【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間見たEDHの闇と光(ただしエラヨウ、てめえはダメだ)/Embracing The Chaos【Starcitygames】
2011年9月24日 翻訳 コメント (2)いわゆる注釈は(註)として文中に入れてある。翻訳に自信がない箇所はアスタリスクで示し、まとめて文末に置くことにした。また原文で「Commander」となっている箇所は、迷ったけど結局は「EDH」ではなく「統率者戦」と訳すことにした。著者の主張的にそっちのほうが正しそうだから(11月26日補記:各種指摘を受けた箇所を修正)
序文
Cassidy McAuliffeはフォーラムの常連だ(フォーラムでは、DJ Catchemと名乗っている)。彼はこのフォーマットの真のファンだ。9月の殺人的なスケジュールに根を上げた私が助けを求めたところ、彼はもろ手をあげてチャンスに飛びついてきた。先週の金曜は私の誕生日だったんだが、これはなかなか素晴らしい誕生日プレゼントじゃないだろうか。
--- Sheldon
【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間見たEDHの闇と光(ただしエラヨウ、てめえはダメだ)/Embracing The Chaos - Cheap Whiskey, Old-School Conan, And Erayo【SCG】
2011年09月21日
By Cassidy McAuliffe
元記事:http://www.starcitygames.com/magic/commander/22807_Embracing_The_Chaos_Cheap_Whiskey_OldSchool_Conan_And_Erayo.html
テーブルの対面の相手はにやつきながら目を見開き、あまりにそわそわしているので間違って大アリの巣の上にでも腰を下ろしたのかと心配になるほどだった。先攻後攻を決めるダイスロールに勝った相手は迷わずに手札をキープし、こう言った。
「《島/Island》、《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》、《水蓮の花びら/Lotus Petal》、《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を張ってから《メムナイト/Memnite》。エラヨウを反転させていいかな」
ここはFerris Buellerの言葉を借りよう。
「こういうときだよ、Cassがブチ切れるのは」
まず、はじめに
僕は典型的な30代半ばのカジュアルマジックプレイヤーだ。遊び始めたのは高校生の頃で、当時のマジックはリバイスドの時代だった。
Al Gore(註)はまだインターネットを発明しておらず、僕らの小さな町から外部へ開いた窓は雑誌のScrye(註)しかなかった。
地元のゲームショップには「2対1交換」という交換ルールが存在していた。2枚の《生命の色/Lifelace》を手放せば《Demonic Hordes》が手に入るという具合だった(当時のトレードと言えば「このつまんない《Tundra》数枚とその《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》を取り替えてよ」ってな感じだったけど、まあ、それはまた別の機会に)
そんな中、僕らも徐々に気づきだした。最終的には、古参プレイヤーが地元の週末に行われたトーナメントで《Black Lotus》を手放そうしているのに出くわしたとき、トレードを成立させるべくあらゆる手を尽くした。
僕は手に入れたばかりのそのカードをデッキに放り込み、さっそく次の日の試合でテーブルにそれを叩きつけた。そして2ターン目に《水の精霊/Water Elemental》を呼び出したのさ!
