特定商取引法表示とバーチャルオフィスの住所表記

ネットショップの特定商取引法表示にバーチャルオフィスの住所を使うことは可能か?
結論から言うと可能です。しかし、いくつか注意点がありますので最後まで熟読ください。

特定商取引法とバーチャルオフィスの関係を解説

イメージネットショップネットショップを運営する際には、特定商取引法により、販売業者の氏名(名称)や住所、電話番号等の一定事項を表示することが義務づけられています。最近は、バーチャルオフィスを利用してネットショップを開業する形態も増えていますが、このような開業方法は特定商取引法の表示義務違反にならないのでしょうか?今回は、ネットショップでバーチャルオフィスを利用することが特定商取引法違反にならないのかどうかについて解説します。

1.特定商取引法の表示義務とは

男性ネットショップを経営する場合には、特定商取引法という法律に従う必要があります。特定商取引法は、消費者自身の誤認や業者による詐欺などによって被害を受けないよう、消費者を守ることを目的とした法律で、特に消費者が被害に遭いやすいいくつかの類型の取引に規制を課しています。通信販売も特定商取引法によって規制を受ける取引形態で、通信販売の場合、広告をする際に、広告内へ一定事項の表示をすることが義務づけられています(特定商取引法11条)。
ここで義務づけられる表示内容の中に、「販売業者の氏名・名称、住所、電話番号」などがあります。
このようなことから、ネットショップを経営する場合には、原則的に、サイト上において、販売業者の名称やブランド名、事業所の住所、電話番号などを表示しないといけないのです。表示義務に違反すると、監督官庁から指示や業務停止命令などの行政処分を受けるおそれがあります(14条、15条)。

2.バーチャルオフィスと特定商取引法表示

最近、バーチャルオフィスを利用してネットショップを開業する形態が増えています。
バーチャルオフィスとは、販売業者自身の名称や住所、連絡先を使わずに、ネット上で別の住所や電話番号を貸してもらって営業をすることです。たとえば、個人がネットショップを開業する際などには、自分の氏名や住所、電話番号などをネット上に全部公開することに抵抗があるケースがありますが、そういったときにバーチャルオフィスを利用して、自分の情報ではなくバーチャルオフィスの情報を掲載するのです。しかし、そうすると、サイト上には、販売業者の名称や住所などの情報が表示されないことになってしまうので、特定商取引法上で義務づけられている氏名や住所などの表示義務に違反しているのではないかが問題になります。

3.特定商取引法表示義務の例外

ネットショップのバーチャルオフィス利用が、特定商取引法上の表示義務違反になるのかどうかについて正しく判断するためには、特定商取引法の表示義務の例外規定について理解しておく必要があります。
通信販売業を営む場合、基本的には表示義務に従わないと違法ですが、これには、例外が定められています。
具体的には、特定商取引法上で定められた表示事項について、利用者から「開示してほしい」という請求があれば、遅滞なく書面やデータによって情報提供をすることが広告上に表示されており、実際に請求があった場合には速やかに開示できる状態にしている場合には、表示事項の一部を表示しないことができるとされています(特定商取引法11条但し書き)。

この場合に省略できる事項には、販売業者の氏名や住所、電話番号も含まれています。
つまり特定商取引法上においては、原則としてはネットショップ経営業者の名称やブランド名、住所や電話番号などをサイト上に表示することが必要だけれども、消費者からの請求があれば情報開示に応じることをサイト上に表示していて、実際にいつでもそれを開示できる状態にしている場合には、例外的にこれらを表示しなくても良いことになっているのです。

4.バーチャルオフィスは例外に該当するか

通信販売業の場合でも、上記の例外に該当する場合には、氏名や住所などの表示をしないことができますが、バーチャルオフィスを利用する場合にこの例外規定に該当するのかが問題です。この問題について、バーチャルオフィスサービスを展開している業者が消費者庁に確認したところ、平成26年7月31日、消費者庁は以下のような回答をしています。

消費者庁の見解

販売業者が広告上に販売業者の氏名や名称、ブランド名以外の名前を使用していたり、自社の住所や電話番号以外の連絡先を表示したりしている場合、

  • ① その氏名や住所、電話番号などの連絡先が販売業者のものではないことを表示すること
  • ② 請求があれば、速やかに販売業者自身の氏名や名称、住所や電話番号などの連絡先を書面やデータによって公開する旨を表示すること
  • ③ 請求があった場合には、実際に速やかに開示に応じられるような措置をとっておくこと
    上記の要件を満たした場合には、特定商取引法上の表示を省略することができ、特定商取引法11条の表示義務違反にならず、誇大広告(12条)にも該当しないので、同法による行政指導(14条、15条)の対象にならない。

つまり、バーチャルオフィスを利用する場合であっても、

① 販売サイト上に、バーチャルオフィスから借りている氏名や住所、電話番号が自社のものではないということを表示していて
② 開示請求があったらすぐに自社の情報(氏名、名称や住所、電話番号)を開示することを明らかにしていて
③ 実際に開示請求があったら速やかに開示ができるように準備をしている

なら、バーチャルオフィスを使っても違法にならない、ということです。
この要件を満たしている限り、バーチャルオフィスは少なくとも消費者庁の見解レベルでは合法なので、特定商取引法違反になって指示を受けたり業務停止処分をされたりするおそれはないと言えるでしょう。

5.バーチャルオフィスが合法になるための特定商取引法表示

以下では、バーチャルオフィスが合法になるための表示の具体例を確認します。
まずは、サイト上に自分以外のバーチャルオフィスの名称や住所、電話番号を記載する必要があります。
その上で、「上記の氏名(名称)、住所、電話番号は、実際の販売業者のものとは異なります。」「請求がある場合、速やかに実際の販売業者の氏名(名称)、住所、電話番号を開示いたします。」と記載します。

注意しなければならないのは「開示請求があったら速やかに開示できるように準備しておく必要がある」ことです
いくらサイト上に「請求があれば開示します」と記載されていても、実際に請求があったときに対応ができなければ、表示義務違反で違法と判断されます。
バーチャルオフィスを使ってネットショップの営業をする際には、利用者が簡単に利用できる問合せフォームを作っておいて、毎日その内容をチェックし、開示請求があったらデータ送信などによって「速やかに」情報開示ができるように用意しておく必要があります。
これらの手はずを整えていれば、バーチャルオフィスの利用に法律上の問題はありません。

以上のように、バーチャルオフィスの利用自体は違法ではありませんし、注意さえしておけばとても便利に利用できるシステムです。
今回の特定商取引法表示に関する記事を参考に、バーチャルオフィスを上手に利用して快適にネットショップを運営しましょう。

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