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文献番号 2022WLJCC006
東京都立大学 客員教授
前田 雅英
Ⅰ 判例のポイント
コロナ禍が後押ししたデジタル化の加速はデジタル庁を登場させ、サイバー警察局を新設させようとしている。ただ、デジタル化の進行による社会の変容は、徐々に進んできており、国民の生活基盤としての「公共空間」の中で、サイバーの重みは「圧倒的なもの」といってよいほどになった。
そのような中で、暗号資産(仮想通貨)のテレビコマーシャルがこのところかなり目立ち、社会的にも、その認知が進んでいるように見える。一方で、社会的にシリアスな問題となっている「ワナクライによる身代金」は、通常、暗号資産での支払を要求してくる。より広く、マフィアなどの不法(不当)な収益の洗浄にも、暗号資産は広く利用されており、警察も、それに関連する専門の部署を充実させている。
もとより、暗号資産を利用した犯罪が重大な法益侵害を生ぜしめているからといって、暗号資産そのものに問題があるとするべきではない。盗品を扱う可能性のある営業が全て禁じられるわけではない。ただ、一方で「業法」の縛りは存在するのである。そして、「世界の経済活動の土台となる暗号資産の発展には、少々不当性のある行為でも許される」という規範的評価は存在しない。
暗号資産に関しては、取引履歴の承認作業等の膨大な演算(マイニング)が必要で、そのために電子計算機の機能を提供した者に対して、報酬として仮想通貨が発行される仕組みになっている。本件は、ウェブサイトの収入源として、コインハイブというウェブサービスを用いて、閲覧者の同意を得ることなく電子計算機をアクセスさせ、同プログラムコードを取得させて同電子計算機にマイニングを行わせる行為が、刑法168条の2第1項に該当するかが争われた。サーバコンピュータ上のファイル内に蔵置して保管した、「密かにマイニングを実行させるプログラムコード」が、刑法168条の2第1項にいう「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるかが争われた。
Ⅲ 判旨
最高裁第一小法廷は、「不正な指令を与える電磁的記録」に関し以下のように判示し、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した。
「反意図性は、当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり、一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては、当該プログラムの動作の内容に加え、プログラムに付された名称、動作に関する説明の内容、想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
一般的なウェブサイトにおいて、運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みとして広告表示プログラムが広く実行されている実情に照らせば、一般の使用者において、ウェブサイト閲覧中に、閲覧者の電子計算機を一定程度使用して運営者が利益を得るプログラムが実行され得ることは、想定の範囲内であるともいえる。・・・
しかしながら、そのようなプログラムとして、本件プログラムコードの動作を一般の使用者が認識すべきといえるか否かについてみると、Xは、閲覧中にマイニングが行われることについて同意を得る仕様になっておらず、マイニングに関する説明やマイニングが行われていることの表示もなかったこと、ウェブサイトの収益方法として閲覧者の電子計算機にマイニングを行わせるという仕組みは一般の使用者に認知されていなかったことといった事情がある。これらの事情によれば、本件プログラムコードの動作を一般の使用者が認識すべきとはいえず、反意図性が認められる。」
一方、不正性に関しては「電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し、電子計算機の社会的機能を保護するという観点から、社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり、その判断に当たっては、当該プログラムの動作の内容に加え、その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度、当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある」とし、本条が「電子計算機による情報処理のためのプログラムが、『意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令』を与えるものではないという社会一般の信頼を保護し、ひいては電子計算機の社会的機能を保護する」ためにあるとした上で、この「保護法益に照らして重要な事情である電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響は、X閲覧中に閲覧者の電子計算機の中央処理装置を一定程度使用することにとどまり、その使用の程度も、閲覧者の電子計算機の消費電力が若干増加したり中央処理装置の処理速度が遅くなったりするが、閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかったと認められる」とし「ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは、ウェブサイトによる情報の流通にとって重要である」し、「社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても、閲覧者の電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響において有意な差異は認められず、事前の同意を得ることなく実行され、閲覧中に閲覧者の電子計算機を一定程度使用するという利用方法等も同様であって、これらの点は社会的に許容し得る範囲内といえるものである」としたのである。そして、マイニングは、「仮想通貨の信頼性を確保するための仕組みであり、社会的に許容し得ないものとはいい難い」として本件プログラムコードは、社会的に許容し得ないものとはいえず、不正性は認められないと判示した。
(掲載日 2022年2月24日)