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COVID-19ワクチン開発に関する世界規制当局ワークショップ#2

ICMRA


2020年6月22日開催
 

SARS-CoV-2のパンデミックにより、これまでに全世界での感染者は1000万人を超えており、グローバルヘルスにおける尋常でない課題となっている。SARS-CoV-2ワクチン候補の開発に携わる一部の市販ワクチンのメーカーは、早期試験を完了しているか、又は進行中であり、それらのワクチンの有効性を実証するための試験となる第Ⅲ相臨床試験の試験計画について、各国規制当局との相談が始められている。
2020年6月22日のICMRAの電話会議は、EMAとUS FDAが共同で議長を務め、SARS-CoV-2ワクチン候補を用いた第Ⅲ相臨床試験に移行するための非臨床及び臨床データ要件について議論した。さらに、本会合の参加者は、被験者集団、エンドポイント、統計的考慮事項等、これらの臨床試験デザインの概念について議論した。

主なトピック:

  • 第Ⅲ相臨床試験に移行するために必要な非臨床及び臨床データ
  • 第Ⅲ相臨床試験の試験デザインに関する検討事項


以下に、参加した世界規制当局間で概ね合意した見解を示す。

第Ⅲ相臨床試験に移行するために必要な非臨床及び臨床データ
  • SARS-CoV-2ワクチンと既存の臨床試験成績に応じて、第Ⅲ相臨床試験に移行するために、非臨床安全性試験が必要になる場合がある。
  • SARS-CoV-2ワクチン候補を臨床的に適切な用量で接種する動物モデルの試験から得られた、ワクチンにより誘導される免疫応答の特性解析に関する非臨床データが必要である。これらは、呼吸器疾患増強(enhanced respiratory disease, ERD)への転帰の可能性に関する免疫マーカーの評価、たとえば、抗体反応全体に対する機能的免疫反応(中和抗体等)及びTh1/Th2バランスの評価を含む必要がある。
  • ERDの可能性を評価するためのヒト以外の霊長類を使用したワクチン接種後の感染試験データは、特に、より先進的なSARS-CoV-2ワクチン候補においては、第Ⅲ相臨床試験開始時に得られていることが望ましいが、得られていない場合がある。SARS-CoV-2ワクチンにより誘発されるERDの可能性を評価するためにこれまでに実施された動物モデルの試験から得られた予備データからは、ERDのリスクの根拠は示されていないが、この問題に関連する追加のデータが近い将来に利用できると予想される。
  • 本会合参加者は、総論として、第Ⅲ相臨床試験への移行のためのヒト以外の霊長類から得られたワクチン接種後の感染試験データの価値を認めた。第Ⅲ相臨床試験への移行は、ケースバイケースで決定され、特定のSARS-CoV-2ワクチンの構成成分と、当該構成成分について利用可能な非臨床及び臨床データの完全性に依存する。他の感染動物モデルによるチャレンジ試験(ハムスター、フェレット、トランスジェニックマウス等)のデータは、貴重な裏付けとなる根拠となるかもしれない。
  • 各ワクチン候補の一般的な安全性と免疫原性を確認するために、第Ⅲ相臨床試験の開始の前に、後期試験に含める各用量と年齢層における安全性と免疫原性の適切な特性評価を行う必要がある。
  • ワクチンにより誘導される免疫応答を特徴付ける臨床データには、ERDへの転帰の可能性を示唆する免疫マーカーの評価、すなわち、抗体反応全体に対する機能的免疫応答(中和抗体)及びTh1/Th2バランスの評価が含まれる。高齢の被験者(例: 55歳以上の被験者)が第Ⅲ相臨床試験に含まれている場合、これらの集団から得られた予備的な安全性と免疫原性のデータも必要である。
第Ⅲ相臨床試験の試験デザインに関する留意事項
  • ワクチンの有効性を実証する第Ⅲ相臨床試験は、重要な対象集団に関連するデータを得るために、基礎疾患を有する者も含め、数千人の被験者を登録する必要がある。
  • SARS-CoV-2未感染者でのワクチンの安全性及び有効性を確立することが重要である。しかし、承認後にはCOVID-19ワクチン投与に際し、ワクチン接種前の感染歴のスクリーニングは行われないため、SARS-CoV-2に以前に感染した者における安全性及び有効性データも収集する必要がある。有効性の主要な解析は、SARS-CoV-2未感染者について実施することで合意された。
  • 第Ⅲ相臨床試験は、登録されたサブグループ全体でワクチンの有効性を評価する検出力を持つ必要がある。一方で、年齢等のサブグループごとにワクチンの有効性を示す検出力は求めないことが認識された。