……ああ、うん。子供ってそういうところあるよね。
まあ、それはさておき、その後の「とあるマジックプレイヤーの辿った悲しきゲーム人生」を駆け足に紹介しよう。僕はヴィンテージに出会ってからしばらくしてカードを全て売り払いゲームから引退した。その後、レガシーに出会いしばらくしてカードを全て売り払いゲームから引退した。その後、フレイデーナイトマジックに出会い、スタンダードを少し遊び、しばらくしてカードを全て売り払い、プレリリースに出会いしばらくしてカードを全て売り払った。
その通り、よくあることさ。
そんな中、僕が出合ったのが「EDH」(註)と呼ばれるフォーマットだった。そして僕の中の「カジュアルゲーマー」が今再び目覚めたのさ。前々から遊びたいと願っていたマジックはまさにこれだった。
デカいクリーチャーと派手な呪文にこれほどまでに胸をときめかせたのは、1994年に地元のトーナメントで《サルディアの巨像/Colossus of Sardia》に《賦活/Instill Energy》をエンチャントして勝ったとき以来だ。
というわけで現在の話。
僕の良き友人であるChadの独身最後の自由な時間をどうやって有効活用すべきかを、花婿の介添え人であるPatrickと僕は必死に考えていた。この最後の時間を盛大に祝ってあげるために何がしてあげられるんだろう。
3人でGen Con 2011(註)へ行くしかない。そう思ったんだ。
結局のところ、他の子供たちがアルコールとパーティに明け暮れていた中、僕らはもっとカッコいいことを、そう、一晩中、HeroQuest(註)のキャンペーンをこなすような少年時代を送ったいたんだ。(余談。妻はいまだに僕ら2人の間に子供が出来たことを奇跡だと思っている)
僕は航空券を購入し、計画を実行に移すことになった。
(註) Al Gore
アメリカの元副大統領、アル・ゴアのこと。Wikipediaによると彼の企画である「情報スーパーハイウェイ構想」によってアメリカのインターネットは急激に発達したらしい。
参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%82%A2
(註) 雑誌のScrye
「Scrye」という名のトレーディングカードゲーム専門誌のこと。1994年から2009年にかけて刊行されていた。Wikipediaによると最も長く続いたTCG専門誌らしい。
参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Scrye
(註) 「EDH」
エルダードラゴンハイランダーの略。1枚の伝説のクリーチャーと99枚のカードでデッキを組むが、同じカードは1枚まで。他にも色々と特殊なルールが存在する。
(註) Gen Con 2011
Gen Conは世界でも最大級のゲームコンベンション。ここで言及されているのは2003年からインディアナ州インディアナポリスで開催されているGen Con Indy。
公式サイト:http://www.gencon.com/
(註) HeroQuest
Hero QuestではなくHeroQuestで正しいらしい。ロールプレイング的要素を持ったボードゲーム。2009年にロールプレイングゲーム版も出てる。
参照:http://en.wikipedia.org/wiki/HeroQuest
旅のメモ(その1)
デルタ航空は選ばないこと。コネチカット州にあるブラッドリー国際空港とインディアナポリスの距離は、834マイル。僕らが帰国便の乗り継ぎ先を変更する前のブラッドリー国際空港とアトランタの距離は、967マイル。(註)
度重なる遅延とキャンセルされたフライトの代替としてアップグレードをしてくれと交渉したとき、受付の係員は僕の顔面を殴りつけてから財布を盗んでった。
本当だよ。(註)
(註) デルタ航空は選ばないこと
アメリカの地理に明るくないのでここの何が問題なのかよく分からない。自分で乗り継ぎ先を探したほうが効率が良かった、って話なんだろうか。
(註) 本当だよ
この話が本当かどうかは分からないけど、少なくとも原文にはそう書いてある。
Gen Conに全てを賭ける男たち
Patrickと僕(と、この2人ほどではないにしてもChadも)根っこからの統率者戦プレイヤーなので、イベントで開催されている統率者戦の試合をチェックしてみた。
フォーラムでは悪い噂が流れていた。「EDHマフィア」どもがGen Conのトーナメントへと向かったというのだ。彼らはカジュアルを愛するプレイヤーたちを統率者戦のトーナメントで叩き潰すつもりなのだと。
コンボデッキが会場を支配するってことだ。
