本コラムでは、MBAとは何なのか、
そして、日本でMBAを取得できる機会として、国内MBA、海外MBAの日本版の2つを紹介します。
国内MBAを考え始めた方に、たくさんあるMBA大学院の中から、自分に合ったMBAを選び出すためのフレームワークをお教えします。
このフレームワークで国内MBAを評価していただければ、自分が目指すべき国内MBAがどこなのかが明らかになってきます。
その上で、筆者がおすすめする国内MBAをいくつか紹介したいと思います。
MBAとは?何を学べる?
MBA(日本語で言うと、経営学修士)とは、米国において企業経営を科学的アプローチによって捉え、経営の近代化を進めるとの考え方のもとに、19世紀末に登場した高等教育コース(大学院修士課程)です。
1881年にウォートン・スクールが最初のビジネススクールとして設立され、1920年代にはハーバード・ビジネス・スクールが状況分析と経営判断の能力を訓練するケースメソッドという教育アプローチを開発し、多くのビジネススクールに採用されるようになりました。
MBAでは、企業経営に関する幅広いことを学びます。
具体的には、経営戦略、マーケティング、組織論、組織行動学、アカウンティング、ファイナンス、オペレーションマネジメント、生産管理、情報マネジメント、経済学、統計学など、企業経営をしていく上で必要となるすべての知識を学びます。
企業経営に関する全般的かつ実践的な学びの場は、日本においてはMBAしかないことから、MBAがビジネスマンにとっては必須の教育になってきています。
MBAを日本で取得するには?MBAの2つの種類
日本で取得できるMBAには、「国内の大学が開校している国内MBA大学院」と「海外のMBA大学院が日本で実施している海外MBA日本版」の2種類があります。
まず、「国内の大学が開校している国内MBA大学院」について紹介します。
「国内の大学が開校している国内MBA大学院」について
日本では、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)が1962年に創立された、最も歴史のあるビジネススクールです。
現在では、全国の多くの大学院で国内MBAコースが開講されています。
国公立では京都大学、神戸大学、大阪大学、兵庫県立大学、筑波大学、東京都立大学、横浜国立大学、一橋大学、東京工業大学、北海道大学、小樽商科大学、九州大学などです。
私立では先の慶應義塾大学以外では、青山学院大学、明治大学、立教大学、中央大学、早稲田大学、東洋大学、多摩大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学、名古屋商科大学、グロービス経営大学院などで開講されています。
「海外のMBA大学院が日本で実施している海外MBA日本版」について
次に、「海外のMBA大学院が日本で実施している海外MBA日本版」について紹介します。
海外MBAが日本で実施している大学院として、ボンド大学、マサチューセッツ州立大学、英国国立ウェールズ大学などがあります。
ボンド大学、マサチューセッツ州立大学はオンラインによるMBAですので、海外MBAの本格的な英語の授業を受けることができます。
英国国立ウェールズ大学は日本人教授による日本語の授業が通学制でおこなわれていますので、実態としては「国内の大学が開校している国内MBA大学院」と同じです。
本国の生の授業が受けられるというわけではありません。
「国内MBA大学院」と「海外MBA日本版」2つの違い
「国内MBA大学院」と「海外MBA日本版」の大きな違いは、使用言語が日本語か英語かという点です。
海外MBA日本版は、基本的に英語での授業、もしくは英語と日本語の双方を使用する授業となっています(英国国立ウェールズ大学は日本語です)。
一方、国内MBAは基本的に日本語での授業となっています。
2点目は、MBAとしての評価に差がある場合もあります。
国内MBAは国内のMBAを修了したという評価を受けることができます。
一方、海外MBA日本版は、その海外MBAを修了したと同じ評価を受けることができるかというと、転職の際の面接官の中には、海外大学提携型のMBAに懐疑的な印象を持っている方も少なからずいます。
過去にアガルートの受講生で海外MBA日本版を修了した方がいましたが、面接では海外本校のMBAではなく海外MBA日本版ということで、「あっ、本校じゃないんだ」と言われた経験がある方がいました。
海外MBA日本版は、海外MBAの日本における提携機関がMBAを運営しているということで信頼性が低くなる場合もあるということです。
「国内MBA大学院」と「海外MBA日本版」それぞれのメリット
「国内MBA大学院」と「海外MBA日本版」、どちらで学んでもメリットがあります。
「国内MBA大学院」のメリット 勉強に集中できる&国内での人脈形成
国内MBAで学ぶメリットは、日本語での学びになりますので、経営学の勉強に集中できることです。
言語が英語の場合は、仮にTOEICのスコアが900の方でも、MBAの授業を理解する際や英語のテキストを読む際に、苦労が伴います。
そのため、経営学の勉強というよりも英語の勉強になってしまうこともあります。
その点、日本語で学ぶということでしたら、言葉の理解に苦労することはないので、経営学の勉強に集中できます。
また、日本でビジネスをおこなっていく場合は、日本人との人脈が重要になりますが、この日本人との人脈が出来る点が国内MBAのメリットです。
「海外MBA日本版」のメリット 英語力アップ&海外での人脈形成
海外MBA日本版のメリットは、英語力が高まる点です。
日本人が英語のカリキュラムで受講する場合、まず言語の壁が存在しますが、英語でMBAを学ぶ以上は、この壁を乗り越えなければなりません。
そのために英語力が身に付くと思います。
また、海外MBA日本版は、通常の授業以外に、本国のMBAに実際におこなって学ぶ機会もあります。
