで満足かな。きみの望む結果になった?」

 

「ああ。松下のおかげで、Dクラスは好成績を収めることが出来た。協力してくれてありがとう」

 

 精一杯感情を込めてお礼を言い、頭を下げると、松下は薄く笑った。

 

「それじゃあ、聞かせてくれるかな。どうしてDクラスが上位クラス相手に勝てたのか。どうしてAクラスが最下位になったのか。──私に全てを教えて欲しい」

 

「もちろんだ。お前にはそのことを聞く権利があるからな」

 

 平田(ひらた)洋介(ようすけ)でもなく、堀北(ほりきた)鈴音(すずね)でもなく、そして櫛田(くしだ)桔梗(ききょう)でもない。今回の特別試験に於いて、オレが最も頼ったのは目の前に居る少女だ。

 オレは松下の要望に応えるため、無人島生活、この七日間、オレが何をしたのか、その一切合切を説明することにした。

 

「順番に話したいと思う。質問があったら適宜してくれると助かる。なるべく答えるつもりだ」

 

「うん、分かった」

 

「まずは……そうだな。一学期の話になるが、オレたちは体育の授業で水泳を受けていたよな。おかしいと思わないか? 通常なら六月下旬からのはずだろう?」

 

「そうとは言い切れないよ。私たちの学校は室内プールを完備している。六月下旬から行うのは単にその季節が適しているだけ。環境さえ整えば、授業は可能になるんじゃないかな」

 

 オレは内心舌を巻いた。

 松下はあまり目立たないが、頭の回転は悪くない。堀北や幸村(ゆきむら)高円寺(こうえんじ)王美雨(ワンメイユイ)といった生徒ばかりが陽の光を浴びているが、彼女はDクラスの中ではトップクラス、特に数学では学年でも上位に食い込んでいる。

 

「じゃあ、体育教師がやけに熱心に指導してくるとは思わなかったか?」

 

「……? 先生なんだからそれは当然じゃないの? ただまぁ……、やたらと補習を受けさせようとしたところは嫌だったな」

 

「答えを言うと、授業中、彼が泳げない生徒に重点を置いて指導をしていたのは、その時点で、今回の特別試験が起きることを知っていたからだ」

 

 あの時おっさん教師は『まぁそう言うな。泳げる奴はモテるぞ? それに泳げるようになれば必ず後で役に立つからな』と口にしていた。一見、モテる発言を強調するための言葉だと思うだろう。オレもそう思っていた。しかしこの七日間でその認識を改めた。必ず役に立つの意味とは、すなわち、海に行き、泳ぐ可能性を暗に示していたのだ。

 

「なるほどね……。つまり、少し意識を割くだけで、夏休みに何かが起こることを察することが出来たんだ。思えば、タダの夏のバカンスなんて有り得ないし、他のクラスは特別試験の概要が真嶋(ましま)先生から説明されたらすぐに動いていたもんね。その時点で勝負は始まっていたんだ」

 

「洋介や堀北も予期していたが、お前たちにプレッシャーを与えたくなかったんだろうな。だから教えなかった」

 

 情報を知っているか知らないか、これだけでも戦いは大きく左右されるものだが、今回に於いては該当しない。時には知らなくても良いことがある。

 

「松下はこの豪華客船が無人島に停泊する直前の出来事を覚えているか?」

 

「出来事……? あの時起こったことといえば……、船のアナウンスと……デッキでの軽い揉め事の二つだよね」

 

「そうだ。まず先に言うとあの時のアナウンスは『奇妙』だった」

 

「……奇妙?」

 

「あの時の内容は──『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧になって頂けるでしょう』──というものだった。じゃあ聞くが、非常に意義ある景色とは何だと思う?」

 

 尋ねると、松下は(あご)に手を当てて考え込む。

 二分程待っても回答は出されなかったため、オレはヒントを与えることにした。

 

「この一週間、オレたちが奪い合って来たものだ」

 

「──『()()()()()()。……そっか、分かったよ。非常に意義ある景色とは、『スポット』の位置だったんだ」

 

 要所要所でヒントを与えれば、松下には答えに辿り着く能力がある。

 

「このアナウンスについては覚えておいてくれ。また後で出てくるからな」

 

「うん。次は……デッキで起こった揉め事だよね? 今疑問に思ったんだけど、どうして綾小路くんは率先してあんな面倒事に首を突っ込んだの?」

 

「良い着眼点だ。まずはあの時起こったことを復習するとしようか」

 

 アクシデントの全容は以下の通りだ。

 アナウンスが流れるまで、Dクラスの面々がデッキの見晴らしの良い場所で海を観賞していた。しかしアナウンスが放送され、ぞろぞろと生徒たちがデッキに集まる。そこで、不良品のDクラスが特等席に居ることが気に食わなかったAクラスの生徒数名が絡み始め、沖谷(おきたに)の肩を突き飛ばした。

 

「あの出来事にオレが率先して参加したのにはもちろん理由がある。簡潔に言うと、Aクラスを全クラスの共通の敵にするためだ」

 

「……え? そんなことが可能なの?」

 

「可能だ。この学校は実力至上主義を掲げているためか、下位クラスは理不尽な目に遭うことが多々あるだろう?」

 

 例えばそれは、客船が桟橋(さんばし)に停留し、生徒が砂浜に降りる時。あの時Aクラスから降り、下位クラスの生徒たちは屋根がなく、日陰がない場所で数十分もの間待たされた。茶柱(ちゃばしら)が飲料を飲む許可を出さなければ、何人かが熱中症を起こしても不思議ではなかった。もちろん、先に行った分Aクラスはオレたちの到着を待つことになるが……、理屈では分かっていても、認めたくないことだってある。

 

「ましてやAクラスの生徒は自分が優良品であることを鼻にかけ、他クラスを見下している奴が多い」

 

 オレが知る中で最も顕著に表れていたのは戸塚(とつか)だ。

 どうやら松下もそれは常々思っているようで、眉間に(しわ)を作ることで同意してくれた。

 

「Cクラス以上に、Aクラスに対する各クラスの心象は最悪だ。そこにあの出来事が起こった。オレたちDクラス側に落ち度が一切ないとは言わない。スペースを空けることだって出来たかもしれないからな」

 

 しかしながら彼らは手を出した。

 

「これで実質的に、先月上旬に起こった『暴力事件』の再演出になる」

 

「そこに、この前の事件で台頭してきた綾小路くんが登場することにより、さらに人々の関心を集めたってことだね」

 

 オレが冷静にAクラスを()く姿を見て、傍観者は『Aクラスが悪い』と思い込む。そしてこれまで溜まりに溜まってきたフラストレーションが臨界点を超える。

 

「これによりAクラスは晴れて悪役になったわけだ」

 

 そしてこの時点でオレは、可能ならAクラスを潰すことを決めていた。

 事前の仕込みが終わり、オレたちは砂浜に降りる。

 そして真嶋先生から特別試験の説明を受けた。

 

「オレが高円寺とペアを組んで探索に出たことは覚えているか」

 

「もちろんだよ。みんな、綾小路くんが可哀想って意見で同調していたしね」

 

 分かっていたこととはいえ、そこそこショックを受けるな……。

 自由人に振り回されるなんて哀れ……、そう、クラスメイトが思っても不思議ではない。だが──。

 

