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プーチン氏、ウクライナ親ロシア派地域の独立を承認

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白井さゆりさん他1名の投稿白井さゆり上野泰也

【モスクワ=桑本太】ロシアのプーチン大統領は21日、安全保障会議を開催し、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域について独立を承認したと発表した。親ロ派支配地域にロシア軍を派遣する方針も決めた。ウクライナや米欧が一方的な決定として反発するのは必至だ。

臨時に開催した安保会議では、親ロシア派勢力が支配する地域の独立承認問題を諮問した。対象は親ロ派武装勢力がウクライナ東部で一方的に独立を宣言した「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」。安保会議副議長のメドベージェフ前大統領ら政府幹部が相次いで独立を承認すべきだとプーチン氏に促した。

プーチン氏は親ロ派の独立を承認する大統領令に署名し、2地域とロシアとの友好相互援助条約にも署名した。会議後のテレビ演説でプーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を求めたロシアの提案が「無視された」として欧米の対応を批判した。また、ウクライナ軍からの攻撃によって2地域での紛争が激化していると指摘、「(2地域の)情勢は危機的な状況にある」などと承認の正当性を主張した。

また、プーチン氏はロシア国防省に対し、平和維持目的として2地域に軍隊を派遣するよう指示を出した。親ロ派の支配地域が独立国家として承認されたことで、ロシアと親ロ派が結託してウクライナ軍と武力衝突する事態も考えられる。

ロシアは東部地域の危機をあおり、ウクライナの統一を侵して国際的に認められない一方的な承認に踏み切った。国際法に違反するとして、米欧などからの対ロ制裁の発動は避けられない情勢だ。

ロシア下院は15日に、この2地域を独立国家として認める法案について、プーチン氏に承認を求めることを決議していた。親ロ派勢力も21日の安保会議に先立ち、改めて独立承認を要請していた。

ウクライナ東部紛争については、停戦と和平への道筋を示した2015年の「ミンスク合意」に基づき、独仏ロとウクライナの4カ国協議が進んでいた。ただ、ロシアが親ロ派勢力の支配地域の独立承認を決めたことで、今後の協議の継続が困難になる可能性がある。24日に予定される米ロ外相会合や、原則的に合意した米ロ首脳会談などの外交交渉にも大きな影響を及ぼすのは避けられない。

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  • 白井さゆりのアバター
    白井さゆり慶應義塾大学総合政策学部 教授
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    一旦はロシアと西側は交渉に入るとみられたが、ロシアは紛争地域の東部の2地域に対して侵略ではなく、独立を一方的に承認した。ウクライナの国境を無視して国際法に違反する予想外の行動に出た。ウクライナは事実上領土をかなり失うことになり、欧州も制裁措置に出ざるを得ない。さらなる侵攻のきっかけとなりそうで、ウクライナをめぐる緊張は高まっている。ロシア側はウクライナ国軍の攻撃の恐れを指摘するが、ロシア侵攻の口実に過ぎない。米国は大統領令で2地域への米国による投資・貿易・融資を禁止する制裁にでるが、今後同盟国たちとどのような制裁内容にするのかに注目があつまる。エネルギー危機の解決が遠のくことが懸念される。

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  • 上野泰也のアバター
    上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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    プーチン大統領による親ロ派独立承認により、ロシア・ウクライナ・独仏による15年の「ミンスク合意」は事実上崩壊した。この合意ではウクライナ政府が東部親ロ派地域に「特別な地位」を与えるとされていたが、そうした動きはなく、ロシアは軍事力を背景とする実効支配に踏み切ったと言える。報道によると、独立を承認した2国との間で友好相互援助条約が締結され、平和維持軍としてロシアの正規軍が進駐する。EUさらに米国は経済制裁を早期に発動する構えだが、迫力を欠く内容になるのではないか。特に天然ガスを中心とする経済的利害関係からEU諸国の足並みは乱れやすい。クリミアのケースと同様に、ロシアによる既成事実化が進むとみる。

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