結束試される民主主義国=米欧、追加制裁で対抗―国際秩序に最大の挑戦
このニュースをシェア
【2月24日 時事通信社】米国主導の民主主義や自由経済に基づく冷戦後の国際秩序が、最大の挑戦に直面している。ロシア軍は24日、隣国ウクライナへの本格侵攻を開始。「力による現状変更」の試みに対し、バイデン米政権は追加制裁で応じる構えだが、これまでの制裁発動で「開戦」を阻止できなかっただけに、効果は未知数だ。日米欧など民主主義陣営は正念場を迎えている。
米国は、旧ソ連との冷戦勝利を謳歌(おうか)したのもつかの間、2001年の米同時テロ後、アフガニスタン、イラク両戦争へと突き進み、対テロ戦争の泥沼に陥った。「米国第一主義」を掲げたトランプ前政権下で国際社会での指導力が急速に低下。昨年8月にはアフガンからの駐留米軍撤収に伴う混乱もあり、同盟・友好国からの対米不信が高まった経緯がある。
威信回復を目指すバイデン政権は、ウクライナ危機を通じ、民主主義国の盟主として日本や欧州などと結束できるか試されている。ロシアがウクライナに侵攻すれば、同盟国と連携し「迅速で厳しい代償を負わせる」と繰り返し警告。情報機関が入手した情報も関係国に積極的に開示する異例の手法で、偽情報の流布を繰り返すロシアとの情報戦にも立ち向かった。
社会の分断が深まり内向き志向を強める米国は、危機当初からウクライナへの米軍派兵の可能性を否定。軍事オプションを排除した中で、バイデン政権は強力な経済制裁の準備に奔走し、欧州各国と足並みをそろえるのに成功した。
だが、国際社会の再三の警告を振り切って暴挙に出たロシアのプーチン大統領に対し、経済制裁がどこまで有効かは不透明だ。米国はポーランドなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国への米軍増派を行い、ウクライナへの大規模な軍事支援も実施したが、ロシア軍の侵攻を阻止することはできなかったからだ。
「米国と同盟・友好国は結束し、断固とした態度で対応する。世界はロシアの責任を追及するだろう」。バイデン氏は23日夜、ロシアによるウクライナへの攻撃開始を受けた声明でこう強調した。侵攻の被害を最小限に食い止めてプーチン氏の野望を打ち砕くために、米欧に残された手段は限られている。(c)時事通信社