新型コロナウイルスの検査を行った医療機関に支払われる診療報酬が昨年末に大幅に引き下げられ、波紋を呼んでいる。新規感染の把握を担う「発熱診療等医療機関」は大半が診療所で、感染防止対策や検査機関への委託費用がかさむためだ。神奈川県内では一部自治体が補助を行っているが、医療機関が検査数を控えたり、検査を取りやめたりする懸念があるとして、黒岩知事も政府に是正を求めている。(藤亮平、田ノ上達也)
県によると、PCR検査の診療報酬はこれまで、採取した検体を診療所などが「自院検査」する場合は1回あたり1350点(1点=10円)、検査機関に委託する場合は同1800点と決められていた。ところが昨年末、政府がいずれも700点に引き下げた。委託の場合は3分の1程度にまで急激に下がるため、3月末までは自院検査と同水準とされている。
新規感染やクラスター(感染集団)の把握につながる検査は、県内では約1960の「発熱診療等医療機関」が主に担っている。その多くを占めるのが診療所で、報酬引き下げに「検査するほど赤字」「検査数を減らさざるを得ない」との声が上がっているという。
こうした状況を受け、海老名市は市内の20医療機関を対象に、市内在住・在勤者の検査をした場合、1人あたり5000円の補助金支給を決定。3月の市議会に3000万円の一般会計補正予算案を提出する。医療機関側への聞き取りでは、検体採取時の医療用ガウンや手袋などの消耗品代にも毎回4000~5000円がかかることから、支援を決めたという。
横浜市も、市民がコールセンターなどを通じて協力医療機関で検査を受けた場合、件数に応じて支援金を支給しており、新年度予算案には3億3000万円を計上している。
ただ、こうしたケースは一部自治体に限られている。県西部6市町の医師らでつくる足柄上医師会の飛騨康則会長は、経営する山北町の診療所で月100件ほどの検査を行っている。一般診療の合間を縫って屋外で検体を採取し、その都度、ガウンや手袋を替える。検査を委託する業者には毎回1万数千円の料金を支払う。
「検査を望む患者さんのことを思えば、続けざるを得ないが、このままでは赤字になる」。飛騨会長は「自治体の支援があればありがたいが、本来は国が一律でやるべきだ。現場の声を聞いて、報酬引き下げの考えを改めてほしい」と訴えた。