僕らは最悪を危惧した。Patrickは「Hate the Haters!(嫌われ者に嫌われろ)」デッキを作ろうと考え始めた。それは赤単色で《赤霊破/Red Elemental Blast》やその同類と《沸騰/Boil》を詰め込んだものだった。
僕はそれよりは前向きかつ楽観的で、恐怖に負けてデッキを崩すような真似はしないことにした。
「きっと大丈夫だよ」と僕は言ったのさ(もしかしたら他にも「どんな問題が起きるってんだ?」とか「ばらけて様子を見よう」とか言ったかもしれない)。
僕はGen Conをこのフォーマットをより広い視野でとらえるためのバロメーターにしようと考えた。より大きな舞台における統率者戦を体験することで、このフォーマットが競技的なプレイと上手く折り合えるのかを見極めるつもりだったんだ。
結果としては、Patrickの目的であった「ウイスキーでも飲もうぜ!」のほうがマシだったかもしれない。
Indianapolisについて(その1)
P.F.Chang(註)のバーテンダーは最高のLong Island Iced Tea(註)を作ってくれる。僕とPatrickの2人で5杯は頼んだ(Patrickが4杯分を担当し、別段それを苦にした様子もなかった)。
ああ、それと野菜チャーハンにオレンジチキンが乗った料理も注文したな。この旅行で最高の料理だったよ。
(編註:明らかに彼らはHarry & Izzy’s(註)へ立ち寄りそびれている)
(註) P.F.Chang
アメリカ全土に店舗のある中華料理屋のチェーン店。公式サイトのメニューを見たら月桂冠などの日本酒も置いてるらしい(店舗にもよるだろうけど)。
参照:http://www.pfchangs.com/index.aspx
(註) Long Island Iced Tea
Teaという名だけど、ウォッカやジンなどを用いて作るカクテルの一種、つまりお酒。一般的に紅茶は一切含まれていない。
参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Long_Island_Iced_Tea
(註) Harry & Izzy’s
インディアナポリスにあるアメリカンレストラン。地元ではなかなか有名な店らしい。
参照:http://www.harryandizzys.com/main/
競技的プレイにおける難題
統率者戦のプレイヤーたちは皆飽き飽きしていた。僕らは自分たちのデカぶつと派手な呪文をカウンターに怯えずにプレイしたかった。僕らは何度も繰り返される《精神隷属器/Mindslaver》や《アーマゲドン/Armageddon》から解放された世界を望んだ。
僕らはカジュアルプレイヤーであり、僕らは死んでも自身の権利を守る。
巷の統率者戦スレを軽くのぞいて見てくれ。議論は何百回と繰り返されている。「トーナメントでプレイしたら《パリンクロン/Palinchron》が《High Tide》しやがった!」的な書き込みとそれに対する「トーナメントでプレイしたのが間違いだね」という返信がこれでもかと繰り返されている。
統率者戦はカジュアルフォーマットであり競技的な環境にはそぐわない、というのが皆の共通認識だ。賞品を用意するや否や、このフォーマットの神髄はないがしろにされ、それが再び取り戻されることはない。
とはいえ僕らはなかなか諦めが悪い。だから僕らは何度でも挑戦するんだ。誰かがこのトーナメントうんぬんの議論をスレッドに投下し続けなければいけないんだ。
結論として、僕はGen Conに普段どおりのデッキを持ちこむつもりだ。どうやってかはまだ分からないけど、僕はそこで最高の統率者戦を体験してきてやるさ。
というわけで、今回の旅行が始まるに当たって、僕は《血編み髪のクレシュ/Kresh the Bloodbraided》、《大祖始/Progenitus》、《夢見るものインテット/Intet, the Dreamer》そして《オルゾフの御曹子、テイサ/Teysa, Orzhov Scion》をカバンに詰め込んで南へ……西寄りの南へ向かったのさ。
ゲートから転がり出て
フライトを捕まえるためにマサチューセッツで朝の4時に目覚めた僕らは、木曜の午後にはインディアナポリスにいた。予定ではまずホテルへ向かい、次にバッジ(註)とイベントチケットを回収するためにダウンタウンへ行き、さらにネットで知り合った統率者戦プレイヤーたちと夕飯を食べることになっていた。
(註) バッジ
Gen Conの参加者はバッジをつける必要がある。このバッジがないとホールやらショーやらに出入り出来ない。特定のイベントではチケットを買うためにもバッジが必要となる。
