「雪は適度に降ってくれれば綺麗だけど積もりすぎると憂鬱プイ」
「トレーナー陣曰く、乗り物を運転する立場になると僅かに降り始めただけで頭抱えたくなるそうッスよ」
「あー、だからこの前ここのトレーナーさん自転車で飛んでたプイ？」
「あれは普通にスピード出し過ぎッス」
「……………っ」

雪がなくとも路面凍ってる可能性あるんだから少しは気をつけろと
ミカンを手に取ろうと思ってふと止める。そういえば、少し小腹が空いてきた
このままミカンやお菓子食べてもいいが、せっかくだし…と

「適当に温かい軽食でも作るッスかね」

プイ先輩がプキュイと顔を上げたのを見て、最早言葉は無用と確認を省く
そして、視線を横にずらして

「エールちゃんも食べてくッスか？」
「……………！！！」

さっきから必死になっていちご大福をモキュモキュ食べていたエールちゃんが、頬っぺたパンパンのまま全力で頷くのを確認した

●
「この時間の軽食ってあんま良くはないッスけど…ウマ娘の食欲、その程度で満たされたら世話ねーッスからね」

寒さを堪え洗い場に立ち、エプロンをつけて準備完了
さて、温かい軽食とは言ったがどうしたものか。思考停止すれば適当にラーメンでも作れるが…

「あぁ、そういえばアレがあったッスね…」

戸棚を探すと、すぐに見つかったその道具。まだ数回しか使ったことがないが、こういう時にはちょうどいいだろう
冷蔵庫を見れば、まぁこのくらいなら問題ない程度の材料。どの道買い物も必要だったし一度綺麗にしてしまおう
あれこれ取り出して、ついでに残っていた食パンを確保
耳を切って適当なサイズに揃えて……これでいい。耳は今度揚げて砂糖でもまぶしておやつに出そう

「エールちゃんも誰かいないか見に来たプイ？」
「いえ！！！！！！終わった瞬間に飛び出してきたので練習中止の連絡を知りませんでした！！！！！！！！」
「おぉう……誰もいなかったら悲しいことになってたやつプイ」

コタツに戻れば、プイ先輩とエールちゃんがコタツでモコモコしながらトーク中……
最近少し落ち着きを見せてきたと思ったが、やはりまだまだ元気はなまる暴走娘ということか

「お待たせッス。コタツの上、開けてもらっていいッスか？」
「プイ？ここで作るプイ？」
「あ！！！！これ知ってます！！！！！！！！」

エールちゃんの言う「これ」。それは、何かを挟み込む形をした調理器具。同じ形の二枚の鉄板が別々のハンドルで開くようになっていて、内側に何かを入れると言うことがすぐにわかるデザインになっている
手軽にできると言えばできるのだが、これで満腹になる量を作るのがなかなか厳しくておやつ用位にしか使ってなかったものだ

「ホットサンドメーカーってやつッスよ。ちょっとカセットコンロ失礼するッス」

コタツの中央にカセットコンロを置いて、脇に食材を入れたお盆。そして過熱したホットサンドメーカーを置けるようにトレイを設置
コンセントで使える電気式の物もあるのだが、洗浄の利便性や他にも色々使えるということでこっちにしてみたのを思い出す
というわけで、温かくて美味しいおやつの時間といこう。手軽にできる、ホットサンドパーティーの始まりだ

「なんかお祭りの屋台のやつの小さい奴みたいプイ」
「とりあえず、一つ焼いてみるッスよ」

パンの上に、とろけるチーズを敷いてブラックペッパー。ハムを乗せて少しマヨネーズ。そこにもう一度とろけるチーズを乗せてパンを乗せ、これで基本は完成
コンロに点火して、ホットサンドメーカーにパンをきっちり挟み込んで金具でロック

「え、そんなに押しつぶして大丈夫プイ？」
「へーきッス。これはこういうものなんで」

焦がさない程度に、しかし焼き色が付く程度にしっかりと。ここで失敗するとパンが焦げてこびりついて面倒なことになる
そして両面しっかり焼いて、金具を外せば…バチンッと、跳ね上がった中から現われる香ばしいホットサンド

