市場調査会社であるITR(アイ・ティ・アール)が2020年4月に発表した情報によると、国内ERP市場は、2019年度の売上金額が1,138億円で、前年度比13.4%増となりました。2020年度以降も右肩上がりのグラフを示しており、2018~2023年度の年間平均成長率は9.5%を予測しています。
ERP市場規模推移および予測:ITR出典
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今後のIT投資については先行きの不透明感が漂うものの、リモートワークの長期化やサプライチェーン停滞への対応、外出自粛による新たな物流需要の高まりなど、経営環境は急激に変化しています。withコロナを意識した経営のあり方や働き方が求められている中、レガシーシステムからの刷新やクラウドERPへの移行は国内企業にとって急務であり、むしろ先手を打って対応していく企業が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、日本独自の商習慣や制度改正、法改正への対応など、国内企業が抱える経営課題を解決できる国産ERP9製品を比較してみました。各製品の特徴のほか、対象となる企業規模や価格についても触れておりますので、ERP導入検討時の参考にしてください。
国産ERPパッケージ9製品
- GRANDIT
- OBIC7
- GLOVIA
- ProActive E2
- HUE
- InfiniOne
- EXPLANNER/Z
- Biz∫
- 奉行VERP
国産ERPパッケージ9選を比較
GRANDIT
基本である10個の業務モジュールと組み込まれたBIやワークフローに加え、業種や業務に特化した豊富なアドオンモジュールによって、様々な業務形態に対応可能
モジュール範囲は、経理、債権、債務、販売、調達・在庫、製造、人事、給与、資産管理、経費の10モジュールで、オンプレミスおよびクラウドで導入することができます。また、ワークフロー、BI(ビジネスインテリジェンス)などは標準で装備されています。これに、企業の業態に合わせて生産管理や工事管理などのアドオンモジュールが流通しています。また、EコマースやEDIによる外部取引先と連携するための機能も実装されています。
GRANDITは、国内の基幹業務システムやERP導入に実績のあるシステム会社13社が集結し、コンソーシアム(共同事業)方式で開発されたERP製品です。そのコンセプトは「叡智の反映」であり、複数のシステム会社がそれぞれの叡智(技術やノウハウ)を集結したことで、日本企業の様々な商習慣に特化した、柔軟な国産ERPが誕生しました。
同製品は「次世代Web-ERP」として2004年7月にリリースを開始し、web環境で使えるERPとして時代を牽引した実績があります。導入実績は約1,300社に達しており、主にグループ会社なども管理したい大企業から中堅企業に適しています。
日本の商習慣に適合するERPとして、国内企業が求める課題にも対応しやすく、また、多言語・多通貨対応によって海外事業を展開するグローバル企業にも対応できます。数ある国産ERP製品の中で、最も柔軟かつ洗練された製品と言えるでしょう。
パッケージ価格は販売・調達在庫・会計・債権債務の最小構成で約650万円からとなっています。
OBIC7
自社開発、直接販売による提供
OBIC7は、1997年のリリース以来、累計導入実績数約20,000社を誇り、国産ERP最大手の製品です。ERP主要ベンダーにおけるERP累計導入社数シェアNo.1(※)を18年連続で獲得しています。
(※)2002年~2019年 ERP主要ベンダー(ライセンス売上高シェアトップ10)における累計導入社数 矢野経済研究所調べ
提供モジュールは、会計、人事、給与、就業、販売、生産、財務の7つで、オンプレミスおよびクラウド形態となっており、リリース当初から直販のみで販売されています。システムはクライアントサーバー方式のため、他のwebベースのERPと比べるとUIに少しold感があるかも知れません。
ただし、同製品が幅広く受け入れられている理由としては、シンプルなシステム設計と過去のOBIC7事例をベースとしたソリューション提供です。ERP選定の際は、システムの「柔軟さ」に着目している企業が多いと言えます。
パッケージ価格は、最少構成で約500万円からとなっています。
GLOVIAシリーズ
業種・業務形態や規模に合わせて、最適なソリューションを3つの製品ラインナップから選べる
グループ経営特有の課題である、情報統合に焦点を充てたGLOVIA SUMMIT。会計業務の改革や、人事・総務業務の省力化によって企業成長を支援するGLOVIA Smart。社内の情報統合とコミュニケーションを促進し、経営変革のきっかっけを与えるGLOVIA iZ。販売管理、会計管理を中心として中小企業向けのGLOVIA きらら。
以上がGLOVIAシリーズの4つの製品ラインナップであり、顧客はオンプレミス、クラウドから選択できますが、システム方式が疑似web方式(クライアント側にブラウザ以外のツールが必要)となっており、入力データが多い際に多少の不便を感じるかもしれません。
販売形態は直販および約20社のセールスパートナー企業からの提供となります。
GRANDITやOBIC7に比べると、システムとしての柔軟性に欠ける点もあるので、導入前および要件定義時に業務変更の有無や追加開発の可否をしっかり確認することが大切です。
パッケージ価格はGLOVIA iZの販売・会計で約700万円からとなっています。
ProActive E2
国産初のERPとして28年間、6,200社を超える導入実績に裏打ちされた豊富な機能を保持
財務会計、管理会計、経費、資金管理、連結、販売、購買在庫、債権、債務、手形管理、人事、給与、人材マネジメント、個人番号管理、目標管理、勤怠、固定資産、リース資産の18モジュールが提供されています。
顧客の企業規模や対象業務範囲に応じてオンプレミス、クラウドの利用形態から選択することが出来ます。
販売形態としては、直販および14社のパートナーから提供されています。