「あれは高円寺なりの気遣い……言い換えれば、彼の気まぐれだった。彼はデッキ上でのオレの狙いに気付いていた。そしてオレが行動出来るようにサポートしてくれた」

 

「仲が良いの?」

 

「いや……、どうだろうな……」

 

 言葉を(にご)す。

 仲が良いのか悪いのかと聞かれたら、良い部類に入るのだろう。少なくとも嫌われてはいないはずだ。まあ尤も、高円寺にそのような感情があるのかは甚だ不明だが。

 

「心当たりとかは?」

 

「……何ヶ月か前に一緒に昼飯を食べたんだが、その時に気に入られたのかもしれないな」

 

「ほへー……」

 

 口を半開きにする松下は見ていて面白かった。

 高円寺とペアを組んだオレは、そのまま無人島を開始する。

 

「オレたちが向かった場所は、(のち)にAクラスがベースキャンプに定めた拠点だった」

 

「そこも『奇妙なアナウンス』で、船の上から見ることが出来たんだね。でもどうして? 『洞窟』は山頂付近だよね? 他の場所でも良かったんじゃない?」

 

 良い着眼点だ。

 松下の質問は物事の核心に触れているものが多い。だからこそ手間を省けて話を展開することが出来る。

 

「これを見てくれ」

 

 そう言いながら、オレはズボンのポケットに忍ばせていた一枚の紙を取り出す。

 それは無人島の地図。

 松下に手渡すと、彼女は訝しながらも視線を落とす。そして「あっ」と小さく声を上げた。

 

「『洞窟』付近に『スポット』がかなり密集してる!」

 

「その通りだ。中には、予め知っていないとまず辿り着けないような場所もある」

 

 例えば、オレが橋本(はしもと)鬼頭(きとう)たちと初対面した崖下が該当する。これ一つだけでなく、事前知識が無ければ存在すら摑めない『スポット』が他にも数個程島全体に点在していた。

 

「『スポット』が密集しているということは、それだけリーダーが動かなくて良いことになる。更新にはリーダーと、キーカードが必要だからな」

 

 つまり、リーダーの正体を隠すことに繋がるということ。

 冷静沈着な葛城(かつらぎ)が試験開始後すぐに即断したのは、『洞窟』が機能的な役割を果たすと理解していたからだ。

 だがしかし──。

 

「葛城はここで一つ失敗をした」

 

「……失敗?」

 

「ああ。それは、同じ考えを持つ人間の存在の可能性を排除したこと」

 

 オレは松下に、オレと高円寺が『洞窟』の出入口から葛城と戸塚の二人が出てくる場面を目撃したことを告げる。彼らをやり過ごした後、『スポット』の装置──厳密には、占有の権限の制限時間を確認したこともだ。

 これを聞いただけで、頭の()()しに拘らず、オレが何を言いたいのか分かるだろう。

 

「Aクラスのリーダーは葛城くんか戸塚くんになるんだね」

 

「正解だ。そしてオレはこの時点で戸塚だろうと予想を立てていた」

 

「それはまたどうして? 確かに、クラスリーダーである葛城くんがリーダーだと決め付けるのは安直だよ。けどそれを狙ってのフェイクだという可能性もあるよね。つまり確率は半分。賭けるには値しないんじゃないかな」

 

「そうだな。Aクラスの生徒は欠席者を除いて三十九人。二人に(しぼ)ることが出来たとしても、それが絶対じゃないのなら意味がない」

 

 オレは松下の言葉に頷く。

 一日目の時点では、葛城康平(こうへい)か戸塚弥彦(やひこ)、どちらかがリーダーであることしか分からなかった。だがこれは大きな収穫と言える。つまり、オレはAクラスに対して王手を指していた。

 兎にも角にも、高円寺の思わぬ協力により、オレたちDクラスは初日の消費ポイントを抑えることに成功した。彼のおかげで、クラス的にも、そして個人的にも試験は良い滑り出しが出来た。

 

「高円寺と別れたオレは、そのまま一人で浜辺に戻った。とはいえ、そこには櫛田以外誰も居なかったんだけどな……」

 

「あはは……」

 

 これには松下も苦笑いを浮かべるしかなかった。

 本来ならあの場所には女子生徒が待機しているはずだったのだ。しかしオレが戻るよりも前に洋介や(けん)(いけ)の班が偶然『スポット』を発見、クラスメイトは既に『川』に移動していた。

 あの時感じた孤独感は、かなり心に来たものだ。

 

「その後はクラスに合流した。一日目の流れはこんな感じになるな。質問はあるか?」

 

 念の為確認すると、彼女は両腕を組んで考え始める。それは無理矢理に質問内容を考えている、という様子ではなかった。

 

「うーん……。()()()()()()()()()()()()()

 

 しかし何かは結局分からなかったようで、「ごめん」と謝ってから、話の続きを促してくる。

 

「二日目の早朝。オレは松下、お前と出会った」

 

「私たちが初めて面と向かって喋った瞬間だね」

 

 松下と話したのは偶然だ。むしろ、かなり早い時間帯だったのにも拘らず起きていたのだから驚いたものだ。

 オレたちは会話の最中で、Bクラスの偵察班だと思われる神崎(かんざき)ともう一人の男子生徒と出会う。そこでオレたちはBクラスのベースキャンプの位置を教えて貰った。

 

「朝食を食べた後、オレは櫛田と一緒に他クラスの拠点に赴いた」

 

「櫛田さんを選んだのは何か理由が?」

 

「ああ。Dクラスで最も交渉役に適しているからな」

 

 櫛田桔梗は汎用性がとても高い。まあ、それ以外にも理由はあるのだが……、彼女に話すことではないか。

 

「Bクラスを訪ねたオレたちは、先の『暴力事件』で結ばれた協力体制について尋ねた。あの時は一之瀬(いちのせ)個人の協力だったが、これからはクラス単位での協力になるからな」

 

「そして一之瀬さんたちと正式に同盟を結んだんだね」

 

「その後はAクラスを訪ねたわけだ」

 

『洞窟』に到着すると、オレは二つの不可解な点を発見した。一つ目は、『洞窟』の出入口に暗幕を垂らし、外界から視界を遮ったこと。二つ目は、『洞窟』の出入口付近に置いてあった二個の仮設トイレ。

 

「一つ目は分かる。明らかな独占行為だもんね。けど二つ目はどうして?」

 

「DクラスもBクラスも、結局、仮設トイレは一個しか購入しなかっただろ?」

 

「そりゃあ、まあ、簡易トイレがあるから。最悪、それで済ませれば良いからね」

 

「だがAクラスはそうしなかった」

 

「たかが数ポイント、Aクラスにとってはそれくらいの認識なんじゃないの?」

 

「いいや、違うな」

 

 葛城は坂柳(さかやなぎ)とリーダーを争っている立場にある。だが坂柳は欠席。普通の人間なら、ここで何らかの成果──つまり、より多くのポイントを残したいと考えるはずだ。

 買わなくて良いものを買った、その情報は試験が終了次第速やかに坂柳派の生徒が告げ口するだろう。そうなれば坂柳はこの点で葛城を糾弾する。

 

