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ロシア7銀行をSWIFTから排除 EU決定、最大手は対象外

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田中道昭さん他3名の投稿田中道昭白井さゆり鈴木一人

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除すると決めたと発表した。ロシアには約300の銀行があるが、まず大手行を対象に国際決済から締め出す。欧州のエネルギー調達への影響を抑えるため、最大手のズベルバンクとエネルギー部門に強いガスプロムバンクは排除を見送った。

SWIFTから排除されるのはVTBバンクのほか、VEBバンク、バンクロシア、オトクリティ銀行、ノビコムバンク、プロムスビャジバンク、ソブコムバンクの7行。総資産は外銀を含む全体の2~3割にのぼる。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は声明で「これはEUの歴史上、最大の制裁措置だ」と力説した。欧州委によると、制裁は10日以内に発動される。ロシアの行動次第では「(制裁リストに)ロシアの銀行を追加する用意がある」と表明した。

VTBバンクは主に貿易決済を担う国営銀行でズベルバンクに次ぐ資産規模(約20兆ルーブル)を持つ。VEBバンクは政府系の開発対外経済銀行でインフラなど国家事業に資金を供給している。

SWIFTは世界の1万を超える金融機関が参加する民間の国際決済ネットワーク。EUはSWIFTに対して、ロシア7行の決済網からの遮断を要請する。決済網から排除する追加制裁案は、米欧カナダの6カ国とEUが2月26日に打ち出し、具体的な対象が焦点になっていた。

ロシア国内に1万4000カ所の拠点を持つズベルバンクは、ひとまずSWIFT排除の対象から外した。欧州はロシアにエネルギー調達を依存しており、貿易の決済網を残す狙いがある。ただ、ズベルバンクには米国が既にドル決済を禁じる独自制裁を科しており、多くの銀行は送金停止などの検討に入っている。ロシアは預金の2割が外貨とされ、米当局によるドル取引の禁止は影響が大きい。

国際社会は過去にも制裁手段としてSWIFTから銀行を排除したことがある。2012年と18年、核開発を進めたイランをSWIFTから遮断。18年時はイランの通貨リアルの価値がその後に6分の1に暴落した。ロシアも通貨ルーブルが急落しており、銀行には現金を求める客で行列ができるなど経済社会は大きく混乱している。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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  • 田中道昭のアバター
    田中道昭立教大学ビジネススクール 教授
    分析・考察

    SWIFT制裁の対象は米ブルームバーグ等が伝えていた通り、欧州へのエネルギー供給へのインパクトが考慮された内容になりました。米国でもバイデン大統領が一般教書演説において、「ロシアには厳しい処罰を与えるが米国への影響には配慮する」と発言しています。エネルギー部門は欧米では綿密な配慮がなされているわけです。一方で、ロシアではすでに通貨安になっている他、債務不履行の可能性も高まっており、何よりも国民生活の不安が高まっています。欧米の戦略としてはロシアを中から崩壊させるということだと思いますが、内乱リスクが高まるなどプーチンが追い込まれたときにどのような過激な手段に出るのかが最も憂慮されます。 https://www.politico.com/news/2022/03/01/biden-tough-russia-ukraine-00013058

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  • 白井さゆりのアバター
    白井さゆり慶應義塾大学総合政策学部 教授
    ひとこと解説

    最大手銀行をSWIFTから除外しなかったということはロシアからのエネルギーなど買い入れの決済に必要だとの判断だと見られる。ただ米国と対応がずれると制裁の抜け道になるおそれもありできるだけ揃えたほうがいいだろうが、エネルギー不足からやむをえない事情があると見られる。ウクライナ情勢は長期化するとの欧州の専門家の見方もあり、そうなると次の制裁の手を考えていかなければならない。本日OPECプラスの会議があるが、ロシアもメンバーのためどのような対応になるのか注目したい。

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  • 鈴木一人のアバター
    鈴木一人東京大学 公共政策大学院 教授
    分析・考察

    実態としてズベルバンクとガスプロムバンクを除いたということは、これらの銀行は国際取引から排除されていないということになる。ただ、ズベルバンクはアメリカの制裁対象となっており、その意味では実質的な取引をすることは難しい。ただ、ガスの輸入代金の支払いを受け付けるガスプロムバンクがアメリカの制裁の対象ともならず、SWIFTからも切り離されていないことで、ロシアはガスの輸出を続け、代金を受け取ることが出来る。外貨の獲得手段が完全に封鎖されていない以上、経済制裁としてのインパクトは限られたものになる。

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  • 志田富雄のアバター
    志田富雄日本経済新聞社 編集委員
    別の視点

    エネルギーの調達確保に配慮した対応が市場の安心感につながれば、それなりの反応があるはずです。ただ、欧州の天然ガス・スポット(TTF)相場は高騰したままで、原油は110ドル前後で推移しています。 エネルギーや穀物市場はロシア経済が混乱に陥ったり、報復で輸出を停止したりして供給が大幅に減少するリスクを織り込み始めたのではないでしょうか。高騰が長期化する場合への対策も必要になります。

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