12153ゆたぼん君に訴訟
https://youtu.be/WDMsXbQTHRc

令和3年ワ18589
原告 中村 ゆたか
被告 土浦ケーブルテレビ㈱
荒木泉子外 村島・穂積法律事務所

7月16日提訴 2月28日13時15分判決

投稿 令和2年10月26日12時37分
みしそる
@miso_manko
どうも!少年革命家のゆたぼんです!
今日はクンニをしていこうと思います。人生は冒険や!

ペロッ……

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。(嬢がクサマン過ぎて死)

ぼんぼんゆたぼん
ゆたぼんぼん
(遺影9999999999回連打でチャンネル登録)


1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

請求の理由

第1 当事者
1 原告 
 原告中村ゆたか(12歳)は、小学3年生の頃、通っていいた小学校で、宿題をしてこなかったことをきっかけに、YouTuberゆたぼんとして活動を始め、現在チャンネル登録数14万人を超えるYouTubeアカウント(少年革命家ゆたぼんちゃんねる)を運営している(甲1及び2)。
2 被告 
被告は、電気通信事業を営む株式会社である。

第2 発信者情報開示請求権(特定電気通信役務提供者の損害賠償の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、単に「法」という。)4条1項)
1 Twitterについて
 本件では、Twitter(ツイッター)というウェブ上のSNSサービスの一一・種が用いられた事件であるため、最初に簡単にTwitterについて説明する。
  Twitterでは、「ツイート」と呼ばれる半角280字、全角140字以内のメッセージや画像、動画等を投稿することが可能となっており、日頃から各アカウント保有者が、好きなことをツイードしたり、他人のツイートに対してコメント(リフライ)したりして、インターネット上で交流することが行われている。
  特定のアカウントからツイートをすると投稿者のタイムライン(当該アカウット保有者によるツイート等が時系列に沿って表示される)に当該ツイート内容が表示され、投稿者のフォロワーや投稿者のアカウントページを閲覧しに来た人に表示、通知されることにより、他者に拡散的に閲覧される仕組みとなっている。
また、第三者のツイートに対して、コメントをすると、原則的に元のツイードをした人に通知がいく仕組みとなっている。
2 侵害情報
  匿名の人物が、Twitterにおいて、別紙発信者情報目録の投稿をした(甲3。以下「本件投稿」という。)
3 権利侵害の明白性
 本件投稿は、原告のYouTubeチャンネル名である「少年革命家ゆたぼん」というタイトルや、原告がメディア上で頻繁に口にする「人生は冒険や」(甲1の2頁目3行目)といったフレーズをそのまま引用しており、原告への投稿であることが明らかである(同定可能性)。
 そして、名誉感情も法的保護に値する利益であり、社会通念上許される限度を超える侮辱行為がされた場合には、人格的利益の侵害があったものとして、不法行為が成立するというべきである(最高裁平成21年(受)第609号同22年4月13日第三小法廷判決・民集64巻3号758貞)。
 本件投稿は、「今日はクンニをしていこうと思います」(クンニ:クンニリングスの略で、女性器を直接舌や唇・歯などで舐めて性的刺激を与える行為を指す)、「嬢がクサマン過ぎて死」(スラングを用いて、女性器が臭くて死亡との意味を表現していると理解できる)などと、一見して何ら表現価値があるとは認められず、単に性的に下劣な表現により原告を嘲笑しているのは明らかである。
 そしてこのような嘲笑的な投稿は、本件投稿時にわずか小学6年生であった原告に対する侮辱表現としては極めて悪質であり、社会通念上許される限度を超える侮辱行為として、原告の名誉権侵害として人格的利益の侵害があることは明白である。
4 正当理由(法4条1項2号)
 以上のとおり、原告において、本件投稿による権利侵害の明自性が認められるが、原告は本件発信者に対し、権利侵害を理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等の準備をしている。
 そのためには、本件投稿者にかかる発信者情報が必要であって、発
信者情報の開示を求める正当理由がある。

5 被告が開示関係役務提供者であること(法4条1項柱書)
 本件投稿は、インターネットに接続する環境を有する者であれば誰でも自由に閲覧することができる。そのため、本件投稿は「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」、すなわち特定電気通信に該当する(法2条1号)。そのため、本件投稿が保存されているサーバコッピューターは「特定電気通信の用に供される電気通信設備」に該当する(法2条2号)。
 そして、被告は、上記特定電気通信設備を用いて、Twitterへの投稿と閲覧を媒介し、又は上記特定電気通信設備をこれら他人の通信の用に供する者であるから、「特定電気通信役務提供者」に該当する(法2条3号)。
 以上から、被告は同法4条1項の「当該特定電気通通信の用に供される特定電気通借設備を用いる特定電気通信役務提供者」、すなわち開示関係役務提供者に該当する。
 なお、ログイン型投稿の論点については後述する。