「この不必要なポイント消費については覚えておいてくれ。後で補完するから」

 

 葛城と話した後、オレと櫛田は残っている敵地──Cクラスの拠点に赴いた。『浜辺』を開放し、思うがままに遊び尽くすCクラスの生徒たち。ここでオレたちは筒抜けのベースキャンプを見ることが出来た。

 石崎(いしざき)に案内され、オレたちはCクラスの『王』と対峙した。その後オレたちは『川』に戻る。するとクラスから追放された伊吹(いぶき)(みお)が保護されていた。

 

「伊吹を保護した時点で、オレは彼女が『スパイ』だと八割がた考えていた。松下は違うようだったけどな」

 

「うん。この前も言ったけど、私は彼女を保護することに内心では反対だった。最初から疑っていたからね」

 

 だが松下の第六感(シックス・センス)とは別に、Dクラスは伊吹を保護することに決めた。その最大の要因は伊吹澪の左頬にあった大きな腫れ。同情心を誘い出す『王』の作戦は、善良な人間をいとも容易く罠に嵌めた。

 こうして他クラスの人間を保護し、二日目が終了する。

 

「質問はあるか?」

 

「ううん、無いよ」

 

 三日目の早朝、オレは二日連続で松下と話す機会に恵まれた。そして会話の過程でオレは松下千秋(ちあき)の有用性を見出し始めた。

 オレはすぐに行動に移った。具体的には、彼女に一つの頼み事をした。

 

「あの時は本当に驚いたよ。まさか──伊吹さんのスクールバッグを(あさ)って欲しいだなんてさ」

 

「男のオレが女性の所要物を漁っているのを見られたら問答無用で退学の処遇を言い渡されるだろうからな」

 

 それぞれの仮設テントの出入口にオレたちは自分の荷物を置いていた。

 せめてどこか纏めて放置されていたら松下の手を煩わせる必要もなかったんだがな……。

 兎にも角にも、彼女はオレが理由を言うと快く引き受けてくれた。

 そしてスクールバッグのチャックを開けた彼女は目を見開かせただろう。

 

「ほんと、驚きの連続だったかな。まさか綾小路くんが予見したようにデジカメが入っていたとはね……」

 

 伊吹が佐倉(さくら)のように写真を撮ることが趣味であるのならデジタルカメラが入っていてもおかしくはないだろう。だが、彼女は言っていた。龍園のやり方は気に食わないと。実際に話してみて、彼女の『王』に対する憎しみは本物だと充分に伝わってきた。

 個人のものを特別試験に持参することは禁じられていた。つまり、入っていたデジタルカメラはポイントで購入したものになる。クラス闘争にひたむきな姿勢を見せる彼女が個人の都合でデジタルカメラを購入することは矛盾している。

 

「あのデジカメは、リーダーのキーカードを撮るためのものだったんだよね?」

 

「ああ。もし成功すれば莫大な利益を得ることに繋がる」

 

 そのための布石として、伊吹は最初から最後までDクラスで目立った行動をしなかった。疑われないよう、順応な振りをしていたというわけだ。恐らくは金田(かねだ)も似たようなものだろう。

 

「綾小路くんは私と同様、伊吹さんが『スパイ』だと確信していたんだよね。だったら龍園くんはどうなの?」

 

「そっちも同じだ。二日目の時点で、オレは龍園が、最後まで脱落しないことを見抜いていた」

 

 Cクラスは『浜辺』を大々的に開放していた。そしてオレは興味深いものを見付けていた。それは無造作に放置されていた無線機。

 これだけでも伊吹が『スパイ』であること、そして龍園の思惑に辿り着ける。

 

「でもちょっと待って。無線機だけで、そう、考えるのは無理があると思う。単純に遊びに使っていたんじゃないの?」

 

「それもあるかもしれない。だがオレは五日目──とある場所に埋められていた無線機を見付けた」

 

「とある……場所?」

 

「伊吹を発見したのは沖谷と山内(やまうち)だったよな。オレは五日目、沖谷に聞いたんだ。どこで伊吹と遭遇したのかをな」

 

 鞄の中に入れては駄目だ。デジタルカメラなら言い訳出来るが、無線機はそうはいかない。しかしながら、適当に埋めては無くす可能性がある。だからこそ、目立つ場所を選ぶ必要がある。事実、沖谷たちと伊吹が遭遇したのは、周りより一際大きい木の傍だったようだ。さらに沖谷の話によれば、彼女は巨木の幹に身体を預けていたようだ。そして決定的だったのが、視界に入らない位置、つまりは頭上の枝に小さな布が巻かれていた。足場があまり安定しない森の中、呑気に上を見ながら歩ける奴はそうは居ない。

 案の定、伊吹は地中に無線機を仕込んでいた。特別試験の最中で学校から借りている以上、客船に持っていくことは当然ながら出来ないだろう。

 

「これで龍園の狙いが判明しただろう」

 

「龍園くんの計略とは他クラスのリーダーを当てること──即ち、エクストラポイントの獲得なんだね……」

 

 松下は愕然(がくぜん)とした様子だった。

『王』に恐れの感情を抱いているのだろうが──オレは首を横に振り否定した。

 

「それだとデジカメの説明がつかない」

 

「龍園くんが伊吹さんや金田くんを信用してなかったからじゃないの?」

 

「いや、仮にも二人は『スパイ』に選ばれるくらいだ。金田は兎も角、伊吹本人は否定するだろうが、彼らの間には絶対的な主従関係が成り立っている」

 

 もし二人が虚偽の報告をしたとしても、それはすぐに試験結果という形で暴露される。Cクラスの残存ポイントはゼロ。そこから過程を計算することは容易い。

 裏切り者が居れば『王』は容赦なくそいつを断罪する。

 

「じゃあ、どうして……?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ッ!?」

 

 まず、Cクラスの人間ではない。次に、オレたちDクラスでもなければBクラスでもない。

 残るクラスは──。

 

「まさか……、Aクラスってこと……!?」

 

「正解だ」

 

「じゃ、じゃあAクラスとCクラスが手を組んでいたってことなの!?」

 

 オレは無言の頷きを返す。

 彼女は何やら驚愕しているようだが、考えてみるとそうでもない。

 

「BクラスとDクラスが同盟関係を確立したように、AクラスとCクラスもそうしていただけだ」

 

 とはいえ、オレたちとは違い、彼らの同盟は恐らく、今回だけのものだと思われる。長期的に組んだところでどちらともメリットがないからだ。

 

「四日目に拘っては特に言うことはないだろう」

 

「いやいや、あるからね。どうして平田くんがあんならしくない強行手段をとったのか、知っているなら教えて欲しい」

 

 やはり松下もそのような感想を抱いたのか。ということは、他の生徒も同様だと考えて良いだろう。

 

「簡単なことだ。オレが洋介にそのように指示を出したからだ。堀北が瀕死(ひんし)の一歩手前だったからな」

 

「堀北さんが……?」

 

「ああ」

 

 四日目の早朝。オレは体調が(すぐ)れない堀北を見て、このままでは彼女が試験終了まで身体が持たないことを察知した。

 それでは困るため、オレは洋介に休息期間を設けることを相談した。

 

「洋介は了承した。それで一日の休息が晴れて成立した 」

 