参照:http://www.gencon.com/2012/indy/cs/attendees/faq.aspx
僕は午後11時から始まる統率者戦・スイストーナメントに参加する気満々だった。4人で1ポッドの3ラウンド制だ。ポッドで勝ちぬくと5ポイントもらえる。2位で3ポイント、3位で2ポイント、最下位は1ポイントだ。ペアリングは成績に従って行われ、最終的に最も高いポイント保持者が賞品を得られる。
僕はクレシュを相棒に選び、最初のポッドは最高だった。誰も速攻で何かを決めに行く様子はなく、各プレイヤーに派手な見せ場があった。僕はその試合で《数多のラフィーク/Rafiq of the Many》を排除すべく《Berserk》した《禿鷹ゾンビ/Vulturous Zombie》をアタックさせたあとに《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》を使うプレイヤーに負けて2位に終わった。
皆が試合を楽しんだ。
だけど僕らは単に運が良かっただけだった。別のポッドでは《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を操るプレイヤーによってあっという間にゲームが制圧されていた。
彼のデッキは最初の数ターンのうちに《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を反転させることが可能で、その後《秘儀の研究室/Arcane Laboratory》によって卓の全員相手にロックを決める。そして《メムナイト/Memnite》による緩慢な死が他の3人にもたらされるまでの約80ターンが続く。
さらに悪いことに、トーナメントではよくあることではあるけど、エラヨウを用いるプレイヤーがもう1人いたことだ。
僕らは大半のプレイヤーが集まっている端のテーブルへ向かった。
話によると、エラヨウ使いのうちの1人を問い詰めたところ、相手はオンラインでも何度も議題に上がっているガチコンボや共謀の犠牲になったことが前にあり、今年は黙って犠牲者側に回るつもりはない、と言っていたらしい(*2)。
もちろんこの説明に納得したプレイヤーはいなかった。
僕はPatrickを探した。彼は参加したポッドで《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》をプレイしていた。
《雑食のハイドラ/Hydra Omnivore》のコントロールを得た彼は、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》と《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》と《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》によるアンタップを用いて、速やかに100点のダメージを生み出していた。
彼に上記の話をしたところ「当たったら負けるしかないな」とのことだった。
そうしてペアリングは進んでいった。
2ラウンド目でPatrickが《結界師ズアー/Zur the Enchanter》相手に投了したあと、寝ぼけた目をしたChadを引き連れて朝の3時にホテルへと戻っていった(ちなみにChadは、上記の残念な状況をすでに予想していたため、それを避けて基本セット2012のドラフトをハシゴしていた)。
僕は嵐のただ中で席につき、そこで父親とその2人の息子たちとプレイすることになった。
これまた楽しい試合だった。
またしてもテーブルに叩きつけられた《禿鷹ゾンビ/Vulturous Zombie》は巨大に膨れ上がった。だけどそれでも僕は追いつめられる側だった。反対側には《寛大なるゼドルー/Zedruu the Greathearted》がいて、彼の兄弟の《ボガートの汁婆/Wort, Boggart Auntie》に率いられたゴブリンの軍団を全て《手綱/Reins of Power》で奪った彼は僕の頭に一撃を振り下ろした。
僕らは大笑いしながら楽しい時間を過ごしたんだ。だけど試合が終わったとき、また別の卓がエラヨウ使いたちによってあっという間に制圧されていたことを僕らは知ることとなった。この時点ですでに次の試合の組み合わせは壁に張り出されていたからだ。
最終ラウンドのペアリングに僕は入っていた。対戦相手は以下の通り。《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》と《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》……そしてもう1人の《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》。