そのために、海外での人脈形成が可能になっています。
例えば、ボンド大学のMBAは、卒業するまでに最低2回、ゴールドコーストにあるボンド大学キャンパスへ約1週間のスタディツアーに参加する必要があります。
このような機会を活かして、人脈をグローバルに広げることも可能です。
国内MBAは大きく分けて3つの型がある
国内MBAを目指す場合に、どこのMBA大学院に進学するのかを決める必要があります。
国内MBAといっても大学院によって特徴があります。
そこで皆さんが、どこのMBA大学院を目指すのかを決めるために、MBA大学院の特徴をわかりやすく説明したフレームワークを紹介します。
このフレームワークに従って、ある程度、志望校を絞り込んでください。
ここでは国内MBA大学院の特徴を「ゼネラリスト型」「アカデミック型」「ハイブリッド型」に分けて、皆さんが志望するMBAは「ゼネラリスト型MBA」なのか、それとも「アカデミック型MBA」なのか、という判断が自分でできるようにすることを目的に説明をしていきます。
「ゼネラリスト型MBA」は経営に必要な知識と技術を体系的に学ぶ
まず「ゼネラリスト型MBA」とはどういうMBAなのかを説明します。
欧米でMBAというと、企業を経営するために必要な知識を幅広く学ぶことを目的としています。
よって、一般的なMBAのカリキュラムは、人的資源管理、組織論、財務会計、ファイナンス、情報・マーケティング、経営戦略、統計学、経済学といった科目を中心に構成されており、経営に必要な知識と技術を体系的に学ぶことができます。
また、これらの科目を単に座学として学ぶのではなく、現場で通用する実践力を身に付けることを主眼としています。
そのため、授業はケースディスカッションが中心になっています。
これが欧米のMBAの一般的な形で、経営学全般を学ぶということでゼネラリスト型MBAと呼んでいます。
このゼネラリスト型MBAは、将来企業の経営者になるとか、外部から企業経営を支援するコンサルタントになるといった目的を持った方が対象になります。
国内MBAもゼネラリスト型に該当する大学院は多数存在します。
青山学院大学、慶應義塾大学、早稲田大学などです。
「アカデミック型MBA」は経営学の一つの領域にフォーカスした研究をおこなう
次に「アカデミック型MBA」とはどういうMBAなのかを説明します。
このアカデミック型MBAは、日本特有のMBAでして、幅広い経営学を学ぶというよりも、経営学の一つの領域にフォーカスした研究をおこなうMBAです。
アカデミック型MBAは、将来研究者(大学教授)になりたいとか、リサーチャーなどのデータ解析のエキスパートになりたい、といった目的を持った方が対象になります。
アカデミック型に該当する大学院は、筑波大学、一橋大学(金融・財務プログラム)、横浜国立大学などです。
「ハイブリッド型」はゼネラリスト型とアカデミック型の特徴を併せ持つ
最後に「ハイブリッド型」です。
ハイブリッド型は、「ゼネラリスト型」と「アカデミック型」の両方を学ぶことができるMBAです。
ケーススタディによるディスカッションもある程度は行いながら、アカデミックな研究にもある程度力を入れています。
ハイブリッド型に該当する大学院は、神戸大学、都立大学、一橋大学(経営分析、経営管理プログラム)などです
以上、MBA大学院の特徴を「ゼネラリスト型」「アカデミック型」「ハイブリッド型」に分けて、教育内容の違い、学びの目的の違いを説明しました。
皆さんが進学する目的に応じて、どのカテゴリーのMBAを目指すのかを決めていただければと思います。
【3つの型についてもっと詳しく知りたい方はこちら】
おすすめの日本のMBA
ここでは、筆者がおすすめする国内MBAを、先の「ゼネラリスト型」「アカデミック型」「ハイブリッド型」のフレームワークをもとに紹介します。
「ゼネラリスト型」のおすすめの国内MBA
まず、「ゼネラリスト型」でおすすめの国内MBAは、
です。
どのMBAもケーススタディによるゼネラリスト養成のための教育がおこなわれています。
ただ、大学院ごとにケーススタディのウエイトは異なります。
ケーススタディのウエイトが高い順に並べると、慶應義塾大学>早稲田大学>青山学院大学の順です。
早稲田や青学はケース以外に講義形式のレクチャーも重視されています。
特に青学はレクチャーが多く、社会人経験のない大学生がなじみやすい授業形態となっています。
また、筑波大学(国際経営プロフェッショナル専攻)はすべて英語で授業がおこなわれています。
日本にいながら海外MBAと同様の英語での学習環境が整っている点で、英語力のある方におすすめです。
「アカデミック型」のおすすめの国内MBA
次に、「アカデミック型」でおすすめの国内MBAは、
です。
本格的なリサーチスキル、計量分析スキル、統計的アプローチを身に付けることができる国内MBAの中でも異色のMBAです。
一橋はファイナンス領域に関する研究をしたい方にお勧めです。
筑波は経営学のどの領域でも対応可能ですが、特にIT、AIなどの情報技術系に強みを持つ大学院です。
「ハイブリッド型」のおすすめの国内MBA
最後に、「ゼネラリスト型」と「アカデミック型」の両方を学ぶことができる「ハイブリッド型」MBAのおすすめ大学院を紹介します。
です。
これら3校は経営学を全体的に学ぶことにも力を入れていますので、講義やケーススタディが充実しています。
一方でアカデミックな研究にも力を入れています。
例えば、神戸大学では、プロジェクト方式を採用し、フィールド(経営の現場)で収集されたデータに基づいて現実の重要な問題を見つけ出すことに力点を置いた指導をしています。
一橋大学では、1年次からワークショップ(ゼミ)に所属して、論文作成の準備をおこなう形態となっています。
以上、国内MBAの特徴、選び方、おすすめの大学院を紹介しました。
ここで紹介した内容をもとに、皆さんの目的に合致した国内MBAを選んでみてください。