 考えてみると、四日目が一番平和だったな。結果論を述べるのならば、堀北の体調云々に拘らず、この休みはあって良かったと言えるだろう。

 

「五日目。松下が起きるよりもより早く、伊吹が行動を起こした。軽井沢(かるいざわ)の鞄から下着を抜き取り、適当な男子生徒──池の鞄に入れた」

 

「でもどうして? 伊吹さんの使命はDクラスのリーダーを暴くことだよね。他クラスの生徒が疑われるのは時間の問題で、リスクを冒す必要はなかったんじゃないのかな」

 

「想定していたよりもDクラスに纏まりがあり、焦ったんだろうな。クラスカーストのトップに位置する女子の下着が盗まれたんだ、当然、クラスは荒れる」

 

「綾小路くん、軽井沢さんのこと嫌いなの?」

 

「そんなことはない。苦手なだけだ」

 

 すると松下は微妙な表情を浮かべた。そこから一つため息を漏らす。

 

「綾小路くんってさ、意外にも好き嫌いがハッキリしているよね」

 

 オレは素で驚いてしまった。

 まさかそのようなことを言われるとは思っていなかったからだ。そう言えば、櫛田にもこの前似たようなことを言われたような……。

 こほんと先払いしてから、話を続ける。

 

「何はともあれ、伊吹の作戦は成功したわけだ。堀北が池を上手く弁護したおかげで何とか踏みとどまったが、Dクラスは結束を失ってしまった」

 

「や、やけに他人事のように話すんだね……」

 

 彼女は引いているようだった。

 薄情な奴だと思われているのだろう。

 だが──。

 

「松下も似たようなものだろう?」

 

「……何を言っているのかな……?」

 

 あくまでも松下は白を切る算段のようだ。

 それならそれで構わない。

 オレは彼女の瞳を捉えながら言った。

 

「この七日間、松下のことを観察させて貰った。オレが言えたことじゃないが、お前もかなり破綻していると思う」

 

 一秒、二秒、三秒、四秒──。

 五秒が経過したタイミングで松下は「ふぅー」と前髪を弄びながら長い吐息を吐き出した。

 

「あー、やっぱり。感じていた視線の正体は綾小路くんだったんだね」

 

「気付いていたのか」

 

「まぁね。女の子だから」

 

 と、松下は言いながらけらけらと笑う。

 やがて彼女はおもむろに口を開けた。

 

「私はね、綾小路くん。きみの言う通り、かなりおかしいんだよ。例えば私は篠原(しのはら)さんと佐藤(さとう)さんといつも一緒にいるけれど、時々、そう、時々なんだけどね──あれ、何で私はこのひとたちと遊んでいるんだろう? って思う時があるんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのくせ、独りになったらなったで誰かと一緒に居たいと思うんだよ」

 

 彼女たちのことが嫌いなわけじゃないんだよ? と松下は続けて言った。

 オレにはその言葉が、自分に言い聞かせているようにしか思えなかった。

 恐らく、松下千秋が不良品の巣窟であるDクラスに配属された理由はここにあるのではないだろうか。

 感情の起伏が激しい──たったそれだけの短い言葉で表現するのは適切ではないし彼女に失礼だ。

 

「悪い、かなり話が脱線したな。兎に角、オレはその後も引き続き単独で動くことを決意した」

 

 まずオレは茶柱に声を掛け、クラスメイトに何も言うことなくポイントを勝手に使った。クラスの生徒である以上、ポイントを消費して物を注文することは誰にも出来ることは確信していた。

 

「何を頼んだの?」

 

 オレは無言でそれを彼女の目の前で翳す。

 すると松下は何度目かの困惑に顔を染めた。

 

「それって……、携帯だよね?」

 

「他に何かに見えるか?」

 

 正真正銘、それは生徒が学校から支給されている携帯端末だった。

 自分のものであることを証明するため、先程、松下と交わしたチャットの履歴を見せる。しかしそれでも彼女は腑に落ちないようだった。

 

「でもおかしいよ。携帯は船から降りる時に没収されたし、マニュアルの商品カタログにもそんな項目はなかったはず。出来ないと思うんだけどな」

 

「違うな。マニュアルのルール要項には──『A〜Dクラス、全てのクラスに300ポイントを支給する。このポイントを消費することによって、マニュアルに載せられている道具類や食材を購入することが出来る。なお、原則的にはマニュアル外のものは購入出来ないが、万が一、欲しいものが出た場合は担任教師に確認をするように。場合によっては認められるものがある』と明記されてあった」

 

 つまり、余程頓珍漢(とんちんかん)なものでなければ、学校は応えるという意思を見せていたのだ。例えば、マニュアルに載っているデジタルカメラではなくて、自分が旅行に持参してきたデジタルカメラを使いたい場合は適応されるだろう。

 

「でもどうして携帯を?」

 

「そこは後で答える。茶柱先生に注文用紙を渡した後、オレは沖谷から当時の情報を聞き出し、ベースキャンプを抜け出した」

 

 ベースキャンプをあとにしたオレがまず向かった場所はBクラスの拠点である『井戸』。条約に基づき、五日目までにどれだけのポイントを消費したのかを交換した。

 オレはこの段階で、伊吹及び金田が『スパイ』であることを一之瀬に告げた。だがオレは金田を追い出さないで欲しいと彼女に頼んだ。それだと困るからだ。

 

「困るって……何に?」

 

「悪いが、そこも後で答える」

 

「……綾小路くんさ、答える気ある?」

 

「だから謝っているだろう。ここで答えても良いが、多分、頭がこんがらがるぞ」

 

 そう言うと、松下は渋々ながらも引き下がった。

 

「Bクラスへの用事を済ませた後、オレはその足でAクラスが占領しているエリアに侵入した」

 

「でもさ、『洞窟』の出入口は垂れ幕で塞がれていたよね。意味がないと思うんだけど」

 

「それはベースキャンプに限った話だ。流石に他の『スポット』にも似たような隠蔽工作をしたら、Aクラスは罰則(ペナルティ)を受けていただろうな。オレが侵入した理由は、Aクラスの生徒と会うためだ。より具体的には坂柳派の生徒だな」

 

 Aクラスには二つの派閥があり未だに争っている。それは緊急事態である特別試験だろうとも続いていた。いや、緊急事態だからこそだろうか。人間とは非常事態に陥った時に本性が現れる(けもの)だ。その時に真価を発揮出来るか否か、というポイントはとても大きい。

 坂柳が旅行を欠席している今こそが、葛城にとってはまたとない好機。慎重な男も『勝つ』ためには手段を選ばない。そのために彼は龍園と『密約』を交わした。

 

「ここで一つ、先延ばしにしていた問題を解こうか。龍園の狙いについてだ」

 

「今度こそ分かったよ。綾小路くんの解説、そして龍園くんの試験結果の態度から考えるに、Aクラスと『密約』をすることだよね」

 

「ああ」

 

「じゃあ質問。『密約』の内容は? って、これも後に回すんだよね?」

 

 送られてくる視線が痛い。オレは無言で頷いた。

 兎にも角にも、崖下の小屋でオレは二人のAクラスの生徒と出会う。そう、橋本と鬼頭の二人だ。

 オレは釣りに興じながら二人がどちらの派閥の人間なのかを探った。

 

