沖縄県宮古島市上野野原の陸上自衛隊宮古島駐屯地内宿舎の自宅で昨年2月、当時5歳と3歳の息子2人を殺害したとして、殺人罪に問われた母親(40)の裁判員裁判の判決公判が24日、那覇地裁であった。小野裕信裁判長は「病的な衝動性の高まりで行動制御能力を失い、心神喪失の状態にあったとの合理的な疑いが残る」として無罪を言い渡した。

那覇地裁

 2児殺害の事実や精神障がいの影響に争いはなく、行動制御能力が完全に失われた「心神喪失」か、著しい減退「心神耗弱」かという刑事責任能力の有無が争点だった。検察側は懲役8年を求刑していた。

 判決は、女性に軽度の自閉スペクトラム症の特性があり、犯行時は抑うつ障がいを併発していたなどとした精神鑑定の結果を踏まえ、長男のささいな言動から子どもたちと自身の将来を悲観したと指摘。

 ベルトや洗濯ロープでの絞殺行為は「愛情を持って子らを養育していた女性の人格と大きく乖離(かいり)した極めて異常なもの」とし、無理心中への病的な衝動性に支配されたと認定した。

 判決を受け、那覇地検の中村功一次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。

■コロナ「弱い立場の方々に深刻な影響」

 小野裕信裁判長は判決後の説諭で、新型コロナの影響が「弱い立場の方々に深刻な影響を与えていると感じている」とし、「一番弱い立場にあるのは間違いなくお子さん2人。あなた自身もそう」と語り掛けた。

 事件は、子どもが濃厚接触者となったことで母子3人で自宅待機となり、県外出張から帰っていた自衛官の夫もすぐには自宅へ戻れない中で発生した。女性も感染の不安を募らせた。

 小野裁判長は障がいや病気がある人々の苦境に理解を示し、「1人でも、あなたや、あなたのお子さんのように悲しい思いをする人が減るといいなと僕は思う」と述べた。

 女性に対し「無理心中事件だが、あなたは死んではいけない」と強調し、「しっかり事件と向き合い、供養することも一つの責任の取り方だと感じる」などと諭した。その言葉に女性は何度も小さくうなずいた。