展開は予想通り。1ターン目に片方のエラヨウ使いが場をロックした。
犠牲者うんぬんについて述べてたプレイヤーだ。
念のために記しておこう。彼の目の輝きと他のデッキを金魚みたいに無力化するのに成功したときの喜びようを見て、こいつの主張は半分も信じられないと思った。こいつはこのデッキを心底楽しんでいる。
その後、なんとかかんとかもう1人のエラヨウ使いが自身のエラヨウを場に出して反転させ、1人目のプレイヤーの《Erayo’s Essence / エラヨウの本質》を破壊することに成功した。
1人目のプレイヤーは再度パーツを集めて自身のジェネラルを呼び出そうとした(それも次のターンに)。しかしそれは2人目のプレイヤーによって打ち消された。
そうすると1人目のプレイヤーはアンタップしたあとに《未来予知/Future Sight》と《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》、さらに《エーテリウムの彫刻家/Etherium Sculptor》を場に出してから自身のデッキを引き切り、対戦相手である僕ら全員を《天才のひらめき/Stroke of Genius》でライブラリアウトさせた。
なかなか興味深かったよ。「麻酔がいまいち効いてなかったみたいで、外科医が僕の胆のうを摘出するのがそのまま感じられた」ってなもんだ。僕は何枚かの土地とジェネラルを場に出してはいたけど、何かを出来たわけじゃないし、出来るとも思ってなかった。
その試合の一番の見せ場は、勝者であるエラヨウ使いが他の3人がどの順番に負けたのかを決める場面だった。実に簡単な決め方だったよ。
エラヨウ野郎
「さて、公平にやろうか。君たち3人をそれぞれ僕のデッキのカード3枚に割り当てて、僕がそれをランダム引きする。最初に引かれた人が最初に負けたプレイヤー、その次が次に負けたプレイヤーってことで」
彼はそう言うと彼のデッキの上から3枚のカードを僕らに見せることなく手の中に入れた。そしてそれらをテーブルの下でシャッフルし始めた。別の卓に行っていたもう1人のエラヨウ使いはこの時点で卓に帰って来た。
彼は「どのカードが誰なのか教えてくれないのか?」と尋ねた。エラヨウ野郎はこの言葉を無視して手元のカードを眺め、そのうちの1枚を表向きにし、僕を見た。
エラヨウ野郎
「おおっと、残念。こいつは君だね」
僕はそのあと、傍観者であろうとしていた。
僕は黙って席に座りながら静かに心の中で計算をしていた。暴力行為を理由に警察に捕まる前にこの州から飛行機で出立するために必要な時間の使い道だ。そうしているうちに最終順位が発表された。
エラヨウが1位、エラヨウが2位。
判決は下された。
僕の疑問は果たして解を得られた。順位に応じた賞品を提示せよ、さすれば統率者戦は制限されたヴィンテージと同様のものとなるだろう。
結局、どこまで行っても水と油さ。
あまり意味のない余談
・コナン・ザ・バーバリアンの映画(1982年版)のチケット:5.50ドル
・ポップコーン、ダイエットペプシ、タマレ(註)1箱:12.50ドル
・映画館で2人の客たちが片方のしゃべり声がデカいという理由でケンカを始めたのが偶然にもコナンが掘っ立て小屋で悪魔に姿を変えた魔女と戦うシーンとシンクロし、さらに片方が警備員に連れ去られながらも大声で不当な扱いだとわめいている瞬間がこれまた偶然にもコナンが魔女を炎の中に放り込むクライマックスとシンクロするのを目撃した瞬間:?ドル
(息継ぎ)
払った金だけの価値はあったよ。これは作り話じゃない。っていうか、でっちあげようったって自力じゃ思いつかないよ、こんな話。
美味しいパンケーキのおかげで全てを許せるか?
現地時間で朝の6時。もうこれで26時間ぶっ通しで起きていることになる。だけど僕の眼は冴えていた。僕は気分転換に通りの先にあるSteak ’N Shakeで朝食をとることにした。
ひどい味のコーヒーを2杯、なかなかのブルーベリーパンケーキを一山、さらに素晴らしく美味いハッシュドポテトをたいらげた僕は、フォーマット全体に対する疑念を再確認していた。
競技的なサポートは常に構築フォーマットの品質保証となってきた。それが無ければフォーマットはただしなびて死ぬしかない。
統率者戦に関しては、統率者戦の構築済みデッキのリリースによってウィザーズのサポートが与えられたかに見える。だけどその代償は? もしコアなプレイヤーがその行きつく先を望んでいないのなら、この環境が長く生き永らえることにどれほどの意味があるんだ?
