【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話 作:SunGenuin(佐藤)
次からは主人公語り手になります。
ウマ娘は最高だし架空馬転生二次創作も最高だなって気持ちで書いてます。
2021/07/02 追記
CMパロの部分を微妙に修正しました。
プロローグ
横を見ても前を見てもどこを見てもSS産駒がひしめく'02年初夏。
日本競馬界は海外産馬を取込み、より優れた競走馬の産出に熱中していた。
「産まれたか?」
あるひとつの馬房の前を、数人の男たちが取り囲んでいた。
スーツ姿の男がその集団に声をかけると、内側から一人が顔を出し、首を振った。
「まだか」
「予定より長引いています」
「長引いているも何も、もう7月に入っちまったぞ」
馬の出産予定時期は1月から始まり、3月から4月がピークとなる。
早生まれの馬ほど、2歳戦線での仕上がりがいいことから、近年は長くても5月いっぱいの誕生馬が主流だ。
この牧場でも、2歳戦線から活躍する馬を輩出するために、種付け時期から妊娠期間をもとに出産予定を見積もっていた。
それでいうと、男たちが取り囲んでいる牝馬は、出産予定からすでに2か月近くが過ぎようとしていた。
腹は出産を控えた牝馬そのもので、受胎していないなんてことはないだろう。
スーツ姿の男も、周りを囲んでいた作業着姿の男たち──厩務員たちも、牝馬が産気づく素振りさえ見せないことに焦りを感じていた。
「どうなっちまうんだ、このまま」
海外まで広げれば夏生まれの馬ももちろんいる。
しかし、それは種付け時期の兼ね合いからそうなるものであって、出産予定から2か月以上経っての夏は、男たちには想定外の出来事である。
この牝馬はこれが初産だったが、全姉の馬はすでに数頭産んでおり、いずれも出産予定を1週ほど過ぎることはあっても、ほとんど誤差の範囲でのことだった。
すわ、このまま産み切れず母馬となるはずだったこの牝馬ごと死んでしまうのではないか。
男たちの間にピン、と緊張の糸が張った。
まさに、その時だった。
「ア!」
「エッ、出てる、出てる出てる!」
今まで一つもそのそぶりを見せなかった牝馬が突然、ふるふると身体を震わせた。
産気づいたのだ。
ようやくだ、と一安心する間もなく、2か月以上も予定を過ぎた牝馬の出産に気を抜くわけにはいかない。
男たちはアレを持ってこい、それをどかせと、ごうごうと怒鳴りあいながらも、力む牝馬のそばを離れなかった。
「あと少しだ、がんばれ、がんばれよ」
「出た!出たぞお!」
「よくやったピュアレディ!えらい、頑張った!」
「息してるか?」
「してる、身体も震えてるし……よしよしその調子だぞ、立て!立ってくれ!」
初産にも関わらず牝馬──ピュアレディは落ち着いていて、思った以上に小気味よく仔馬を産んだ。
ぽとん、と藁の上に横たわる仔馬は、産みの粘液に濡れもがきながらも、男たちの声にこたえるようにゆっくりと立ち上がった。
「立った!ピュアレディの仔が立ったぞ!」
ひときわ声の大きな男がそう叫ぶと、馬房前の男たちだけでなく、牧場全体からワッと歓声があがった。
蝉の鳴き声が近い、7月2日のことだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
THE LEGEND
誰もが目を疑った
本当かと咽び泣いた
2006年 フランス 凱旋門賞
ハナを譲らない
影も踏ませない
ターフを駆け抜ける白い軌跡
美貌の天馬
── サンジェニュイン
「太陽だっ!太陽がぐんぐん、ぐんぐんロンシャンのターフを駈け昇る!」
「見よフランス、世界、これが、これが諦めないということだ──……!」
正真正銘 お前が太陽だ
◇◆◇◆◇◆◇◆
きらめくステージに、一人のウマ娘が立っていた。
伏せられた顔に浮かべられた表情は笑顔か、それとも感動の涙か。
「アンコール!アンコール!」
観衆の声にこたえるように、娘は顔を上げた。
「サンジェニュイン、歌います!」
そのウマ娘の名前は、サンジェニュイン。
ヒトは彼女を「太陽のウマ娘」あるいは──「美貌のウマ娘」と呼んだ。
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