「おお……もう見ただけで美味しそうプイ」
「じゃ、これ切って、二人でどうぞッス。熱いうちがいいッスよ」
「ありがとうございます！！！！！！！じゃあ切りま熱い！！！！！！！！！！！」
「言い忘れてました火傷には気をつけてくださいね水で冷やすッス！！！」

言葉が悪かった、いやただ単にそそっかしいだけだこれ
急いでエールちゃんに指を冷やさせて戻ってくると、その間にプイ先輩が包丁で斜め二つに切ってくれたらしい

「うおおぉぉぉ…めっちゃチーズとろけてるプイ…」
「さ、今度こそどうぞッス。今度は火傷しないように」
「はい！！！！いただきまあああああああああああああああああああああああああす！！！！！！」

断面からチーズがとろけて溢れるそれを、二人同時に齧り付く。反応は…あぁ、うん。顔を見れば十分わかる
目をキラキラさせて、残りにもモキュモキュと夢中になって齧り付いている
その間に、こっちはまた次を用意。挟むだけ挟んでおけば後は乗せてポンポン焼いていくだけでいいし

「チーズがマヨと混ざってハムに絡んで…外がさっくり香ばしくて最高プイ…」
「胡椒で少しピリッとするのがいいですね！！！！！！！！！」
「はいはい次焼けたッス。マヨコーンッスよ。この次焼いたのはウチも食いたいんで休憩ッス」

缶詰のコーンにマヨを入れて混ぜて挟んだだけのシンプルなもの。それ故に味は保証済みで何一つ困惑するところが無い
二人が早速それをパクついている間に、次に焼くのはコンビーフに粒マスタードを混ぜ込んだもの
ちょっと辛めになるが、個人的にこれは割と気に入ってるレシピで上に乗せて焼いたりもたまにしていたりする
香ばしく焼き上がって、それを置いて次のやつ。焼き上がったタイミングで自分も食べれば大丈夫だ

「はい、今度は甘めも甘め、変わり種ッス。んじゃウチもこっちいただきますッス」
「これは…うわ、なんかめっちゃ甘い匂いするプイ！！！はむっ……うまプイ！！！」
「バナナですか！！！！！それにマシュマロでえええええええええええええええええええええす！！！！！！！！」

姉貴が持ち込んで読んでた漫画に載ってたやつまんまパクりだが、割と普通に好評だから別にいいだろう。マシュマロとスライスバナナのデザートホットサンドだ
とろけるマシュマロによって二人の顔もまたトロトロに溶けてしまう。本来なら出すのが早いが、まぁおやつだしいいだろう

「ん、これも完璧ッス……やっぱ美味いッスね」
「あ、それもう一枚できるプイ？食べてみたいプイ」
「結構辛めッスよ？平気ッスか？」
「赤から鍋より辛くなければ平気です！！！！！！！！！！！！！！！！！」

あったなぁ、そんな名古屋名物
というわけで先に挟んでおいたのはいったん置いておいて、残ってたコンビーフ粒マスタードを詰めてまた焼き始める
次は何がいいか。レタスとトマトもこの際使ってしまえ。あと、レタス使うついでにツナも……
そうして、途中から好奇心が勝って一緒に挟みだしたプイ先輩とエールちゃんと共に、余り物処理ついでのおやつ会は進んでいった

●
「ぽんぽんいっぱいプイ…」
「すぐ横になると牛になるッスよ」
「胃袋４つになってお得ですね！！！！！！！！！」
「その発想はなかったッスねー…」

横になったプイ先輩と、最後の一枚……辛味噌ベーコンをパクついてるエールちゃん
満腹とはいっても、ウマ娘の食欲がこの程度で満腹になろうはずが無い。まぁ、しかし小腹は満たされたし気分も十全か
そういう意味ではこのおやついいかもしれない。今後もちょくちょく使ってみようか。姐御なんかも気に入りそうだし
……その場合、具材がとにかく映えるもので埋まりそうだが