  • 第Ⅲ相臨床試験では、適応となる全集団に対しワクチンが安全で有効であるという信頼性を高めるため、人種や民族等の多様な集団を含めるように努める必要がある。
  • 第Ⅲ相臨床試験では、合併症のある者を含む高齢者(55歳以上等)を含めることが重要である。この集団の組入れは、それぞれのSARS-CoV-2ワクチンを用いた第Ⅰ相及び第Ⅱ相臨床試験に参加した健康な若年成人及び健康な高齢者から得られた安全性及び免疫原性データに基づき進められる必要がある。本会合の参加者は、75歳以上の被験者の安全性及び有効性を評価することの妥当性を認識した。
  • 本会合の参加者は、小児集団でのCOVID-19の疫学から、小児におけるSARS-CoV-2ワクチンの安全性及び有効性が成人とは異なる可能性があることから、ワクチンメーカーがSARS-CoV-2ワクチンの小児における安全性及び有効性の評価を計画することは重要であることに合意した。SARS-CoV-2ワクチンの最初の承認は、おそらく成人が対象となると認識された。
  • 治験実施者は、妊娠中のデータを収集するための計画を提供し、第Ⅲ相臨床試験において、a)妊婦、b)積極的な避妊を行わない妊娠可能な女性を適格性基準として検討する必要がある。
  • 妊婦を臨床試験に含めるかどうかの決定はケースバイケースであり、当該ワクチン構成成分又は同じプラットフォームに基づく異なるワクチンを用いて行われた生殖発生毒性試験から得られたデータを含むワクチン構成成分について入手可能なデータの全体に基づくこととなる。初期の臨床試験から得られた妊娠可能な女性における安全性及び免疫原性の良好なデータも必要である。
  • 第Ⅲ相臨床試験は、ランダム化、二重盲検、プラセボ又は対照薬を対照とする比較試験とする必要がある。その他の第Ⅲ相臨床試験については、それぞれの規制当局と話し合う必要がある。
  • アダプティブデザインを用いた第Ⅲ相臨床試験では、ワクチン候補や投与レジメンの追加や削除等の基準を予め規定する必要がある。
  • 被験者におけるCOVID-19の転帰のフォローアップは、安全性、免疫反応の持続期間及び抗体価の低下による疾患増強のリスクを評価するのに十分な期間(すなわち、ワクチン接種後1年又はそれ以上)である必要がある。
  • 第Ⅲ相臨床試験における評価項目は、異なるSARS-CoV-2ワクチン候補のワクチン効果及び安全性を比較できるように、試験間でできるだけ標準化する必要がある。
  • 主要評価項目は、重症度を問わず、検査で確定されたCOVID-19とする必要がある。その他の重要な評価項目には、ウイルス学的方法又はワクチンに含まれていないSARS-CoV-2抗原に対する抗体を評価する血清学的方法により確認されるSARS-CoV-2感染、及び入院、人工呼吸器導入又は死亡による疾患の重症度が挙げられる。
  • 本会合参加者は、SARS-CoV-2ワクチンが十分な有効性を有することを保証するための厳格な成功基準を、最初の臨床的有効性試験で特定する必要があることに同意した。これらには、望まれるワクチン効果を反映した有効性の点推定値と、有効性の主要評価項目の点推定値に対して適切な有意水準の信頼区間の下限が設定される必要がある。これらは、中間及び最終の有効性解析にも適用される。一般に、効果よりも害を及ぼす可能性のある有効性の低いワクチンの承認を除外する成功基準について、より保守的なスタンスが支持されることから、試験は、ワクチンの有効性をできるだけ確実に推定するために十分な検出力を持たせるべきと合意された。ただし、下限として用いる特定の数値とワクチン効果の点推定値については、この段階では合意されなかった。また、特定の事前に規定された有効性の下限をまたぐ有効性推定値について、パンデミックの疫学的な進展等の要因を踏まえて、有効性を裏付ける他のデータがある場合には、肯定的なベネフィット・リスクの結論が得られる可能性を排除するものではないことも考慮された。
  • 第Ⅲ相臨床試験には、疾患増強及び無効のリスクを評価するための中間解析も含める必要がある。
  • 第Ⅲ相臨床試験の一部としての安全性評価(計画に基づいて観察された局所的及び全身性の有害事象、自発報告による有害事象、重篤又は他の医学的に処置された有害事象を含む)は、安全データベースのサイズ及びフォローアップ期間と同様に、他の予防ワクチンと同様の範囲とする必要がある。プロトコールには、ワクチンにより誘発される疾患増強の可能性の徴候に基づく試験の中止又は中断に関する基準を事前に規定する必要がある。
 


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