「スケーティングがすごく上手で綺麗なので、そういう部分を真似したい」
ジュニア時代、憧れの選手に宇野昌磨(24)の名を挙げていた鍵山優真(18)。
北京でも“ペアルック”が実現する可能性があったのだが……。
銀、銅メダルを獲得し、日本男子フィギュアのレベルの高さを世界に示した鍵山と宇野。コロナ流行のため、今季はコーチのいるスイスに渡らなかった宇野は、鍵山とともに豊田市の中京大のリンクで切磋琢磨を続けてきたという。
そんな宇野は北京五輪の試合後の会見で、鍵山を“盟友”と認めている。
「年が六つ離れていることにびっくりしてはいるが、自分にとっては同世代の感覚。自分の周りで横を一緒に走ってくれるというか、一緒に高めあっていく存在というのがなかなか近場にいなかった。そんな存在に憧れていたのでうれしい」
北京でも仲の良い姿を見せていた二人。
「エキシビションに向けた2月12日の練習では、宇野が『ループ教えて』と鍵山に声をかけ、鍵山が4回転ループを跳んでみせると、すぐに宇野も同じように跳ぶというシーンもありました」(フィギュア担当記者)
実は今回、鍵山も憧れたという宇野のスケーティングを支える存在があった。
「スケート靴の氷に接地する金属の部分をブレードと言いますが、昨季から宇野は、バンクーバー五輪代表の小塚崇彦が開発した『小塚ブレード』を使っているのです。従来のブレードは金属を溶接で繋ぎ合わせて作られており、ジャンプなどの衝撃で曲がって頻繁に交換する必要があった。しかし小塚ブレードは一つの金属から“削り出し”て作るため、耐久性に優れ、なおかつ軽いのです」(同前)
小塚氏と一緒に開発に携わった父の嗣彦氏が語る。
「宇野選手については、スイスで一緒に練習していた島田高志郎選手が小塚ブレードを使っていたため、崇彦に『自分も使ってみたい』と連絡してきました。使いながら、ブレードのカーブの具合など、自分に合うようメーカーに注文して、北京五輪を迎えたようです」
このブレード、実は鍵山のためにも作ったという。
「鍵山選手がジュニア時代に出た大会での滑りを見て、『これは凄い選手になるな』と思いました。父親(コーチの正和氏)とは彼が選手時代からの知り合いでしたので、まずは父親に小塚ブレードを使ってもらったのです。するとその感触が良かったようで、鍵山選手も『履きたい』と言いました。そこで、本人用に作ったのです」(同前)
ところが――。
「完成したので父親にその旨、何度も連絡を入れましたが、一向に返事がない。練習場所のリンクにも連絡して、伝えてもらったはずなのですが……」(同前)
酒豪として知られる正和氏。まさかお酒とともに忘れてしまった、とか?
source : 週刊文春 2022年3月3日号