「そしてオレは二人とも坂柳派の人間であるのを知った」

 

 橋本はすぐに教えてくれた。まあ、鬼頭は無言だったが……。

 計画通り坂柳派とコンタクトをとることに成功したオレは、その日は何もすることなく翌日、つまり、試験六日目に回すことに決めた。

 

「何で見送ったの? その日にしちゃえば良いんじゃない?」

 

「理由は二つある。一つ目は信頼関係がゼロに等しいからだな」

 

 特に橋本正義(まさよし)。彼がどのような思想の持ち主なのかを、断片的でも良いから欠片(ピース)を集めたかった。

 

「二つ目は?」

 

「ここで茶柱先生に頼んだ携帯が関係してくる。彼らと交渉する上で、どうしてもそれが欲しかったんだ」

 

 だがその時点では、オレは携帯端末を所持していなかった。頼めばすぐに用意されると思っていたのだが、そこそこの時間を必要した。

 二人が翌日、つまり六日目も来ることは分かっていた。それは橋本自身が、『この時間は毎日暇』だとオレに釣りを誘う時に口にしていたからだ。

 ベースキャンプに戻ったオレは堀北と話をした。それは共同戦線の約定(やくじょう)。そしてオレは彼女を使って松下を呼び出した。

 

「昨日は朝早くから悪かったな」

 

「ほんとだよ。一人になっていたら全然喋ったことがない堀北さんから急に声を掛けられたからさ。しかもきみが呼んでいるなんて。その上、堀北さんには説明を一つもしていなかったようだしね」

 

「堀北には話してもよかったが……、あいつは変に律儀というか、嘘を好まないからな。苦渋の決断ってやつだ」

 

「いやいや。それは違うでしょ」

 

 何を言ってるの? 呆れを含んだ目で見られたので、わざとらしく咳払いを打って誤魔化す。

 みんなが寝静まっている間──見張り役を除く──、オレと松下はトイレを装って密会した。ここでオレは彼女に二つのことを頼んだ。

 一つ目は──。

 

「まさか軽井沢さんと喧嘩しろだなんて」

 

「喧嘩じゃない、弾劾(だんがい)だ」

 

「同じようなものだからね、それ」

 

 物凄く怖かったからねと松下は苦言を呈してきた。

 何故松下と軽井沢をぶつけさせたのか。理由は二つある。

 一つ目は、彼女たちが同じ仮設テントで寝泊まりしていたから。ちなみに、軽井沢、園田(そのだ)石倉(いしくら)、篠原、佐藤、松下、堀北、櫛田に小野寺(おのでら)長谷部(はせべ)が一緒に寝ていたようだった。何とも驚きのメンバーだな。松下が別だったら、最悪、堀北にその役をさせるつもりだった。

 二つ目は崩壊した男女の戦争を終戦、もしくは停戦させるため。しかし普通にやって上手くいくはずもない。そのため、事の発端である下着の盗難事件である被害者の軽井沢を説得することが急務となった。

 軽井沢ではなくても池でも良いと思うだろうが、絶対的な影響力を持つクラスカーストの頂点に位置する彼女に協力して貰った方が遥かに効果は高くなる。

 オレが先程『弾劾』と表現したように、松下にさせたことは簡単だ。すなわち──軽井沢のこれまでの悪行を責める、ただそれだけ。

 

「軽井沢は言い返すことが出来なかったはずだ」

 

「その代わり、軽井沢さんは絶対に私のことを嫌っただろうけどねっ!」

 

 流石にこれは彼女も憤慨(ふんがい)ものなのか、鋭い目付きで睨んでくる。オレはそれを明後日の方向に何とか逸らした。

 

「一応確認するが、感情では何も言ってないよな?」

 

「当たり前だよ。指示通り、ねちっこく正論を何度も言っただけ。特にプライベートポイントのことは軽井沢さんにとって痛かったみたい」

 

 軽井沢は何度も述べるがクラスカーストの位置する生徒だ。集団のトップに鎮座するためには、それ相応の行動と責任が問われる。

 今回、松下が行ったことは簡単だ。軽井沢が入学してから現在までに度々ながらも起こしてきた問題行為について責めるだけ。客観的視点から追及することで、彼女の悪事を他ならない彼女自身に認めさせる。

 そして今回の下着盗難事件については、軽井沢にも問題が少なからずあると自覚させた。

 

「堀北さんの後ろに居たから何も知らない子たちは勘違いしてくれたと思うけど……、本当に、本っ当に肝が冷えたからねっ!」

 

 涙目で首をがくがくと揺らされた。

 松下は容姿だと可愛いよりは美人の部類だが……、前も思ったが、これだと可愛いという評価が出されそうだな。

 

「あーあ、これだと篠原さんや佐藤さんとも縁を切るしかないかなぁ……」

 

「縁を切るって……そこまでなのか?」

 

 純粋に疑問に思ったので尋ねると、松下は神妙に頷いた。

 

「綾小路くんが考えている以上に、女の子の闇は深いんだから。今時純粋無垢の女の子なんて居ないからさ、幻想は早めに捨てた方が良いよ」

 

 そう言われたら、オレは機械のように何度も頷くしかなかった。

 女の子の闇はさておいて、一つ、気掛かりな点があるが──それは後回しにするか。

 松下に頼んだことはもう一つある。それはDクラスのリーダーのキーカードを、伊吹の鞄に入っていたデジタルカメラで撮ることだ。

 

「堀北とは丁度よくタイミングが合ったようだな」

 

「私としてもあのタイミングはベストだったよ。篠原さんが執拗かったからさ。佐藤さんは佐藤さんであわあわしているだけだったし……、まあ、追い払うのに苦労したけど」

 

 憂鬱(ゆううつ)そうにため息を吐き出す。

 オレがその結果を招いたとはいえ、申し訳ないと思わなくもない。

 松下は堀北のスクールバッグの中からキーカードを取り出し、そして『ホリキタスズネ』と表記された部分をレンズでしっかりと捉えた。これで伊吹は『Dクラスのリーダーの正体を暴く』という自らの使命を、何もせずとも達成したことになる。

 そしてオレは時間を見計らって伊吹に一人で近付き、オレが彼女の正体を知っていること、そして手助けしたことを知らせた。

 

「ちなみにその時の伊吹さんの反応は?」

 

「無言で睨まれた。殺されるかと思ったよ」

 

「殺されるって……そこまで?」

 

 綾小路くん、伊吹さんに恨まれるようなことをしたの? と松下は言ってきた。

 伊吹がオレに殺意を向けた理由。その理由は、恐らく、オレが最初から『スパイ』だと知っていたのにも拘らず、あのような欺瞞(ぎまん)に満ちた会話を行ったからだろう。

 彼女からしたら、オレの行いは裏切りに映ったのかもしれないな。

 

「そして危惧していた雨が降り始めた。予め準備をしていたとはいえ、慌ただしくなるのは避けられない。伊吹は上手く逃げてくれたよ」

 

「堀北さんもこの時に試験を脱落したんだよね?」

 

「ああ」

 

「理由は? って、どうせこれも後回しなんだよね」

 

 流石、ここまでの流れを良く分かっている。

 とはいえ、全ての謎はすぐに解明される。

 