6 本件訴訟前の経緯
以上のとおり、原告は、本件投稿について自身の権利を明白に侵害すると考えたことから、東京地方裁判所に対し、Twitter社を債務者として、それぞれ発信者情報開示請求の仮処分命令の申立てを行い、開示決定を得た(甲4の目録31)。
そして、Twitter社から本件投稿者が本件投稿に用いたアカウントにログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプを取得した(甲5の1ないし3)。
そのため、原告は、本件各投稿については投稿がされた日時に近接したログインで、被告のネットワークを経由しているIPアドレスを抜粋して、裁判外で被告に対して発信者情報の開示請求をしたところ、不開示の連絡があったため、本件訴訟提起に及んでいる(甲6の1及び2)。
7 別紙発信者情報目録記載のIPアドレス等についての説明
前項のとおり、原告は、Twitter社から本件投稿者が本件投稿に用いたアカウントにログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプを受領している。
まず、Twitter社から受領したメール(甲5の1)内にあるリンクを開いたページが甲5号証の2であるが、このページ内の
「miso_manko-566・・・・・・・.zip」の添付ファイルを開いたものが甲5号証の3である(ファイル名の冒頭がTwitterアカウントID「miso_manko」と一致している。)。
そして、甲5号証の3では、各IPアドレス及びタイムスタンプについて、「accountID」が「1258946197470863361」であることが表示されているが、これは、上記の甲5の2のフォルダ内の記載と一致している。
このように、別紙発信者情報目録記載のIPアドレス及びタイムスタンプは、Twitter社から受領したものと同一であることが確認できる。
8 ログイン型投稿の問題について
 Twitterは、いわゆるログイン型投稿をとっており、投稿そのもののログ情報がほぞんされておらず、各ログイン時のログ情報しか保存されていないため、ログイン時のIPアドレスに係る契約者情報を開示請求できるかという問題であるが、近時の裁判例では、当該IPアドレスを割り当てられてログインした者と、侵害情報となる投稿をした者との同一性が認められる場合等に、開示請求を認めている。
 このような考え方は、法4条1項の条文上も説明できる。まず、「当該特定電気通信」とは、直前の「特定電気通信による情報の流通によって」という文言を受けて規定されていることから、実際に権利侵害を生じさせる具体的な発信に関する通信を指していると理解できる。そして、その後の「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備」という文言については、権利侵害の発信を実際に媒介した経由プロバイダーの特定電気通信設備が想定されるものの、法分上、「供された」ではなく、「供される」という文言が用いられていることからすれば、実際に権利侵害を発生させた特定電気通信を媒介したことまでが必須の要素とはされていないと解釈できる。
 すなわち、「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備」とは、国語的な意味としては「特定電気通信による侵害情報の送信に利用できる」というような意味に捉えるのが自然な読み方である。
 さらに、法4条1項の「発信者情報」とは、「当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る」という文言を受け、かつ、括弧書きで「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報」であると具体化されている。
 すなわち、「・・・当該権利の侵害に係る発信者情報」という文言は、「当該権利の侵害の発信者情報」ではなく、「当該権利の侵害に係る発信者情報」という文言が使われており、厳密に侵害情報そのものに関する発信者情報よりは、幅のある表現が用いられていることや、括弧書きで「・・・発信者の特定に資する情報」と規定されていることからすれば、法4条1項の「発信者情報」とは発信者による権利侵害の情報そのものだけではなく、発信者の特定に資する情報であれば、条文上は明確な限定なく開示の対象となるものと考えられる。
 そして、Twitterのようなアカウントにログインすることを前提に、投稿が可能となるwebサービスにおいては、権利侵害情報の発信に先行してログインすることが不可欠の前提なのであるから、ログイン情報の送信や媒介は、権利侵害を発生させる特定電気通信の用に供されるものに他ならないといえる。
 以上のような考え方を前提に、本件投稿をしたTwitterアカウントへのログイン状況について考察すると、本件で開示の対象としている発信者情報は、本件投稿からもっとも近接した日時のログイン情報に基づいていることや、当該IPアドレス「110.130.64.227」により多数回ログインされていることが確認できることからすると、当該IPアドレスを用いてアカウントにログインしている人物は決して一時的にアカウントを冒用する等している人物ではなく、当該アカウントを継続的に使用している人物であるといえること等からすると、侵害情報を行った人物と、本件で開示対象としている各ログイン情報を送信した人物は同一であると推認でき、開示請求の対象となる。
9 終わりに
 したがって、原告、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求める。
                                  以上