4月から新しいメンバーが入社する会社も多いのではないでしょうか。新人は会社の仕事のルールや文化それから価値観などに慣れなければなりません。会社に慣れるプロセスを「オンボーディング」と呼びます(※1) 。オンボーディングのプロセスにおいて新人は大忙しで、例えば、次のことを実行する必要があります(※2) 。
・仕事を進めるための能力を獲得する
・周囲との関係を構築する
・会社の中の力関係を理解する
・会社の中で用いる独自の用語を学ぶ
・会社の目標や価値観を受け入れる
・会社の歴史を知る
新しい会社に入ったばかりの時のことを思い出してください。覚えなければならないことが山積で、1日が終わる頃には疲れが押し寄せていたはずです。
◆オンボーディングの進み方
オンボーディングはどのような流れで進むのでしょう。学術研究によれば、次の順で進むことが分かっています(※3) 。
①新しい職場における周囲との関係を構築する
②会社のルールに表面的には従うようになる
③会社で重視されている価値観を自分のものにする
同様の研究は他にもあります。「職場のメンバーから受け入れてもらえた」と思えるのに3カ月弱かかるのに対し、「仕事上の能力を発揮できた」と思えるのは約6カ月かかるという研究です(※4) 。
注目に値するのは、何よりもまず、周囲と仲良くならなければならない点です。入社したばかりの新人には関係構築を促す方がよいのです。
◆企業から新人への働きかけ
オンボーディングを円滑に進めるために必要なことは2つあります。企業から新人への働きかけと、新人から企業への働きかけです。はじめに前者について解説します(※5) 。
オンボーディングに有効な働きかけとして、例えば、次のものが挙げられます(※6) 。
①どのような流れで会社に慣れていくのかを新人に対して示す
②何月にはどんな状態になっているなど適応のタイムテーブルを新人に伝える
③新人に公式的なメンターをつけ、相談先がわかるようにする
④新人の働きぶりに対してポジティブなフィードバックを行う(褒める)
これらの働きかけの多くは、企業が事前に準備しておく必要があるものです。場当たり的な受け入れをしていると、オンボーディングはうまくいきません。
皆さんの会社では、新人の受け入れに際してしっかりと準備していますか。準備していない場合、新人が適応する順序やタイムテーブルを設計し、メンター制度を整えて、フィードバックを行う時間を確保するようにしましょう。
なお、企業から新人に対する働きかけは中途社員より新卒社員の方が行われやすいことが指摘されています(※7) 。例えば、中途社員向けの新人研修を体系的に実施する企業は稀(まれ)です。中途社員は、入社後の学習のための猶予が少なく、新卒社員に比べて企業からの働きかけが弱い傾向にあります(※8) 。
さらに中途社員の中には、会社から支援を受けることを「負い目」に感じる人もいるようです(※9) 。自分に十分な能力がないから働きかけが必要なのか、と落ち込んでしまうのです。
オンボーディングは新卒社員も中途社員も直面する課題であり、企業からの働きかけが不可欠です。支援を受けることは何も恥ずかしくないと伝えておく必要があります。
ご回答ありがとうございました