「試験六日目までは『防衛』でしかなく、『勝つ』ための下積みでしかない」

 

 試験七日目によって、試験の勝敗は決まる。

 そう、各クラスから選出されたリーダーを的中させることが出来れば、結末は大きく変わる。それこそ、朝の点呼の時点で、0ポイントだったCクラスが逆転することも不可能ではない。

 オレは携帯端末を操作し、作業を終わらせると、それを松下に見せた。

 

「これって──!?」

 

 覗き込むや、驚きを露にする。

 そこには試験結果から導き出した概算が書かれていた。

 

 

 

§

 

 

 

 第一回特別試験──試験結果

 

 〈Aクラス〉

 

 七日目、朝の点呼──270ポイント。

 

《攻撃》

 

 A→B。失敗。マイナス50ポイント。

 A→C。無し。

 A→D。失敗。マイナス50ポイント。

 

 

《防衛》

 

 B→A。成功。Bクラスに50ポイント支払う。

 C→A。成功。Cクラスに50ポイント支払う。

 D→A。成功。Dクラスに50ポイント支払う。

 

《結果》

 

 合計値(トータル)──20ポイント。

 

 

 〈Bクラス〉

 

 七日目、朝の点呼──160ポイント。

 

《攻撃》

 

 B→A。成功。プラス50ポイント。

 B→C。無し。

 B→D。無し。

 

《防衛》

 

 A→B。失敗。

 C→B。無し。

 D→B。無し。

 

《結果》

 

 合計値(トータル)──210ポイント。

 

 

 〈Cクラス〉

 

 七日目、朝の点呼──0ポイント。

 

《攻撃》

 

 C→A。成功。プラス50ポイント。

 C→B。無し。

 C→D。無し。

 

《防衛》

 

 A→C。無し。

 B→C。無し。

 D→C。無し。

 

《結果》

 

 合計値(トータル)──50ポイント。

 

 

 〈Dクラス〉

 

 七日目、朝の点呼──140ポイント。

 

《攻撃》

 

 D→A。成功。プラス50ポイント。

 D→B。無し。

 D→C。無し。

 

《防衛》

 

 A→D。失敗。

 B→D。無し。

 C→D。無し。

 

《結果》

 

 合計値(トータル)──190ポイント。

 

《総合結果》

 

 一位:一年B組──210ポイント。

 二位:一年D組──190ポイント。

 三位:一年C組──50ポイント。

 四位:一年A組──20ポイント。

 

§

 

 

 

「──真嶋先生から聞いた時にも思ったけど……、これってやっぱり変だよ。どうしてAクラスが四位なの?」

 

 何も知らない生徒からしたら、Aクラスの最下位について興味を持つことは当然だろう。

 オレは浅く呼吸をした。

 今までしてきた説明が無駄とは思わない。だが、ここからが各クラスの渦巻く思惑に繋がるのだ。先程も述べたが、彼女にはそれを知る権利がある。

 

「まず、Aクラスはこの画面を見れば分かるように、今朝の八時の時点で、残存ポイントは270ポイントだった」

 

 Aクラスは試験開始時に、坂柳の欠席によって容赦なくペナルティを受けていた。その額が30ポイント。つまり、Aクラスはそれ以降、1ポイントも消費しなかったということになる。

 

「いやいや! そんなこと出来るわけ──」

 

 何かに気付いたのか、松下は不自然に言葉を区切った。表情が強張(こわば)り「まさか……」と小さく呟く。

 どうやら本当に気付いたようだ。

 

「お前が考えている通りだ。ここで、AクラスとCクラスの『密約』が関係してくる。CクラスがAクラスに何を求めたのかは分からない。だが、その逆──Aクラスが何故Cクラスと結ぶメリットがあるのか、それは分かるだろう」

 

「Cクラスの300ポイント……、それを全部譲渡したんだね」

 

 より正確に言うならば、ポイントそのものを他クラスに譲渡することは出来ないだろう。単位はついていないが、試験終了後、クラスポイントとして加算されるのならそれは、実質的にはクラスポイントとして扱われるはずだ。

 学校はプライベートポイントのやり取りは認めているが、クラスポイントのやり取りは認めていない。

 ならどうするか。答えは簡単だ。ポイントを崩し、他のものに代替すれば良い。

 

「Cクラスは豪遊に使う以外のポイントを全て物資に使い、それをAクラスに譲渡したと思われる」

 

 その証拠に、龍園自身がオレと櫛田に案内した大型テント。そこには大量のダンボール箱が収められていた。箱の中に入っていたのは食料と水だ。

 

「でもだったら、豪遊する必要はないと思うな。本当に必要最低限なポイントだけ残せば、より美味みのあるものになると思うんだけど」

 

「本当にクラス同士のものだったらな、それもありだろう」

 

「どういうこと……?」

 

「龍園はクラスメイトに殆ど何も言っていない」

 

 とはいえ、それだと流石に誰も従わないだろうから、大雑把には告げていただろうが……。

 事実、Cクラスの生徒たちはそのような『色』を感じ取ることが出来た。

 

「それに、だ。確かにCクラスは豪遊していたが、実際のところ、そこまで遊んでいたわけじゃない」

 

 マニュアルのカタログ欄には遊び道具も載っていたが、殆どが少ないポイントで買えるものばかりだった。遊びに使ったポイントは仮設テントを含めても100ポイントが限度だろう。仮設トイレは支給された簡易トイレがあるのだから購入する必要はない。そのポイントでAクラスの分の物品を注文すれば良いのだから。

 

「でも仲間に何も言わないって……」

 

「Cクラスは龍園が支配するクラスだ。誰も反抗することは出来ない。それに仮に龍園がクラスメイトに全てを語っていたら、奴の計画に(ほころ)びが生じる恐れがある」

 

 櫛田のように自分を偽ることが出来る人間の集団だったら、その可能性もごく僅かだがあっただろう。

 しかし『仮面』を付けることに慣れていない人間が、彼女のように演技出来るはずがない。ましてや大人数になれば尚更だ。

 

「Aクラスの270ポイントの謎については理解したよ。じゃあ、次。どうしてAクラスは『攻撃』と『防衛』、共に失敗しているの?」

 

「そうだな……まずは何故『攻撃』が失敗したのかを話そうか」

 

 AクラスはB、Dクラスに『攻撃』していた。もし仮にリーダーを的中させることに成功すれば、彼らには100ポイントがされ加算、さらに、両クラスのボーナスポイントが無くなる。

 しかしながらAクラスは『攻撃』に失敗している。

 

「まず大前提として、他クラスのリーダーを探り的中させる、ということはとても至難だ」

 

「そうだね。そのように学校側も試験を作っただろうし」

 

「普通の『攻撃』ではどんなに頑張っても数人に絞ることしか出来ない」

 

 そう、普通の『攻撃』なら。

 なら話は簡単だ。普通ではない『攻撃』をすれば良い。

 

「葛城の性格上、Aクラスが表立って動くことはしないだろう。というより、出来ない。そこでCクラス──龍園が登場する。秘密裏に『密約』を交わした後、彼は伊吹と金田を『スパイ』としてB、Dクラスに解き放った」

 

 AクラスがCクラスに求めたのは物資と、他クラスのリーダーの情報。

 そして伊吹と金田の怪我は『嘘』を『真』にするためのフェイク。

 