僕らが遊んでいるフォーマットは本質的に競技的なプレイに向いておらず、またカード市場にもほとんど影響を与えないフォーマットだ。
ここ最近、
(註) 5-Colorフォーマット
5色それぞれのカードが一定枚数入っていないといけないという特殊な非公式フォーマット。なおMTG Wikiでは「5-Color Magic」という項目名で紹介されている。
旅のメモ(その2)
もし君が持ち運ぶ荷物にあまり気を遣わないタイプなら今後はそうしたほうがいい。
Patrickはポーカーチップを1ケース持っていった(金属製のケースに入っているようなアレだ)。帰りの便では、これはChadのトランクに収まることとなった。
空港の持ち物チェックに差し掛かったとき、Patrickが振り向いて僕に言った。「あれがチェックに引っ掛かるかどうか賭けないか?」
賭けに乗らなくて良かったよ。
あれ以来、Chadはゴム手袋の鳴る音(註)で見た目にも明らかに怯えるようになった。
(註) ゴム手袋の鳴る音
アメリカの空港の警備員と言えば、金属探知機とゴム手袋がトレードマークらしい。日本の空港だと手袋は布だった気がするけど。
スイートスポット
僕が思うに、ウィザーズは彼らが表立って認めている以上にこのゲームについて深く理解しているんじゃないだろうか(*3)。
彼らは統率者戦という環境に対するアプローチはまず構築済みを通してだった。それがフォーマットにもたらしたものは新しいカードとたくさんの新規参入者だけではない、というのが僕の個人的な見解だ。それは、このフォーマットに競技性を導入するよ、という通告だったのではないだろうか(*4)。
さて、土曜日、大した睡眠がとれなかっただけでなく最悪なことに通りの角にあるコンビニが実は酒屋だとPatrickが発見してしまった夜の次の日、僕らは統率者戦・シールド戦のイベントの為にコンベンションセンターへと向かっていた。
参考までにシールド戦の形式について説明しておこう。1つのポッドに4人のプレイヤーが参加し、それぞれに統率者戦の構築済みが1つずつ配られ、1人が勝ち残るまで試合を続ける。君が倒すことに成功したプレイヤー1人につき3つの基本セット2012のパックが進呈される。
僕ら3人は登録を済ませ、すぐ後ろにいた4人目のプレイヤーが記入し、4人で試合することとなった。僕は《擬態の原形質/The Mimeoplasm》と一緒に席についた。Patrickは《巨大なるカーリア/Kaalia of the Vast》と、Chadは《胞子の教祖、ゲイヴ/Ghave, Guru of Spores》と、そして4人目のプレイヤーは《寛大なるゼドルー/Zedruu the Greathearted》と一緒だった。
僕らはすぐに「ゆっくり楽しもうぜ」というスタンスに落ち着いた。地元ではマリガンに制限はつけていなかった。皆がゲームに参加できるように、というのが目的だ。4人目のプレイヤーもこれに賛同してくれた。彼の地元でもそれが一般的だと言っていた。
僕らのあいだにはすぐにジョークと笑いがあふれた。全員がゆっくりと自分の陣営を築きだした。僕は自分の手札を眺め、そのとき天啓のごとく気づいたんだ。
これだ! これが「競技的な統率者戦」なんだ!
それは例えば構築済みを手渡され他のプレイヤーも構築済みを持っているようなバランスのとれた環境で戦うことだ(*5)。
僕は普段のカジュアルな自分とはまるで反対のプレイングを楽しんでいる自分を見出した。
Patrickが5ターン目に《巨大なるカーリア/Kaalia of the Vast》を唱えようとするのに対し、僕は喜んで《呪文丸め/Spell Crumple》を見せつけた。《絞り取る悪魔/Extractor Demon》と《トロールの苦行者/Troll Ascetic》を墓地に落としたあと、僕は《擬態の原形質/The Mimeoplasm》を戦場に登場させ、無防備だったChadを僕は無慈悲に自身のジェネラルで殴りつけた。
妨害をかいくぐる普段とは違い、今回は僕が最初に場の脅威を演じていた。
この試合の最も素晴らしかった点は、僕以外も全員がゲームに参加できていたことだ。
何らかの理由で、食うか食われるかの非情なプレイングも十分に受け入れられていた。それでもなお皆が戦場に関与することが出来た。誰も虐げられているとは感じなかった。誰も不公平に扱われているとは感じなかった。