販売、会計、人事給与、資産など大企業や中堅企業の業務に対応した製品ラインナップですが、全体的な導入ではなく、財務会計だけといった単体での導入事例も少なくないようです。
旧バージョンではクライアントサーバー形式で提供していたため、現在のWeb形式に移行した後でも、クライアントサーバー形式のような操作性を実現しているのも、主な特徴の1つです。
パッケージ価格は、販売・会計で約600万円からとなっています。
HUE
エンタープライズ向けERPパッケージ
HUEの製品コンセプトは「ノンカスタマイズ」です。同製品は、導入企業で発生した機能ギャップを、業種・業態特有の要件や商習慣を汎用的な機能にして標準として組み込んでいます。
モジュールとしては、販売・調達、原価、プロジェクト管理、財務会計、管理会計、資金管理、資産管理、購買、経費精算、不動産管理の10モジュールが提供されており、利用形態はクラウドが基本のようです。
人工知能機能をバックオフィス業務に搭載され話題となってましたが、2019年に主力のHRパッケージ事業が売却されてからは、影を潜めているようです。
HUEは元々、人事・給与システムであった「COMPANY」から提供が始まり、会計、販売系へとラインナップを広げてきました。人事・給与、会計はカスタマイズが少ない業務領域ですが、販売系はノンカスタマイズといっても、すべての企業がカスタマイズ不要というわけではありません。当然ながら、自社業務が製品にフィットしなければ、アドオン開発を行う必要があります。あるいは、既存業務をERPに合わせるという作業が必要になるため、場合によっては、部門や会社全体の業務手順やルールを変更しなければいけないことにもなりますので、より慎重にERPとしての選定を行う必要があります。
パッケージ価格は数千万円からの提供のようです。
InfiniOne
個別カスタマイズの提供により、パッケージとスクラッチ開発の両方のメリットが得られる
リアルタイム経営を実現するカスタマイズ型国内商習慣対応ERPを製品コンセプトとしており、販売、購買、在庫、債権債務、貿易、財務会計、原価管理、生産管理の8モジュールが提供されています。
オンプレミス、クラウドから利用形態が選べ、販売形態は直販および50社のパートナーから提供されています。
前身である「NewRRR」の提供から数えて20年以上の実績があり、約1,200社の導入実績があります。そのほか、「卸売業・流通業向け」「プロジェクト管理業向け」「葬儀業向け」などの業種向けラインナップを提供しています。
パッケージ価格は非公開です。
EXPLANNER/Z
国産ERPとして45年以上の歴史と3万本以上の導入実績
製品コンセプトは経営情報活用による企業成長。変化に対応しグループ企業全体の最適化を実現します。
販売、債権債務、貿易、財務会計、原価管理、生産管理の6モジュールで構成されており、アドオンモジュールではなく、業務別コンポーネント(業種テンプレートや業務アプリケーション)を提供しています。
EXPLANNER/Z、Sシリーズのほか、「建設業向け」「自動車部品製造業向け」「食品製造業向け」のパッケージを提供。クラス呼出方式を採用しており、処理機能増加による影響度の局所化を実現。オンプレミス、クラウドの利用形態から選択することが出来ますが、オンプレミスの場合に限り、開発フレームワークの提供が可能です。
パッケージ価格は最小構成で130万円からとなっています。
Biz∫
サービス指向型アーキテクチャ(SOA)を取り入れたintra-mart基盤を採用
複数会社利用を前提として開発されたERP。システムインフラをグループで共用しながら、会社単位に会計年度を設定、個別に運用する形態に対応します。
モジュール範囲は会計、債権債務、人事、給与、販売、購買、在庫、経費の8モジュールだが、全モジュール利用を前提としておらず、「会計」のみ、「購買」のみ、といった必要な業務単位で導入することが可能な疎結合型ERPパッケージです。最小単位でモジュールを導入し、業務領域を拡大していく企業に向いているといえます。
導入社数は1,200社以上あり、オンプレミス、クラウドから利用形態を選択可能。業種・業務別テンプレートも複数用意されています。
intra-mart基盤を採用しており、ノンコーディングのアジャイル開発からプログラミング開発まで、ニーズに合わせた開発ができることも特徴です。
パッケージ価格は、販売で約500万円からとなっています。
奉行VERP
最も多くの導入実績と知名度を誇る国産ERP
奉行シリーズの累計導入実績63万社を誇る中小企業向けERP。パッケージ製品ラインナップはERP業界No.1であり、自社で必要な業務から、部分的・段階的に導入が可能。外部連携用のデータ連携アダプタ機能と自動実行処理機能も搭載。
提供モジュールは、会計、販売、人事労務の3つだが、13種の個別業務パッケージと12種の従業員向け働き方改革テンプレートをクラウド提供。オンプレミス、クラウドから利用環境の選択が可能です。
販売形態はパートナー企業からの提供のみで、直販は行っておりません。なお、パートナー企業数は約3,000社となります。
基本コンセプトはノンカスタマイズパッケージシステムですが、カスタマイズ提供可否は提供形態や奉行シリーズごとで異なります。
パッケージ価格は、会計で約140万円からとなっています。
まとめ
欧米で開発されたERPとは異なり、国産ERPは日本の商習慣にフィットするために作られた製品です。日本国内の法改正対応にいち早く対応し、日本で働く人達にとって使いやすい仕様としている点も強みです。日本国内でERP導入を検討される際は、まず国産ERPの選定から始めてみてはいかがでしょうか。
また、本ブログでご紹介した国産ERPパッケージ9製品を、「市場シェア」「業務領域」「導入実績」「機能特徴」などから、さらに細かく比較・分析したものが下部に表示されている無料ダウンロード資料になります。この機会に是非ご覧ください。
※国産ERPパッケージ製品の情報は当社調べのもと、2021年10月時点の情報を記載したものです。
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- ERP導入