２人目の駄天使に勝ち、３人目のフレシアの蟲惑魔が次の相手だ。

しかしフレシアの蟲惑魔……フレシアのデッキなぁ？

蟲惑魔なのは確定だとして、他をどうしているのか予想できない。

なにせ俺が関係しているデッキ、確実に予想外のカードが入っているだろう。

　というか、予想外のカードが入っていない可能性は０だろ。

さっきまでの２人、プディンセスに駄天使のどちらも構成が変だったし。

まぁ、駄天使はなんとか納得できるがプディンセスはどう考えても……

「おーい、そろそろ使うデッキは決まったか？」

「あー……考え事してた、とりあえず決めたぞ」

「…………」

　フレシアが何を考えているのか全く判らない無表情で俺を見ている。

なんとなくだが、早くしろと催促しているように感じるのは気のせいではないだろう。

というかこいつ話せるのか？　まだ１回も声を聞いてないぞ。

「おい俺、こいつ話せるのか？」

「話せるぞ、普段は話さないけど

まぁ決闘が始まったらちゃんと宣言とかするから大丈夫だ」

　ならいいんだが、若干不安だ。

無口な奴となれば……あいつも無口だったから多少慣れてるしな。

「では始めようか」

「…………」

　フレシアは何も言わず、頷くだけだった。

色々と個性が強いこいつらだったが、こいつはどんな個性を持っているのやら……

「決闘」「……でゅえる」

　声小せぇよ！　ギリギリ聞こえる程度じゃねぇか！

本当に大丈夫なのか、こいつ？

「先行は俺だ

カードを５枚伏せ、ターンエンドだ」

　初手全伏せ、よく有る事だよな？

モンスターをドローできないのなら当然だしな。

「…………わたしのたーん、どろー」

　随分と舌足らずな話し方だな。

前の２人の印象が強いから違和感が凄い。

大人しい性格なのだろうか？

「カズーラ……召喚」

　現れたのはカズーラの蟲惑魔。

攻撃力８００を攻撃表示？　守備表示ではないのだから理由が有る……というかそれしか狙いは無いな。

というか、やはりデッキの基本は【蟲惑魔】なのだろう。

「……２枚伏せて、たーんえんど」

「エンドフェイズ時に罠カードを発動する

バージェストマ・オレノイデス、場の魔法か罠を１枚対象として発動する

俺はお前が伏せたカードを１枚選択し、そのカードを破壊だ」

　破壊されたのは底なし落とし穴、相手が召喚や特殊召喚した時に発動できるカード。

そのモンスターを裏側守備表示にし、しかもそのモンスターの表示形式の変更を封じるカードだ。

面倒なカードを破壊できたのは助かったな。

「…………むぅ」

「俺のターン、ドロー

罠カード、バージェストマ・ピカイアを発動する

手札のバージェストマを１枚捨て、デッキからカードを２枚ドローする

このカードに何かチェーン発動は有るか？」

　フレシアは首を横に振り、何も無いと意思表示をする。

蟲惑魔だし、伏せられているカードはやはり落とし穴系のカードだろう。

「ならこの効果にチェーンし、墓地のオレノイデスの効果を発動する

罠カードが発動した時、墓地のこのカードの効果が発動できる

このカードは通常モンスターとなり、俺のモンスターゾーンに特殊召喚する

ただし、この効果で特殊召喚されたオレノイデスは場から離れた場合に除外される

更にチェーン発動、バージェストマ・マーレラを発動する

デッキから罠カードを１枚墓地へ送る

まだ終わらん、更に罠カードを発動してチェーン・ヒーリングを発動する

俺のライフを５００回復する効果だ

だがこのカードはチェーン２か３で発動した場合はデッキに加え、チェーン４以降の場合は手札に戻る

チェーンの逆順処理により、チェーン・ヒーリングの効果でライフを５００回復し、チェーン・ヒーリングは俺の手札に戻る

チェーン３のバージェストマ・マーレラの効果でデッキから罠カードであるバージェストマ・エルドニアを墓地へ送る

そしてチェーン２の墓地で発動したバージェストマ・オレノイデスの効果により、バージェストマ・オレノイデスを攻撃表示で特殊召喚

最後にチェーン１のバージェストマ・ピカイアの効果で手札のバージェストマ・レアンコイリアを捨て、２枚ドローだ」

　今回の俺のデッキは見ての通り、【バージェストマ】だ。

