石垣市長選は、現職の中山義隆氏=自民、公明推薦=が、新人で前市議の砥板(といた)芳行氏=無所属=を破り、4選を果たした。
陸上自衛隊の配備計画が進む石垣市は、辺野古の新基地建設問題を抱える名護市と同様、国の防衛政策の最前線となっている。しかし防衛政策が選挙の争点として浮上することはなかった。
中山氏は、いち早くコロナのワクチン接種を進め、高い接種率を達成した実績を強調。西銘恒三郎沖縄担当相と連携し、コロナ禍からの経済再生を訴え、支持を集めた。
小中高校入学時に祝い金を支給するという公約も、子育て世代にアピールした。
観光中心の市の経済はコロナ禍で疲弊し、市民生活にも大きな影響を与えている。有権者は景気回復と生活に根差した政策を重視し「変化よりも安定」を求めたと言える。
この「勝利の方程式」は名護市長選でも見られたものだ。
保守分裂は選挙結果にほとんど影響を与えなかった。それよりも中山氏側が懸念していたのは「多選批判」である。
当選を重ねると、一般的に、おごりが生じたり、批判的な声に耳を貸さず、独断専行に陥ったりしがちだ。
八重山の誇るべき自然と文化を大切にしながら、地域の活性化を図る-。そのためにはイデオロギー対立の政治を乗り越え、島の良さを市民が共有し、共に街づくりに取り組んでいく必要がある。
勝っておごらず、謙虚な姿勢で4期目の市政運営に当たってほしい。
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「オール沖縄」勢力が支援し保守の一部も相乗りする形で戦った砥板氏は、陸自配備を巡る住民投票の実施を政策に掲げ、中山氏との違いをアピールした。
新庁舎に県外産赤瓦が使われていた問題で与党を離脱、中山氏を「独善的」と批判し、市政刷新を訴えていた。
ただ砥板氏は市議時代に陸自配備を推進し、住民投票条例案にも反対してきたことで知られる。主張の転換には、当初から懸念の声があった。180度変わった見解に有権者は戸惑ったのではないか。
力のある現職に立ち向かうため、協力して戦うことは必要だ。しかし今回の選挙で相乗りの効果は限定的だったと言わざるを得ない。
子育て支援の一環として砥板氏側も学校給食費の完全無償化を打ち出し、子育て世代の取り込みを図ったが、支持は広がらなかった。
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秋の知事選を頂点に七つの市長選が集中する今年は、沖縄の「選挙イヤー」だ。
7市長選のうち、これまで実施された名護、南城、石垣の全てで、政権与党が支援する「チーム沖縄」の候補が勝利を収めている。4月には玉城デニー知事の地盤でもある沖縄市長選が控えるが、年明けからの3連勝で「チーム沖縄」は勢いづく。
政権とのパイプを強調した地域再生の訴えにどのように対抗するのか。まさに崖っぷちの「オール沖縄」勢力は、知事選に向けて戦略の練り直しを迫られている。