日本で、1年に5万人(※2017年現在)の方が命を落とす「大腸がん」。
がんの部位別死亡数では、男性で3位、女性にいたっては1位!
でも、早期に見つかれば治療できる可能性の高いがんなんです。
死亡数が多くなってしまっている要因の一つが「精密検査を受けない」人が多いこと。
受けない理由は、なんと「痔(じ)」と勘違いしやすいから。一次検査の「便潜血検査」が便についた大腸がんからの出血を調べるため「痔」だと思い込んでしまう人が多いんです。
今回は、陥りやすい検査の思い込みを払拭!
さらに、怖い!恥ずかしい!というイメージがある大腸内視鏡検査の驚くべき進歩をお伝えします。
便潜血検査で陽性!…でも痔の影響は?
大腸がん検診では、まず一次検査の「便潜血検査」を受けます。そこで陽性…つまり、「がんの疑いあり」となれば、精密検査の「大腸内視鏡検査」で本当にがんがあるかを確認。しかし、陽性と言われたのにこの内視鏡検査を受けない人が30%もいるのが実情。ほかのがんと比較しても、大腸がんだけに突出して見られる特徴なんです。
その原因は、便潜血検査が陽性でも「痔だから大丈夫」と思い込んでしまう人が多いため。もともと痔持ちの方だけでなく、なんと便検査を受けるまで痔がなかったのに「きっと痔ができただけ」と思った人もいるほど。これは正常性バイアスという人間心理の働きだと考えられます。人間は非常事態になっても、それを正常の範囲内としてとらえ、「わたしは大丈夫」と楽観的に考えてしまう習性があるんです。でも、便潜血検査が「便に潜む血を調べる」のであれば、痔があると陽性に出やすくなってしまうと思う気持ちもよくわかります。そこで、国立がん研究センターと青森県が行う“大腸がん撲滅プロジェクト”の便潜血検査に相乗りして調査。痔持ちと痔無しで陽性率の違いがあるのか?7000人で調べてみました。しかし、痔があろうがなかろうが、陽性になる割合は同じ。つまり痔が便潜血検査に影響することはなかったんです。
大腸がんと痔で一体何が違うのか?ポイントはできる場所です。痔ができるのは肛門付近ですが、大腸がんは腸の中。実は、腸の奥深くにある場合と、肛門付近では便の状態も大きく違います。大腸の奥深くでは便はまだ固まっておらず、水っぽいシャバシャバの状態(大腸内を進むうちに水分を失っていく)。ここに、がんからの出血があると便とよく混ざり合い、便全体に血が練り込まれた状態に。そのため、検便キットで取るときに血も一緒に拾う可能性が高いんです。一方、痔ができる肛門付近では、既に便が固まっています。出血があったとしても表面にわずかに付着するだけ。検便キットで取るときに血が付着した部分にあたる可能性が低いんです。そのため、痔だけが原因で陽性になる確率はわずか2%といわれています。
便潜血検査で陽性と判定されたら、「痔」だと思い込まずに、できるだけ早く精密検査を受けるようにしてください。
がんを早期発見!便潜血検査の極意
便潜血検査は国が最も強く推奨している、がん検査です。
しかし、間違った採便方法では、正しい判定ができません。
キットの説明書をよく読み、正確に採便してください!
- 便は表面をまんべんなくこすり取る
国立がん研究センターの松田尚久先生に教わった方法です。
採便スティックの先端で、便の表面をまんべんなくこすり取ってください。
便のいろんな場所から採取できるように、複数回こすることがポイントです!
※このとき、あまり量を多く取り過ぎないように注意してください! - 採取後は冷暗所で保管!
採便後のキットは、できるだけ温度の低い場所で保管してください。
室温で保管すると、血液内のヘモグロビンが変性してしまうので正しい検査結果が出ません。 - 年に1度、2日分を提出!
現状の便潜血検査は、2日分提出が基本です。
それは、採便1回あたりのがん発見率は45%程度とそれほど高くないからです。
しかし、2日分の便を提出すれば、発見率は70%にまで上がります。
さらに、2年目(のべ4回)受けると発見率は91%、さらに3年目(のべ6回)では97%…、と100% に近づいていきます。毎年1度は検査を受けることで早期発見につながります。
○便潜血検査の費用
40歳以上の方は、自治体の大腸がん検診の場合、無料~1000円程度がほとんど。
お住まいの自治体に確認してみてください!
驚きの進歩!最新内視鏡検査情報
「怖そう」「痛そう」「恥ずかしい」というイメージを持つ大腸内視鏡検査ですが、今の検査は進歩しています!
- 下剤は1リットルでOK
大腸内視鏡で一番つらいといわれているのが検査前の下剤。腸内をきれいにすることでがんを発見しやすくする役目があります。
しかし、ちょっと前までは、2リットル飲む必要があった下剤も、今では1リットルでOKのものも。
味もスポーツドリンクのようだったり、中には梅味のものあります。
飲みやすいように工夫がされているんです! - 検査着はズボンタイプで女性も安心!
「お尻丸出しで受けるんでしょ?」と思われがちな内視鏡検査。でも実際の検査着はズボンタイプ。
内視鏡を入れる部分に穴が空いているだけです。
さらに上からガウンタイプの検査着も着るので、女性でも安心して受けられます。 - 眠っている間に検査を終わらせることも!
検査がどうしても怖いという方のために、麻酔をして受けることができる病院もあります。 検査予約をする前に、病院に確認してみてください! - 検査を受けながらポリープ・がんを切除できることも!
検査でポリープやがんが発見された場合、その場で切除できることもあります。 検査を受ける前に病院で確認してみてください!
○大腸内視鏡検査の費用
大腸がん検診(便潜血検査)で陽性、または下血・排便障害などの大腸に関する症状がある場合
⇒保険適用で7千円程度
※初診料、診察料などによって変わります。
※ポリープを切除する場合は、別途費用がかかります。
※大腸内視鏡検査では、ごくまれに内視鏡で腸に穴が空いてしまう場合があります。
統計的には0.01%以下の割合ですが、このような注意点も含め、医師とよくご相談ください。
詳しくは「日本消化器内視鏡学会」のホームページを参考にしてください。
特別公開!国立がん研究センター製作のリーフレット
便潜血検査で陽性となっても、精密検査にまだ行っていないという方のために、国立がん研究センターで製作した「精密検査受診のお知らせ」をお許しをいただき、こちらで公開することにいたしました。もし身近な方が精密検査に行くかどうか悩んでいたら見せてあげてください!
関連番組
大腸がんについては「あさイチ」 2月20日(木)総合 8:15~でも放送予定です。ぜひご覧ください!
【NHK健康チャンネル】