質問されたことに答えたことが「弁明」とは

 いろいろな意見があるのはスーパースターゆえに仕方がないのかもしれないが、個人的には羽生の言動には何らおかしなことなどないと考えている。前者のアクシデントが発生した際、取り乱すことなく「氷に嫌われちゃったかな」と冷静さを保ちながら自分に言い聞かせるような言葉を発していたのは印象的で非常に立派だった。

 ジャンプのタイミングとしては自他ともに認めるほど完璧なはずだった4回転サルコーが1回転となってしまった要因を終了直後のインタビューで本人が明かすのは、その件に関して質問を受けたのだから至極当然の成り行きであろう。これを「弁明」ととらえることこそ明らかなこじつけであり、むしろ「詭弁」というものである。

 そして、後者の右足首捻挫だ。羽生は全演技終了後の14日に会見を開くと「今回、これを言うことが正しいか分からないですし、言い訳臭くなって、いろいろ言われるのもやだなって・・・。何か言ったら嫌われるというか。怖い気持ちもあるんですけど、事実なので・・・」と自ら口を切り、その後に「前日の練習で、足を痛めて・・・捻挫しました。思ったよりひどくて、普通の試合なら完全に棄権していました。今も安静にしてないといけない期間。それくらい悪いので」と明かしている。アンチとおぼしき人たちを含めた一部から言わせれば、これも「弁明」に聞こえるらしい。

2月14日、北京五輪のメインメディアセンターで記者会見する羽生結弦選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 患部に痛み止めの注射を打ちながら何とか当日のフリーに臨み、本来なら立てないはずのリンクに立った。その上で成功こそしなかったものの世界で初めて4Aを認定され、SP8位からフリーで挽回し、4位入賞を果たしたのだ。そんな限界ぎりぎりの状況下において羽生が我々の想像を遥かに絶するレベルで神経をすり減らしながら日本中の期待に応えようと心血を注いでいたのは想像に難くない。