【チェーンバーン】のように見えるのが、そういうカードは入っていない。

というかメインデッキにモンスターは０枚だ。

　うーん……それにしても、バージェストマって見た目グロいな。

気持ち悪いというかなんというか、あまり見たいモンスターではないな。

　事実、周りで見ているマドルチェ達は気持ち悪さで逃げ出している奴も数名。

ゴーストリック達はあまり気にならないらしい、元々ゾンビとかそういうのが多いからだろうか？

ちなみにフレシア以外の蟲惑魔達も気にならないようだ、ボーッと俺達の決闘を見ている。

　【バージェストマ】を選んだ理由は簡単だ。

バージェストマの特性上、モンスターとして特殊召喚されるのはチェーン２以降のみ。

チェーン１で必ず何からしらの処理が挟まれる都合上、タイミングを逃すので基本的に落とし穴系のカードは発動できない。

　例外は蟲惑の落とし穴、串刺しの落とし穴ぐらいだろうか？

蟲惑の落とし穴は特殊召喚された相手モンスターが効果を発動した時、その効果を無効にして破壊する効果だ。

しかしそもそもバージェストマのモンスターとして特殊召喚されたモンスターは効果を持っていないので無意味。

串刺しの落とし穴では破壊されるが、それも何度も発動できるものではないだろう。

「…………チッ」

　おいこら俺よ、このフレシア舌打ちしたぞ。

しかも堂々、誰にでも見えるようにしやがった。

まぁ舌打ちしたい気持ちは解る、完全メタデッキだから仕方ないな。

「バトルフェイズに入る

バージェストマ・オレノイデスでカズーラの蟲惑魔に攻撃する」

　オレノイデスの尾……の、触手でカズーラを突き刺した。

カズーラは段々と弱っていき、倒れて消えていった。

多分、毒か何かだろうか？　普通に怖いんだが。

　バージェストマの攻撃力は全て共通で１２００だ。

カズーラの攻撃力は８００、つまり４００のダメージでフレシアの残りライフは７６００になる。

「カードを３枚伏せ、ターンエンドだ」

「…………どろー

ランカの蟲惑魔を召喚、効果発動

でっきから蟲惑魔を１体、手札に加える

……ティオの蟲惑魔を手札に加える」

　蟲惑魔をサーチする効果を持つモンスターか。

攻撃力も１５００と、俺のバージェストマの攻撃力を上回っている。

しかもサーチしたティオの攻撃力は１７００、攻撃力の差は大きくないがバージェストマからすれば十分高い。

「…………ランカ、攻撃」

「ならダメージステップ時に罠カード、バージェストマ・エルドニアを発動する

場に存在する表側表示モンスター１体の攻撃力と守備力をターン終了時まで５００上昇させる

俺が選択するモンスターはバージェストマ・オレノイデスだ

ダメージステップ時に発動した罠カードには墓地のバージェストマの効果を発動できない

つまりそのまま戦闘だ」

　エルドニアの上にオレノイデスが乗り、エルドニアを蹴ろうと走ってきたランカに突撃する。

ランカは急停止して逃げようとするも、残念ながらエルドニアの方が早くランカに衝突した。

ランカは吹っ飛ばされ、地面に激突して破壊される。

ちなみにオレノイデスはエルドニアとランカが衝突する寸前に逃げ出していた。

　それはともかく、攻撃力が５００上昇したエルドニアの攻撃力は１７００だ。

攻撃力１５００のランカでは勝てず、２００のダメージになる。

「…………２枚伏せて、たーんえんど」

　最初のターンに伏せたカードは十中八九落とし穴系のカードだろう。

しかし更に２枚も伏せる？　蟲惑魔の伏せカードは大体落とし穴系カードのはずだ。

バージェストマ相手にそんなに伏せては邪魔になるだけの可能性は高いと思うが……

「そのエンドフェイズに永続罠、王宮の鉄壁を発動する

このカードが存在している限り、お互いにカードを除外する事ができない

そしてこの効果にチェーンし、墓地のバージェストマ・エルドニアの効果により特殊召喚できる

更にこの効果にチェーン発動、チェーン・ヒーリングだ

効果は先ほど説明した通り、今はチェーン３なのでデッキに戻る効果となる

そしてこの効果にチェーン発動され、墓地のバージェストマ・ピカイアの効果で特殊召喚をする

次にチェーン発動、積み上げる幸福を発動

チェーン４以降に発動できる、現在はチェーン５だな