「後一個あるッスけど食べるッスか？」
「欲しいプイ―」
「満腹なんじゃなかったんスか…はい、どうぞ」
「あーんプイ」

はい？と。口を開けて待機する先輩に、一瞬戸惑う
ええい、雛鳥かこの人は。呆れ純度１００％のため息一つついて、まだ熱を残したそれを口へと運ぶ

「…はいッス」
「はむっ」

コタツの熱で溶けてしまったのか、はたまた満足感で溶けてしまったのか。なんかもう雛鳥というか駄目な子だこれ
もむもむと最後のホットサンドを楽しむプイ先輩はこのまま放っておいたらそのまま寝て朝まで起きないんじゃ無いかと言うほどの脱力っぷりで

「ごちそーさまプイ。野菜マシマシでサラダホットサンドっていうのも以外と美味しかったプイ」
「まぁこのメンツだからできるとも言えるッスけどね。いちいち無理矢理食わせるのめんどうなんで」
「大分苦労してる顔プイ…」
「ああ、ほら。ほっぺたまたついてるッスよ。動かないで」
「プキュー」

駄目な子まっしぐらかこの人は。苦労は今まさに追加されているしそれは誰のせいだと思ってるのか
…さて、食後だし適当に何か温かい飲み物でも用意して、それ飲んだら終わりということでいいだろう
雪は以前みたいな大豪雪にこそならないだろうが、あまり楽観視もできない
明日来たら、とりあえずまず屋根の雪を下ろして周辺だけでも確保して、と…

「あの！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

突然響く大音声。半分寝そうになってたプイ先輩の耳がピーンと立ち上がって、衝撃波でも受けたかのような体制で固まってしまった。いや、自分もめちゃくちゃ毛が逆立ってるけど
ていうかエールちゃん。大声出す前に。君もほっぺについてる、ついてるから

「これ、今度お借りしてもいいですか！！！！！！？？材料は用意してきますので！！！！！！！！！！！！！」
「い、いいッスけど……おお、耳が…ほら、先にほっぺ拭いてッス」
「あ、すみません！！！！！！！！」
「い、一瞬意識が消し飛んだプイ。久々に油断してたプイ」

頭をくわんくわんと揺らすプイ先輩……なんか見たことあるなこんなの。あぁ、あのハンター的なゲームの気絶っぽい動きだ

「貸すのは別に、というかここの共有物なんで全然大丈夫ッスよ。にしたって突然どうしたのかは気になるッスけど」
「いろんな味のホットサンドをたくさん用意したいんです！！！！！！！！！たくさん選べてきっと楽しんでくれるはずですから！！！！！！！」
「楽しんでくれる……？……ああ」

ようやく得心がいった
そうか、エールちゃんは要するに………あの日の恩返しがしたいのだ
今ここにいない、遠くの戦場へと挑みに向かった彼女へ

「なるほどプイ。出発前に激励会はやったけど、お迎えの準備ってことプイね」
「それもきっと、チームでのそれとは別に……ってことッスよね？」
「はい！！！！！！！！すみません、我儘ですが！！！！！！！！」

あの日、大一番に向かう自分を励ましてくれた親友に

「ソングラインちゃんに、おかえりなさいって盛大に言ってあげたいんです！！！！！！！！！！！」

チームとはまた別に、自分自身としての、親友としての贈り物がしたい
それはきっと……うん。素敵な、なによりも素敵なことだ

「……チームでのパーティー終わった翌日とかの方がいいッスかね。サプライズってことで」
「準備くらいなら手伝うプイ」
「ありがとうございます！！！！！！！」

本当に素敵な後輩だ
ここまで友達を大事にできるのは、そう。きっと、どんな才能よりも尊重されるべきことで
その思いを素直に、全力にぶつけたいと動ける心は、絶対に阻むことは許されないはずだから

「さ、そうと決まれば今日は一時解散ッス。片付けて、明日雪かきしたら全員で相談ッスよ」
「多分みんなノリノリで協力するプイね……」
「せっかくですし、ウチの知ってるホットサンドのレシピ。いくつかまとめて渡しておくッス。どれもオススメッスよ」
「ありがとうございます！！！！！！！自分でも色々試してみたいんですが相談大丈夫ですか！！！？」
「もちろんッスよ」
「ちなみにどんなのがあるプイ？」
「カリカリ梅使ったりしてもいいッスよ。タネ外して包丁で細かく刻んで……」