「『スパイ』として潜り込むことに成功した二人は、試験中、一度たりとて目立った行動をしなかった。当然だ。下手に動けば任務が果たせなくなるからな」

 

 しかし伊吹は動かざるを得ない状況にまで追い詰められた。彼女の想定外は、Dクラスが思いの外協力して試験に臨んでいたこと。

 そこで伊吹は強硬策に打って出る。クラスの中核を担う人物、軽井沢の下着を盗むこと。池が選ばれてしまったのは偶然だろう。そこまで追求する理由がないからだ。

 

「だがそれでも、伊吹はキーカードを目視することさえ出来なかった」

 

「なるほどね。そこで私が舞台に登場したんだ」

 

 松下の協力の下、Dクラスのリーダーの情報をわざと伊吹に漏らした。

 そして彼女は試験六日目の昨夜、雨に紛れて敵地から脱出、恐らくは龍園に合流したのだと思われる。

 

「そろそろ真実を教えて欲しいな」

 

「ああ。答えを言うと──今朝の点呼の時点で、Dクラスのリーダーは堀北鈴音ではなく、平田洋介に変えられていたからだ」

 

「……!? ちょっ、ちょっと待って。……うん、カラクリは分かったよ。リーダーの情報を漏らしたのはそのためだったってことだよね。でもおかしいのはここからだよ。リーダーの変更って認められるの?」

 

「認められるからこのような結果になった」

 

 実際にマニュアルにもそのように明記されている。

 ──『追加ルール:Ⅰの⑧:正当な理由なくしてリーダーの変更は出来ない』──

 オレは彼女の疑問に答えるため、渇きつつある喉を鳴らした。

 

「通常ならリーダーの変更は松下の言う通り認められない。だが、リーダーが試験を脱落したら。それは『正当な理由』として成立する」

 

 リーダーが居なければ『スポット』の占有及び更新が出来なくなる。

 たとえ堀北が仮病だと学校側が確信していたとしても、Cクラスの生徒の脱落を認めている以上、学校側は公平性を保つために堀北の脱落を認めざるを得ない。

 

「葛城は何も疑わず、龍園からそのデータを受け取っただろうな」

 

 葛城は龍園を信用していなかったが、それでも、目の前で証拠が出されたのだから、その証拠そのものには猜疑心が一欠片も生まれなかったはずだ。

 

「これでAクラスがDクラスに対して『攻撃』を失敗した説明が終わりになる。次はBクラスに対してだが──」

 

「そこも分かったよ。綾小路くんがどうして一之瀬さんに金田さんを追い出さないで欲しいと頼んだのか。私たちと同じようにさせるためだよね?」

 

「百点満点だ」

 

 BクラスもDクラスと同様にリーダーを変更。Aクラスからの『攻撃』を防いだ。

 Cクラスについては説明しなくても問題ないだろう。単純に葛城がリスクを恐れたからに過ぎない。

 

「次に、何故Aクラスが全クラスから集中砲火を浴びたのか。まずここで、オレが客船上でとった行動が影響を与えている」

 

 Aクラスは一年生共通の敵という状況のことだ。

 

「でも、Aクラスのリーダーを射止めるって……それこそ至難の業じゃないの?」

 

「その通りだ。龍園がさっき浜辺で言っていたが、こと物理的な『防衛』という観点なら、Aクラスは他クラスの追随を許していなかった」

 

『洞窟』の出入り口を垂れ幕で塞ぎ、内部を隠蔽した。これにより、『スポット』の装置、リーダー、そして、Cクラスから提供された物資を秘匿することに成功していた。

 正しく鉄壁の牙城と言えるだろう。

 

「じゃあ……、どうして……?」

 

 オレは首を傾げる松下に簡潔に言った。

 

「内部分裂だ」

 

「……え? 」

 

「オレが坂柳派に近付いた理由がここにある。坂柳派の生徒からしたら、仕方がないとはいえ、葛城がリーダーを務めることに不満を抱き、面白くないと思うのは当然のことだ」

 

 だからこそ、この間隙(かんげき)を突くことが出来る。

 試験七日目、まずオレはベースキャンプをあとにして一人で橋本に会いに行った。そこには鬼頭は居なかったが、問題は何もない。

 

「オレは橋本からAクラスのリーダーの情報を買うつもりだった」

 

 そのために茶柱に携帯端末を注文した。現在所持しているプライベートポイントを公開するためだ。必要だったらそれ以外のこともやるつもりだった。

 しかしながら松下は腑に落ちないようだった。それも当然だろう。Dクラスの生徒は貧しい生活を余儀なくされている者が大半だ。先月からようやくクラスポイントの支給が再開されたとはいえ、その額は微々たるもの。何かを買う……ましてや、それが他クラスの情報なんて、おいそれと出来る芸当ではない。

 実際にその目で見て貰った方が早いと判断し、オレは携帯端末を操作して、彼女に画面を向けた。

 するとたちまち彼女の瞳が思い切り見開かれる。

 

「嘘……! だいたい……に、20万pr!?」

 

 どうしてこんな大金を!? 目で尋ねてくるが、オレは言葉を濁らした。とてもではないが、流石に、入手方法まで言うことは出来そうにない。

 

「うん? でも待って……つもりだった?」

 

 違和感を口にする松下にオレは頷いた。

 

「これはオレも想定外だったが、橋本は何も見返りを求めることなくオレに教えてくれた」

 

「それはまた……どうして?」

 

「さぁな。葛城に従うのが余程嫌だったのか、あるいは、他の理由があったのか……。どちらにせよ、オレは橋本から『トツカヤヒコ』と入力されていたキーカードを写した写真を受け取った」

 

「あっ、じゃあ、綾小路くんの推測は当たっていたんだね」

 

「そういうことになるな。その後オレはBクラスに持って行き、その写真を共有した」

 

 これでB、Dクラスは『攻撃』の準備が完了した。

 

「Cクラスが……龍園くんが『攻撃』出来たのも、橋本くんから教えて貰ったからなのかな」

 

「そこは分からない。ただ……Aクラスの中に裏切り者が居るのは間違いないだろうな」

 

 今回の特別試験、嘗てない程に各々の思惑が絡み、交錯したものとなった。

 Aクラスは最後まで意志を統一することが出来ず、これまでの悪行が重なり全クラスを敵に回して敗北した。

 Bクラスは仲間との連携で攻守ともに堅実な一手を打ち、結果的に、総合評価一位の栄光を摑んだ。今回の特別試験で一番『波』が立たなかったのは間違いなくこのクラスだろう。ただ彼らの唯一の誤算は降り掛かった雨。これにより、急遽、多大なポイント消費を必要とした。本当なら一位と二位の差はもっと広がっていた。

 Cクラスにとって試験結果はあくまでも副産物でしかなく、大局を見据えた行動を起こした。()の『王』が何を為したのか、その詳細が判明された時、Cクラスはクラス闘争に於いて真の姿を見せるだろう。

 そしてDクラス。今回の特別試験で獲得したクラスポイントにより、ようやく、この絶望的な状況から()()がるための準備が整った。

 松下に伝えるべきことは伝えた。

 話を聞き終えた彼女がじっとオレの瞳を覗き込んでくる。

 