それはまるでシールド戦の最も良いところと統率者戦が組み合わさったようだった。誰もがよくまとまったデッキでデカブツや派手な呪文を唱えあいつつも、誰も1人遊びに興じてしまうようなこともなかった。
賞品なんて関係なかった。イベントが終了するその瞬間まで、間違いなくみんな賞品のことを忘れてたと思う。
素晴らしいバランスだった。カジュアルな統率者戦を大好きなプレイヤーたちにもぜひ一度構築済みで対戦してみて欲しい。どれほどそれを薦めたいか、ここでは言い尽くせないほどだ。
とはいえ、変わらないものもある。
僕は速攻で先陣を切り、戦場に真っ先にとんでもない脅威を叩きつけることに成功したが、僕の《擬態の原形質/The Mimeoplasm》は遠からず戦場から追放され、気づいたら僕は馬鹿デカい《胞子の教祖、ゲイヴ/Ghave, Guru of Spores》に殴られていた。
オーケイ、分かった。例の法則はまだ有効らしい。
2日間で5時間しか睡眠をとってないと細かいミスは増えるし、
まあ、しょうがないよね。
Indianapolisについて(その2)
レンタカーはいらない。実のところGen Conに関連した施設は全て4ブロック以内の範囲に収まっている。空港からダウンタウンまでは1人頭8ドルの往復シャトルバスが20分おきに出てる。
僕らがタクシー代に費やしたお金はチップを入れても40ドルほどだ。もしくは5杯分のLong Island Iced Teaだけの価値はある(*7)。
学んだ教訓について
帰りのデルタ航空のフライトで、機内後方のトイレとエンジンの間にある通路側の席に身を横たえながら、僕はiPodでIron Maidenを流しつつ鼻栓をした。そして週末のことを思い返していた。
■ 統率者戦はカジュアルなフォーマットだ
この点に疑いはない。カジュアルってそもそもなんだという議論はこの際脇に置いておく。このフォーマットは、相互作用を持ちつつ互いのアクションに付き合ってくれるデッキを全てのプレイヤーたちが持ち寄ったときに最高の輝きを見せる。
デッキの目的が「プレイする」ことであり「勝つため」ではないときに、だ。
もちろんガチの対戦や1対1のトーナメントが好きなプレイヤーがいることは理解している。だけど呪文を1つでも唱える前に試合から締め出されてしまうようなゲームを僕は到底楽しいとは思えないんだ。
それは僕にとって統率者戦じゃない。構築のスイスラウンドで起きたことに対する皆の反応を見る限り、僕はこの考えが多数派だと信じる。
■ 賞品とは9割の確率で純粋に混じりッ気なしに「悪」だ
こいつらのせいで僕らは楽しい時間を過ごせないんだ。もちろん代替的な勝利条件(例えばポイントシステム)やコントロールの効いた環境(例えば全員が構築済みデッキ)が用いられる場合はその限りじゃない。
■ ルールチームの言うことは大部分において正しい
驚いたのは、この長い週末の中で会話した統率者戦プレイヤーの中で「公式ルール」や「禁止カード」という単語について言及したプレイヤーがほぼゼロだったことだ。
何人かのプレイヤーは何枚かのカードの禁止に(もしくは何枚かのカードが禁止されていないことに)いらついていたし、いつだってルールを変えて欲しいとか変えて欲しくないとかいう声はある(君のことを言ってるんだよ、「Tuck」(註)!)。
何にせよ、ルールチームは本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思っている。見事な基本ルールを構築し、それを大多数へ提供し、さらにはこう付けくわえてくれた。「これはカジュアルなんだよ! 納得いかないなら好きに変えてくれ!」
素晴らしいバランスだ。
まだまだ禁止されていないパワーカードはあるし、プレイヤーたちにこれらから興味深い相互作用やシナジーを生み出そうとしている。同時に、これらに対抗する手段を生み出そうと苦心しているプレイヤーたちのおかげでバランスは保たれている。
20個の毒カウンターを乗せようと頑張るプレイヤーもいるし、通常ダメージに頼らないプレイヤーもいる。正直、誰かが無理やり制限を緩めようとしなくても統率者戦は十分に高い自由度を誇っているよ。
上手く働いてる。
だけど、お願いだ……エラヨウだけは勘弁してくれ!