このカードの効果でデッキからカードを２枚ドローする

更にこの積み上げる幸福にチェーンして墓地のバージェストマ・マーレラを効果で特殊召喚だ

チェーンの逆順処理をし、バージェストマ・マーレラを特殊召喚し、積み上げる幸福の効果で２枚ドロー

バージェストマ・ピカイアを特殊召喚し、チェーン・ヒーリングの効果でライフを５００回復してチェーン・ヒーリングはデッキに戻る

バージェストマ・エルドニアを特殊召喚し、王宮の鉄壁が最後に場に残る」

　俺の墓地にはまだもう１体のエルドニアが残っている。

しかし残念ながら俺の場の罠カードは品切れ、残念ながらこれ以上の特殊召喚はできないようだ。

「そして俺のターンだ、ドロー

カードを２枚伏せて永続魔法、水舞台を発動する

このカードが存在している限り、水属性モンスターは水属性以外のモンスターとの戦闘では破壊されない

他にも効果は有るが、全く使えないので気にするな

そしてバトルフェイズ、バージェストマ４体で直接攻撃だ」

「…………だめ、永続罠量子猫を発動

種族と属性を１つずつ……悪魔族・闇属性を宣言

そしてこのカードは宣言した種族と属性を持つ通常モンスターとして特殊召喚する

量子猫を守備表示で特殊召喚」

　量子猫の守備力は２２００、バージェストマでは勝てない。

しかし、何故悪魔族の闇属性なんだ？

蟲惑魔とは何も関係が無さそうなのだが……

「では攻撃を中断、そのままエンドフェイズだ」

「…………どろー、永続罠、ナチュルの神星樹を発動する」

「その罠カードにチェーンし、墓地に存在する２体目のエルドニアの効果を発動

罠カードが発動したので墓地から特殊召喚する」

「…………ちぇーん、ナチュル・ロックの効果

罠カードが発動した時、でっきから１枚墓地へ送って発動

手札から特殊召喚する

（…………異次元の落とし穴、使えないし問題無し）」

「ならチェーン４でチェーン・ブラストを発動する

効果はチェーン・ヒーリングの５００のライフ回復が、相手に５００のダメージに変わっただけだ

チェーンの逆順処理により、最初にチェーン・ブラストの効果で５００のダメージを受けてもらおう

そしてチェーン・ブラストはチェーン４で発動したので手札に戻る」

「…………チッ

ナチュル・ロックを特殊召喚」

「そしてエルドニアが特殊召喚される」

「…………ナチュルの神星樹は効果を発動できないから、表になって発動されただけ」

　それにしても、ナチュルか……確かに蟲惑魔と種族と属性は共通しているな。

もしかしてナチュルのチューナーも入っている……だろうな。

となると、ナチュルのSモンスターも有るな、ナチュル・パルキオンを出されたらかなり辛い。

　幸い、まだチューナーは無いしLVも全く合っていないのでまだ当分は出ないだろう。

となると更に疑問が出てくる。

　何故フレシアは量子猫を悪魔族・闇属性で特殊召喚したんだ？

どう考えても種族も属性も全く合っていないが……

「…………ちゅーなー、ハネワタを召喚」

　ハネワタ？　また変なモンスターを……

モンスターのチョイスがごちゃごちゃだ。

何故そのモンスターを選んだのかが解らん。

　そして合計LVは４・５・８となっている。

５だとナチュル・ビーストだが、量子猫の属性は闇を選ばれている。

ナチュル・ビーストのS召喚には地属性のチューナーと地属性のチューナー以外となっている。

しかも既に水舞台は発動している、発動を無効にするナチュル・ビーストでは少し遅い。

　となるとある程度汎用性の高いLV８のSモンスターか？

しかしそんなのを俺と一緒に過ごしている奴が使うとはあまり思えないが……

「…………LV４の量子猫とLV３のナチュル・ロックにLV１のハネワタをちゅーにんぐ

その翼は落とし穴に叩き落とす為、その風は落とし穴に押し込む為

シンクロ召喚、LV８……スターダスト・ドラゴン」

　おい口上、それどうなんだ？

仮にもアニメ主人公のカードなんだが……別にいいけどさ。

「…………エルドニアに攻撃」

　スターダスト・ドラゴンは足でエルドニアを踏みつけ、更に踏みつける。

最後に翼で鬱陶しい物を振り払うかのようにエルドニアを吹っ飛ばした。

お前の攻撃ってアニメじゃソニックブームというか風のブレスというか、そういうのじゃなかったっけ？

