2022.02.27

ヒトラーの要望で日仏を往復した「潜水艦乗組員」を待ち受けた“過酷な運命”

2ヵ月間無寄港、海底6万3千キロの旅
神立 尚紀 プロフィール

ブレストで盛大な歓迎を受けた

軍港には「ブンカー」と呼ばれる、厚いコンクリートに守られた、潜水艦そのものを収容する巨大な防空施設兼工廠が15基も並んでいて、伊八潜は、ドイツ側の案内で左端の奥のブンカーに艦首を入れた。その瞬間、ドイツ海軍軍楽隊の演奏する「君が代」がブンカー内におごそかに鳴り響いた。ブンカーでは、ドイツ西部海軍司令長官のクランケ大将、日本海軍代表委員・阿部勝雄中将、駐独武官・横井忠雄少将ら、多くの関係者が出迎えた。

 
昭和18年8月31日、伊八潜はブレストに入港。右手に見えるブンカー(潜水艦用防空防禦係留地)に、まさに入ろうとするところ
ブンカー内に係留を終えると、ドイツ海軍のクランケ大将が来訪し、内野艦長と固い握手を交わした
艦を降り、花束を手にブンカーの階段をのぼる内野艦長以下、伊八潜乗組員たち
ブレスト潜水隊司令・ウインター中佐と内野艦長

「ブンカーそのものや歓迎ぶりにも目を瞠りましたが、それよりも、女性が花束を持って出迎えてくれたのには驚きました。日本ではありえないことで、こんなこと、それまで経験したことがありませんでしたからね。

ブレストの潜水艦基地隊では、盛大な歓迎会を開いてくれました。その晩、私たちは久しぶりに陸上のベッドでぐっすり眠ることができた。ただ、乗組員同士では気になりませんでしたが、ペナン出港から66日、潜水艦には入浴設備がなく、一度も風呂に入っていなかったので、臭気は相当なものだったでしょう。身についた垢が、いくらこすっても次から次へと湧いて出てくるんですから。たたんで持参した軍服は汚れていませんが、着たきりの下着は、まるで醤油で煮しめたような色に変わっていました……」

乗組員の歓迎式。艦に数名の当直を残して、全員がこの式に臨んだ

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