「──綾小路くん、きみが凄いひとっていうことは分かったよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうかもしれないな」

 

「それできみは何をしたいの? 私を利用するだけなら、ここまで深い話をしなくても良いよね。けどきみは私に話してしまった」

 

 松下がやってきたように、オレも彼女の瞳を覗き込む。

 そこに恐怖や不安の色は灯っていなかった。あるのは純然たる──。

 オレは簡潔に言葉を届けた。

 

「率直に言うが、これから先のクラス闘争に於いて、オレに協力して欲しい」

 

「返答をする前に、一つだけ聞かせてくれないかな。どうして私なのかな?」

 

 何故平田洋介でもなく、堀北鈴音でもなく、櫛田桔梗でもなく──松下千秋なのか。彼女が聞きたいのは『そこ』なのだろう。

 ここで嘘を吐くのは愚行以外の何物でもない。

 本心を告げる。

 

()()や堀北たちのことをオレは信用していない。彼らとここまで協力してきたのは、友人だからじゃない。互いの利害が一致してきたからに他ならない」

 

 そう、オレは彼らのことを微塵も信用していない。だからオレはいつも重要なことはいつも彼らには最後の最後まで言って来なかった。

 最初の試練である『一学期中間試験』や先月の『暴力事件』……そして、今回の『無人島生活』でも同様だ。ぎりぎりになるまでオレは自身の『計画』を打ち明けてこなかった。

 ただ唯一例外は居るが、それはまた別だ。

 

「オレがお前を選んだのは、Dクラスの中で松下が一番オレに近いと思ったからだ」

 

 性格や行動理念ではない。

 ただ純然にその感想を強く抱いたのが彼女だった。

 ややして、彼女は閉じていた瞼を開ける。そして、はっきりと言葉を口ずさんだ。

 

「良いよ」

 

「ありがとう」

 

「綾小路くんと居ると退屈しなさそうだしね」

 

「それはないな。オレと居ても退屈しかしないと思うぞ、先に言っておくが」

 

 既にこの場に用はない。

 オレたちは並んで禁止エリアから脱出する。今後のことを考えれば距離を置けば良いのだろうが、まだここは下層エリアだ。

 松下と取り留めのない雑談をしながら、とうとう中層エリアに入る。

 

「それじゃあ、またね──清隆(きよたか)くん」

 

「ああ。また会おう──千秋(ちあき)

 

 軽く手を振ってから、千秋は去っていった。恐らくは自分の部屋に戻るのだろう。

 そう言えば……と、オレはあることを思い出す。それは彼女を追い掛け、問うべきなのだろうが……、オレはやめることにした。

 予定では今から三十分後、平田がクラスメイトに特別試験の顛末を話すことになっている。全員参加の義務があるというわけではないが、オレはBクラスとの橋渡し役を担うことになった。参加するのが道理だろう。それに不参加したら、また要らぬ注目を集めることになる。

 程なくして、チャットアプリのクラスのグループに、一枚の画像が投稿された。発信主は平田のようで、画像の一部が青色で塗られている。どうやら大部屋の予約に成功したようだ。名義はDクラスのようで、他クラスの生徒が潜入することを防ぐことに成功したようだ。

 オレはそのままそこに向かうことにした。

 長い一本道の廊下を渡りながら、今回の特別試験を総合的に振り返る。

 様々なことがあったが、一番の収穫はやはり松下千秋という『駒』の獲得に成功したことだろう。

 毎度毎度平田や堀北、櫛田たちと『契約』をするのは面倒臭い。あと残っているのは平田と櫛田の二人。前者は半分程は完了しているが、後者は──。

 

「出来れば夏休み終了前に全てを終わらせたいところだな……」

 

 とはいえ、兎にも角にも、これで『勝つ』ための手札がまた一つ用意出来たわけだ。

 

 ──この世界は残酷なまでに『勝つ』ことが求められる。

 

『敗者』は『勝者』に(なぶ)られ、虐げられる。

 そう、この世界は『勝つ』ことが全て。

『勝つ』ためには手段を選ばない。

 オレにとって全ての人間は『勝つ』ための『道具』でしかない。

 過程は関係ない。

 どれだけの犠牲を払おうとも構わない。

 

 最後にオレが勝っていれば、それで良い。

 




第四章──完結。

第四章が開始されたのが今年の三月一日なので、いざのうして振り返ると、物凄く時間が掛かりました。ごめんなさい。
第四章のタイトルは──『人格形成』。様々な受け取り方が出来ると思います。
今回一番苦労したのは何かと聞かれたら……全てです。最初から最後まで神経をすり減らしました。

綾小路くんが目的であった『駒』をとうとう獲得した訳ですが、これは連載当初から決めておりました。これから先、彼の『駒』は大いに活躍すると思われます。
しかしながら、ここでまた一つ新たな難所が立ち塞がります。原作を踏破している方なら分かってくれると思いますが、そう、『彼女』のこの二次小説での扱いです。
今の胸中を述べると、

──やっべー。まじでどうしよう!

というものになっております。しかしある程度は脳内で構成されていますのでご安心を。
A、B、C、Dクラス。それぞれのクラスの思惑を上手く表現出来たかは、正直なところ、微妙です。少なくとも、ああすれば良かった、こうすれば良かったと思う箇所が何箇所もあります。そこは反省し、次に活かしたいですね。
っていうか、この作品だけに拘らず、私の二次小説って、いつも、無駄に描写が細かいんですよね。しかし今更このスタンスを変えるわけにはいきませんし、他ならない私が納得出来ません。少しは修正するでしょうが、今後とも、この長ったらしい二次小説に付き合って頂けると嬉しいです。
第五章……に入る前に、慣例の『幕間』に入ります。第四章の補完と、新たな伏線を張る予定です。長くても三話くらいで終わると思います。
それではまたあとがきで会いましょう! っと言う前に。アンケート結果を発表します。

内容は──
『またまた質問です! 読者の皆様は、第四章に於いて、誰が一番活躍したと思いますか? Dクラスの生徒の中からお願いします。なお、主人公、綾小路清隆は対象外とさせて頂きます』というものでした。

結果は──
堀北鈴音──六十二票。
平田洋介──七十五票。
櫛田桔梗──三十六票。
軽井沢恵──五十二票。
その他──八十二票。

うーん、『その他』が一番票数が多いって……いえまあ、予想はしていましたが。皆様が『その他』の誰に投票したのかは察しておりますが……。
平田くんの頑張りが皆様に伝わっているようで何よりです。堀北さんや軽井沢さんも予想の範囲内です。
が! しかし!
櫛田さんの結果には苦笑いを禁じ得ません。どんまい。しかし櫛田ファンの皆様、安心して下さい、第五章では活躍します(唐突なネタバレ)!

最後になりましたが、読者の皆様に最大級の感謝を! 感想を下さる方、評価を下さる方、お気に入り登録して下さる方、ごみのような文章を訂正して下さる方、全ての読者の皆様によって、この二次小説は続いております。
これからも末永く完結まで付き合って頂けると幸せです。
それでは、また!













──それはそうと、この二次小説の題名って、内容が全然題名に沿ってないよね。これはあれだな、わんちゃん、変える必要性が出てくるかもな……。



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