　それはともかく、攻撃力差は１３００と大きい。

しかし俺はチェーン・ヒーリングで回復しているので残りライフは７７００とまだまだ残ってるな。

「だがしかし、水舞台の効果によってエルドニアは破壊されない」

「…………たーんえんど」

「俺のターン、ドロー

カードを２枚伏せ、全モンスターを守備表示へ変更してターンエンドだ」

　実はこのデッキ、スターダスト・ドラゴンはかなりの天敵。

除去カードも多少入っているが、効果破壊ばかりなのでかなり厳しい。

強化カードも入っているものの、残念ながらドローできていない。

とはいえ戦闘で破壊できないバージェストマだ、フレシアの方も処理に困っているだろう。

「…………どろー

ティオの蟲惑魔を召喚、効果……召喚時に墓地の蟲惑魔を１体表側守備表示で特殊召喚できる

カズーラの蟲惑魔を、墓地から特殊召喚

…………ナチュルの神星樹の効果を発動

１たーんに１度、地属性植物族をりりーす、デッキからLV４以下の地属性昆虫族を特殊召喚

カズーラをりりーす、トリオンの蟲惑魔を特殊召喚、効果発動

トリオンが特殊召喚に成功した場合、相手の魔法か罠を１枚破壊する

水舞台を……破壊」

　しまった、発動したまま何もしなかったから神星樹を完全に忘れてた。

バージェストマは守備力０、つまりほぼ全てのモンスターに倒されてしまう。

「…………スターダスト・ドラゴン、ティオ、トリオンで攻撃」

　エルドニア、マーレラ、ピカイアを破壊された。

スターダスト・ドラゴンはエルドニアを今度こそ踏み潰した。

マーレラはトリオンに蹴っ飛ばされてどこかへ飛んでいった。

ピカイアはティオに長い体を掴まれ、ジャイアントスイングで投げ飛ばされた。

フレシアの召喚したモンスターはどいつもこいつもアグレッシブだな。

「…………たーんえんど」

「俺のターン、ドロー

ふむ……よし、罠カード、バージェストマ・ピカイアを発動する

手札のバージェストマ・ディノミクスを墓地へ送り、デッキから２枚ドローする

そしてその効果にチェーンし、墓地のバージェストマ・エルドニアを墓地より復活

それにチェーンして貪欲な瓶を発動、墓地の貪欲な瓶以外のカードを５枚選択する

俺が選択するのはバージェストマ・ピカイア、バージェストマ・マーレラ、バージェストマ・レアンコイリア、水舞台、積み上げる幸福の５枚だ

そしてそれらのカードをデッキに戻し、１枚ドローする

ここでチェーンでバージェストマを特殊召喚したいのだが、貪欲な瓶は選択したカードが墓地から無くなると効果が発動できなくなる

更に俺の墓地には選択した５枚のカードとエルドニアしか残っていないのでな

よって別のカードでチェーン、チェーン・ブラストをチェーン４で発動する

チェーンの逆順処理により、チェーン・ブラストの効果で５００のダメージを与えて手札に戻る

貪欲な瓶の効果で選択したカードをデッキに戻し、１枚ドロー

墓地のバージェストマ・エルドニアを守備表示で特殊召喚し、バージェストマ・ピカイアの効果で手札のバージェストマ・ディノミクスを捨てて２枚ドローだ」

　これで俺の手札は４枚になった。

チェーン・ブラストとドローしたカード３枚だ。

ピカイアの発動条件であるバージェストマをドローできて助かったな。

　それにしても今ドローした２枚のカード……エルドニアは攻撃表示にしていればよかった。

とはいえ結果論だ、そこは諦めるしかない。

「俺は前のターンで生き残ったエルドニアとオレノイデスを攻撃表示に変更

フィールド魔法、湿地草原を発動

このカードが存在する限り、場の水族・水属性・LV２以下の全ての条件を満たしているモンスターの攻撃力が１２００上昇する

バージェストマのLVは２、よって攻撃力が１２００上昇だ」

「…………え？」

　これで俺のバージェストマの攻撃力は２４００となった。

スターダスト・ドラゴン以外のモンスターの攻撃力を上回った。

「カードを２枚伏せ、永続魔法、弱者の意地を発動する

自分の手札が０枚の時、自分のLV２以下のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊して墓地へ送った時に俺は２枚ドローする

