犬の福祉を守るための新しい法律
ドイツでは2022年1月から、犬の保護者のためのルールとして新しい法律が施行されました。
この法律は、虐待的な繁殖の禁止、子犬の社会化の促進、犬の心身の健康を害する飼い方の禁止など犬の福祉を守ることを目的としています。禁止事項は科学的な研究結果を根拠として定められています。
法律で禁止されている行為は一般の飼い主だけではなく、牧畜犬、警察犬、軍用犬などの所有者やハンドラーも対象になっています。
そのため、一部の警察犬や軍用犬とそのハンドラーが一時的に職務から離れる必要が生じています。警察犬や軍用犬において解決しなくてはいけない問題とは何なのでしょうか。
嫌悪刺激で犬を制御することは禁止
新しい法律のもとでは、痛みを伴う訓練は全面的に禁止となります。爪のついた金属製のプロング首輪などはその代表的なものです。
警察犬が犯罪者を攻撃する際に、犬の首輪を軽く絞めて犬の気道を制限することで攻撃を終了させるそうですが、この方法が嫌悪刺激で犬を制御することにあたり動物福祉の概念と矛盾するとして、改善された方法が確立するまで襲撃訓練を受けた犬とハンドラーの出動が止められています。
法律の改正は1年以上前から周知されていたのですが、警察関係者は警察犬が対象になると考えていなかったことが、この度の職務停止という事態につながったそうです。
警察や軍隊では犬に苦痛を与えない訓練方法を受け入れることを歓迎していますが、具体的な見通しは立っていないようです。
新しい法律が定める他の事柄
犬の福祉を守るための新しい法律が定めるその他の事柄には次のようなものがあります。
1.犬のつなぎ飼いの禁止
犬を屋外に鎖などでつないで飼うことは禁止となります。
使役犬の特定の条件下でのみ例外がありますが、その場合も必ず監督者が側にいること、つなぐ紐は3メートル以上で軽く犬を傷つけない素材であること、ハーネスや首輪は犬の体を締め付けない安全な形状であることなどの条件が定められています。
2.犬舎で飼育する場合の規定
犬を犬舎で飼育する場合、犬のサイズによって床面積が規定されています。一番小さい体高50cmまでの犬で最低6平方メートルが必要です。犬が休むための柔らかい場所、断熱性、耐寒性なども規定されています。
3.犬に適切な運動
犬には少なくとも1日2回は犬舎の外に出る時間を設けて運動させる必要があります。運動は散歩だけでなく庭に放すことなども含まれ、1日の合計時間は1時間が最低基準となります。
4.虐待的繁殖や美容目的の身体改造の禁止
呼吸困難や過剰な皮膚のシワなど健康に悪影響を及ぼす形状を作り出す繁殖、見た目を整えるためだけの断尾や断耳は禁止され、ドッグショーの出場することはできません。
5.プロのブリーダーへの規制
犬の商業的繁殖を行う者が持つ犬の数は5頭まで、同時期の繁殖は雌犬3頭までと定められています。
新しい法律は他にも多岐にわたって細かい規定が設けられています。
ドイツと言えば動物の福祉を気にする人が多いというイメージがあるかもしれません。しかしパンデミックを機に犬を飼い始めた人も多く、犬の福祉に反した飼い方が増えたことも、このような細かい法律の改正につながった理由だそうです。
まとめ
ドイツで犬の福祉を守るための新しい法律が施行され、警察犬や軍用犬も福祉に反する制御方法を禁止するために一時的に職務をストップしているというニュースをご紹介しました。
どのようなことも過渡期には混乱が付き物ですが、社会のためにも犬のためにも1日も早く解決方法が見出されてほしいと思います。
https://www.gesetze-im-internet.de/tierschhuv/BJNR083800001.html
https://www.bmel.de/EN/topics/animals/pets-and-zoo-animals/pets-and-zoo-animals_node.html
https://www.theguardian.com/world/2022/jan/06/german-police-dogs-sent-off-duty-after-ban-on-pulling-collars