立ち上がって、片付けを始めながらフライング気味の密談開始
向こうは今どんな天気だろうか。体壊してないだろうか。ちゃんとご飯食べられてるだろうか
心配は山ほどある。けど同じくらい、信じてる
それはエールちゃんだけじゃなくて、今ここにいない連中含めて自分たち全員がきっと

「焼いたベーコンはさむのはどうプイ？肉と肉と肉をパンで挟む感じでプイ」
「オッケーどこの三冠バに影響されたッスか？」
「お味噌使えますかね！！！！！！！？？？？」
「いやそれは……待てよ？いけるかもッス」
「え、まじプイ？」

雪はいまだ止む様子を見せず
だけど、あの子が帰ってくる頃には溶けて綺麗に消えてしまっているだろう
それはそれで、少し残念かもだけど
だけど、怪我せず、元気に、ちゃんと帰っておいでと伝えたい

「手羽先挟んでみますか！！！！！！！」
「いやだから……」
「あー、骨さえなんとかすれば多分……」
「まじプイ！？」

花が咲き誇るかのようなご馳走を
君を最も信じてる、熱いエールを送り続けてる親友が、こんな笑顔で用意して待っててくれるんだから、と

以上。酒がぶ飲みしたので舎弟した
今書いてるのが間に合えば今日もう一本垂れ流せるかも

あんたが来ると信じてたよ
もう一本あるんだって！？

もう一本！？

完成時間によってはここが終わったら建てる感じにします
ソングラインちゃんがんばれ

やったあああああああああああああ

祝杯追加してきます
おめでとう
本当におめでとう

またプレハブ小屋がうるさくなる

関係ないけどスレ画のラストランって進撃の有馬記念なんだね

よかった
本当によかった

ソングライン勝ったのか
良かった…

やったんかソングライン！

今年は4歳牝馬のドラマがすごいな

これは祝勝プレハブ会が書かれる
俺は詳しいんだ

1351終わったと思ってたら来てた

これはエールちゃん味噌を樽ごと発注しますね…

これはエールちゃん感涙待ったなし

尊……めでてえ……

>これは祝勝プレハブ会が書かれる
>俺は詳しいんだ
以前エールちゃんの時もそうだったしな……

ソングラインちゃん勝利記念は流石に本日は厳しいので少しばかりお待ちください
早ければ明日投げ込めるように頑張りますので

エールちゃん祝勝会見逃しちゃったからまた今度まとめてくれると大変嬉しい

>これはエールちゃん感涙待ったなし
ソングラインちゃんと抱き合ってお互い号泣して

ｵｵｷﾆ

あとは無事に帰るだけだ

いやー勝ったね！！

今まとめ作ってるんですがちょっと間に合いそうにありません
もう一本の方は完全したので後で投げますがスレ画は舎弟ではなく姉貴になります
そこで間に合えばまとめ投下します

ありがてえ

プレハブ怪文書が日常の楽しみになってるから身体に気を付けて毎日お酒飲んで…

酒飲みの姉貴！？

ありがたい…

ありがとう…ありがとう…！

しかしこれでソングラインも重賞二つ目
改めてチームキボンヌが一見アレに見えて秀才揃いのエリートチームってことを実感するな

>しかしこれでソングラインも重賞二つ目
>改めてチームキボンヌが一見アレに見えて秀才揃いのエリートチームってことを実感するな
1頭1頭調べてみてもマジで化け物しか居なくて戦慄する

>No.901460026
きっと
その顔は

赤から鍋って名古屋名物だったんだどこにでもあると思ってた
後15辛より辛いのは一般的には少ないから大半セーフになる気がする

>>No.901460026
>きっと
>その顔は
満面の笑みか
それとも歓喜の号泣か

>1645883864964.png
メイケイエールは絶好調をキープしている

>1645883864964.png
叫んだんだろうなあ 友の名を

>叫んだんだろうなあ 友の名を
呆然としながら友の名をぽつんと呟いてポロポロ涙を零しながらも決して画面から目を逸らさないのも良いですよ

いいですよね電波越し

姉貴完成しました
姉貴の番外編投げたらそこでまとめも投げます