バトルだ、バージェストマ・オレノイデスでティオの蟲惑魔に、バージェストマ・エルドニアでトリオンの蟲惑魔に攻撃」

　ティオの攻撃力は１７００、トリオンの攻撃力は１６００。

バージェストマ達の攻撃力は２４００、７００と８００のダメージで合計１５００のダメージだな。

これでフレシアの残りライフは４９００、もうすぐ半分になるな。

「そしてLV２のバージェストマ達で相手モンスターを破壊し、墓地へ送った

これによって弱者の意地の効果が発動し、俺は２枚ドローする

カードを１枚伏せ、ターンエンドだ」

「…………どろー

魔法、貪欲で無欲な壺を発動

自分の墓地の種族が違うモンスター３体を選んででっきに戻して２枚どろー

だけどバトルフェイズはできない

…………植物族のティオの蟲惑魔、昆虫族のランカの蟲惑魔、岩石族のナチュル・ロックをでっきに

そして２枚どろー……手札から、バスター・ビーストを捨てて効果発動

でっきからバスター・モードを１枚手札に加える」

「は？　バスター・モード？

バスター……バスター・モードだと！？」

　いくらなんでも予想外過ぎる！　何故そのカードを入れた！

予想としては、相手の妨害を全力でして動けなくなった相手をジワジワと……辺りか？

だからナチュルが入っている、ということだろうか？

「…………魔法、バスター・テレポートを発動

手札の／バスターって名前のモンスターを１体でっきに戻して２枚どろーする

手札のスターダスト・ドラゴン／バスターをでっきに戻して２枚どろー」

　これは拙い、拙いのだが……

というか攻撃力３０００のスターダスト・ドラゴン／バスターとかかなり厳しいんだが。

「…………モンスターを伏せて、２枚伏せてたーんえんど」

　手札を全て伏せたか。

伏せカードを破壊したいんだが、スターダスト・ドラゴンが残っている状態じゃ厳しい。

しかし手が無いわけじゃない。

「俺のターン、ドロー

罠カード、バージェストマ・オレノイデスを発動する

場の魔法か罠カードを１枚選択し、そのカードを破壊する

俺はお前の場に存在する伏せカードを１枚破壊する」

「…………罠発動、偽物のわな

自分の罠を破壊する魔法・罠・モンスター効果を相手が発動した時に発動できる

このカードが代わりに破壊されて、選ばれたかーどは破壊されない

ただし、選ばれたかーどはめくって確認しないといけない

破壊されそうだったのは……バスター・モード、罠かーどだから偽物のわなが代わりに破壊される」

　当てたが、躱されたか。

さすがに偽物のわなは予想外だ、しかし落とし穴ばかりで罠カードが多いと考えれば変ではないか。

「ならその偽物のわなにチェーンし、墓地のバージェストマ・ディノミクスを特殊召喚する

そしてその効果に更にチェーンし、チェーン・ブラストを発動だ

チェーン４で発動し、相手に５００のダメージを与えて手札に戻す

更にチェーンし、バージェストマ・ピカイアを墓地から特殊召喚する

チェーンの逆順処理でバージェストマ・ピカイアを特殊召喚し、チェーン・ブラストの効果を発動してダメージ、そして手札に戻す

次にバージェストマ・ディノミクスを特殊召喚する

偽物のわなの効果によってバージェストマ・オレノイデスの効果でバスター・モードは破壊できない」

　これでチェーンは終了。

フレシアの場のカードはスターダスト・ドラゴンとセットモンスター。

伏せカードのバスター・モードと最初のターンに伏せたまま使われていないカード、そしてナチュルの神星樹の３枚。

