「別れ、そして決断」
こんにちわ。ご無沙汰しております。
1年の前原です。
今日は特別な話をしようと思います。
最後までお付き合い下さい。
2ヶ月前、私はある物語を読んだ。
この物語は、10代の男女二人が織り成すヒューマンストーリーである。
主人公は旅好きの少年で、自然が好きだ。
少年は事あるごとに海に行き、波の音を聴きながらいつも考えごとをしていた。
今で言うところのヒロインは、病気を患っており、余命約4ヶ月。ここから物語は始まる。
――4月――
二人が桜を眺めているとき、彼女は言った。
「桜のようになりたい。毎年、咲き誇り、散っていく。何度でもこの世界に生まれてきたい。桜のように。」と。
少年はただその瞳の先に眩しく映る夕日を見つめていた。
「来年も花見来れるといいね。」
彼女のその言葉は、少年にとても重くのしかかった。彼女には余命があり、来年の4月には独りこの世界に取り残されるのだから、、、。
――6月――
少年は彼女の両親と逢うことになるが、そこでこんなことを言われてしまう。
「あなたはまだ若いのよ。無理に彼女と付き合うこともないの。あなたが辛い思いをするのを見たくない。娘と距離を置いてほしい、。」
互いの立場からのできる限りの配慮、それぞれの想いが交差する胸が苦しい場面だ。
――トキは流れ、8月――
そんな彼はあるとき、ふと北の方角に旅に出る。夏の東北は案外暑いらしい。彼は「平泉」という地で脱水症状になってしまう。
――舞台は病院に――
医者は少年に「何故こんな田舎を旅するんだい。田んぼと、稲刈りの老夫婦しか居ないだろうに。」と。しばらく少年は俯いた後、口を開く。
「僕は、遠く西にいる病に苦しむ少女を救いたいんだ。」すると、担当医は少年にある“石”を渡した。夏の大三角の星のひとつ、「こと座ベガ」の織姫の意志が宿っている石らしい。
日本では、七夕物語は有名だ。ここで少し七夕物語にも触れようと思う。
織物の仕事をしていた織姫。天の川の西で牛飼をしていた働き者の青年、彦星。2人は互いに惹かれ合い、毎日天の川のほとりで過ごし、仕事をしなくなってしまった。そこで天の神様は2人を引き離し、「以前のように働くならば、一年に一度、7月7日の夜だけは会っても良い」と告げたそうだ。
何とも嘘くさいが、少年はその石を受け取り、旅を続けた。
――9月――
彼女の知り合いからの連絡を受け、少年は西に向かう。そこで彼女の変わり果てた姿を目の当たりに。
彼女の両親は少年を見て驚き、そして涙ぐんだ目で「どうして、、どうして娘をそこまで想ってくれるの。」と肩から崩れた。
少年は言った。「織姫の意思が宿った特別な石を渡しに来たんだ。」
それ以上のことを少年は話さず、その石を彼女の手のひらで包み込んだ。
#ここで読者の私が考えるに、恐らく天国に彼女が行ってしまったとしても、織姫の意思が宿った石を渡すことができれば、少年は一年に一度、7月7日に彼女に再会できると思ったのだろう。実に美しい。
少々回想が入ってしまったが、物語に話を戻そう。
少年はベットに横たわる彼女に、七夕物語を話して聴かせた。
――その日の夜――
「星を見に行こう」
急に電話でそう言って、君は私を病院に呼んだ。確かに、星を見るのにぴったりな、透き通った夜だった。並んで屋上のコンクリートブロックに座って、夜空を見上げた。
夏にだけ見られる特別な三角形。
「また2人で見れるかな。」
「うん」
夜空に輝く星々は近いようで、遠い。そして儚い。熱い何かが頬からコンクリートに滴り落ちる。
「人に与えられた時間は30000日あるんだよ。あなたはあと何日生きられる?無駄に他人の人生を生きてる暇はないんだから、前を向いてしっかりするのよ。」
コンクリートの上に涙がポツポツと跡を残して消えていく。
「自分が持った夢を一生懸命追いかけて。時間だけは本当に買えないものなの。自分の想定内の人生で終わらないで、私はもっと生きたかった。」
そう私に話しながら、彼女は私を抱き寄せた。
優しい夏の夜の風が、彼女の髪の毛を揺らし、ふんわりと私を包み込む。そして、君は私に微笑む。
彼女は強く、彼女は優しかった。
――最期――
その日は来てしまった。
空は少し薄暗く、じめっとした夏の朝だった。
ヒトは必ず死ぬ。
ニーチェの言葉を借りれば、彼女の優しさの根源は死ぬ覚悟だった。あなたはいつか死ぬ。私もいつか死ぬ。だから人は人を許せるのだ。
「これからあなたが生きる未来に嫉妬するよ。
でも、自分が思うような人生を歩んでね。」
彼女の言葉は私の未来の指針であり、自分の直感を信じる勇気をくれた。
そうして、私は来年の七夕を星空の下で待つのである。
――終わりに――
もし明日自分が死ぬとしたら、地球が終わるとしたらどうしようか。
アインシュタインは「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」と生前に言ったそうだ。
自分の人生について考えることを辞めず、
自分の夢を持ち、行動しよう。
自分の想定内の人生で終わらない生き方をしよう。
これは、彼女の両親から聞いた話だが、火葬後の彼女の手は何かを握った形をしていたという、。
私は、きっと織姫の意思と一緒に天国に行ったことを信じて止まない。
そう、この物語の主人公は他でもない、私自身なのだから。
この話も、このステップも、これでおしまい。
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