こいつだけは生かしておいちゃいけない ( ゝω・)
(註) Tuck
ちょっと自信がないけど、どうやらジェネラルを2回目以降に唱える際に2コストずつ「課税される(Tax)」ルールを指しているらしい。
全然違った。コメントによる情報提供とネットでさらに検索して確認したところ、どうやらTuckルールというのは「ジェネラルをライブラリに戻せる」ルールらしい。
例えばネットの書き込みでも「We continue to believe that tuck (putting a general into the library) is an acceptable part of the format」とか「So you know those cards that tuck the general at the bottom of the library?」という表現が散見された。
Gen Conのまとめ
■ その1
時間やカレンダーのことなんて全部頭から消し去ること。インディアナポリスのコンベンションセンターは24時間年中無休で、時間に縛られずにイベントは開催されている。僕は日中に睡眠をとり、朝の4時に基本セット2012のドラフトに参加していた。
■ その2
Gen Conのイベントは事前に予約しておくこと。そしてチケットは前売り券を入手しておくこと。チケット売り場で2時間待たされてしまってイベントに参加できなかったというような「怖い話」をいくつも聞いたよ。
■ その3
TGGホールだけにとらわれず、他のイベントに無理やりにも目を向けること。他にも映画やコンサート(僕らはNinja Gaiden(註)のテーマを演奏しているドラマーたちを見かけた。
その後ろでは巨大なスクリーンで実際にゲームを猛スピードで遊んでるのが映し出されていた)、ボードゲームの広場、クイズ大会、名高い「True Dungeon」……さらにはロックバンドやDJ HeroやDance Centralが巨大なスクリーンに映し出されている「Rave」な部屋まであった。
そこでは照明が落とされ、ライトアップされたステージと大音響の音楽、ロックスターがエナジードリンクを配って歩いてた。なかなかのものだったよ。
■ その4
バトルテック(註)のシミュレーターを体験すること。このゲームのファンじゃなくても、密閉されたコクピットで半時間のあいだ巨大ロボットを操縦するのは結構楽しいもんだよ。さらにボーナスとして君がゲームを終えた直後に話す内容を聞いた人が向ける恐怖のまなざしがついてくる。例えば「奴の頭にブチ込んでやろうと思ったのに右腕を吹っ飛ばせただけだったよ!」みたいなセリフだ。
■ その5
コスプレを楽しむこと。ウィザーズのKen Nagle(註)のファイレクシア人風衣装はなかなかカッコ良かったし、他にも映画そのものなジャック・スパローとダースベーダーが広場の通路を歩いてるのを見るのも楽しい。ランジェリーそのものな衣装もね。
■ その6
盗難についての噂は全部本当だ。不必要なものはカードやバインダーを含め、全てホテルの部屋に置いてくること。持ち歩くものは片時も手から離さないこと。
最後に、僕にこれを書く機会をくれたSheldonに感謝!
-Cassidy McAuliffe
(註) Ninja Gaiden
英語版の「忍者龍剣伝」。アーケード版もある。発音は「ガイデン」ではなく「ゲェイデン」。
(註) バトルテック
バトルメックと呼ばれるメカを操るゲーム。元はシミュレーション・ボードゲームで、そこからビデオゲームやロールプレイングゲームなどに派生したもの。ここでは業務用の大型筐体ゲームを指している。
(註) Ken Nagle
フルネームはKenneth Nagle。モーニングタイドからデザイナーとして参加している。元々はシステム・ソフトウェア・エンジニア。
参照:http://wiki.mtgsalvation.com/article/Kenneth_Nagle
※ 訳が難しかったり自信がなかったりした(*1)~(*8)については別記事にする。理由はDiaryNoteの文字数制限に引っ掛かったから。
コメント
tuck rule というのは NFL のあるルールの俗称で、ネーミングはそれが元ねたなんじゃないかと思いますが、内容的にはつながりがなさそうですね(QB がパスモーション中にサックされた時にファンブルになるかパスインコンプリートになるかの基準を定めたルール)。