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ヒーロー
着信音が鳴リ直ぐにタップする。
「待ってたようね」レイコが言う。
「正直言って、頭がこんがらがってる」
「でも真実よ。受けいれて」
「兎に角、説明してくれ」
「じゃあ時間がないから手短に言うわ。今はST暦500年、あなた達が使う西暦で2465年に生きてるの」
「未来からの使者って事か?まさか、信じられない」
「じゃあエジプト地震はどう説明がつくの。あなたの時代に地震の予知はできない筈よ」
確かにその通りだと慶太は思った。
「それじゃあ何故未来の使者が、俺のような三流大学生のうだつが上がらない奴にコンタクトを取るんだ。可笑しいじゃないか」
「それは量子コンピュータがあなたを選択したからよ」
「量子コンピュータって、あのスーパーコンピューターの一京倍の計算力があるという?」
「私達の世界ではスマホのサイズよ。兎に角、あなたは選ばれし者よ。ヒーローになる気はない?」
「笑わせるな俺がヒーローとか。なれるもんならお金を払ってでもなりたいよ」
「慶太は、自分が思ってる程愚かではないわ。自信を持って」
「また母親っぽくなったな、タメの癖に。それで俺にどうしろって言うんだ」
「あなたの高校の時の同級生に、中西加奈子っていたでしょう」
「ああ、覚えてるよ、目立たないことが反って目立っていた根暗なカナちゃんの事か?」
「彼女には、特殊な能力があるのよ」
「超能力者ってことか?」
「そう、その彼女にコンタクトをとって仲良くなって欲しいの」
「俺、中西とは1度も喋った事無いんだけど」
「努力して。それから彼女に私の話が理解できたと思ったら電話の前に呼んできて」
「彼女に直接電話できないのか?」
「それは無理だわ、理由はときが来れば話す。どうやってくれる?」
「何でもやるって約束したからにはやってみるけど、上手く行くかは自信ない」
「慶太ならやれるわ。だってヒーローじゃない」
そう言った所で電話が切れた。
もがく~
はっきり言って頭が混乱してきた。
小さな簡易型ボックスの本棚に、卒業記念アルバが眼に入る、
そっと取り出すとベッドに腰掛けて、アルバを開く。
同じクラスのページを見て、中西加奈子を探す。
眼鏡をかけて写っていた。
何だか写真を拒否しているようにも見える表情だ。
他のページを探しても、彼女の姿は見つからない。
思い起こせば、確か修学旅行や体育祭にも参加しなかった記憶がある。
最後のページと裏表紙の間に、一枚の紙が挟むであった。
同窓会 幹事
小林誠司 090ー****ー****
松田直美 090ー****ー****
これは、二十歳に成ったら同窓会をしようと卒業式の日に幹事を決めたのを思い出した。
松田直美なら連絡先を知ってる筈だ。
スマホを手に取ったが、まだ朝の7時前だと思って諦めた。
松田直美は公立大学に合格した頭のいい子だった。
俺みたいな男が電話してきたら嫌がるかなと思った。
「俺がヒーローかぁ」
悪くないなと思ったが、直ぐに
「バカバカしい」と言ってベッドに入った。
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