そして手札は無し……あの伏せモンスター次第だが、勝てる……かな？

「…………スターダスト・ドラゴンをりりーすして、バスター・モードを発動」

「随分と唐突だなおい！」

　先に使われてしまったか、俺としてはこっちのタイミングで無理やり発動させたかったんだが……

仕方ない、これでなんとかするしかないな。

「速攻魔法、突撃指令を手札から発動する

自分の場に存在する通常モンスターを１体選択、俺はバージェストマ・ディノミクスを選択

発動後、選択したモンスターをリリースする事で相手の場のモンスター１体を破壊する

俺が選択するモンスターはお前のセットモンスターだ」

　破壊されたモンスターは……マシュマロンだった。

また天使族モンスターか、本当にどんな狙いでそんなカードを入れて……ん？

そういえば量子の猫で選んだ種族は悪魔族で属性が闇属性だったな。

そしてハネワタとマシュマロン……こいつ、天魔神インヴィシルをデッキに入れてやがるな！

　天魔神インヴィシルはアドバンス召喚する時のリリースしたモンスターの種族と属性で効果を得るモンスター。

天使族・光属性の場合はインヴィシルが存在する限り魔法カードの効果は無効になる。

悪魔族・闇属性の場合はインヴィシルが存在する限り罠カードの効果は無効になる。

　かなりエグい構築というのは理解した。

フレシアのデッキはアトラの蟲惑魔の効果で自分の通常罠の発動と効果を無効にされないようにしつつ、インヴィシルで相手の罠を一方的に封じる。

出せなかった場合はナチュル・パルキオンを使ったりして相手の罠を封じる。

魔法はナチュル・ビーストで封じ、モンスター効果封じではナチュル・ランドオルスもEXデッキに入ってるかな？

　更に強力な拘束として、スターダスト・ドラゴン／バスターでダメ押し……と。

モンスターを倒そうにも、様々な落とし穴で消耗戦になったら厳しい状況になるだろう。

しかも蟲惑魔には落とし穴を再利用する効果を持つモンスターも入っている。

パルキオン、ビースト、インヴィシルを倒そうと強力なモンスターを出そうにも何度も止められる。

そして相手の手が尽きた所で総攻撃を仕掛けて潰す……そんな感じのデッキなのだろう。

　なのだが、俺がバージェストマなんてデッキを使ったから本領を全く発揮できない状態だ。

モンスターをそもそも入れていない時点で……【蟲惑魔】としては致命傷だろう。

一応、バージェストマ・アノマロカリスやバージェストマ・オパビニアというXモンスターも入れてるんだけどな。

落とし穴系のカードを使われる可能性が高いから使わないだけで。

「…………スターダスト・ドラゴン／バスター、でっきから特殊召喚」

　色々と考えたが、どっちにしても面倒なモンスターだ。

しかしもう……フレシアって詰んでるんだよな。

スターダスト・ドラゴン／バスターのみ、マシュマロンも破壊したから壁は無い。

この状況でスターダスト・ドラゴン／バスターを倒せるカードを使ったら？

「罠カード、バージェストマ・マーレラを発動

デッキから罠カードを１枚墓地へ送る、スターダスト・ドラゴン／バスターの効果は使うか？」

　フレシアは首を横に振り否定。

もし使えば当然ながら自分の場がガラ空きになるのだから当然だ。

「ではバージェストマ・マーレラの効果でデッキからバージェストマ・カナディアを墓地へ送る

そしてこの効果にチェーンし、先ほど突撃指令でリリースしたバージェスト・マディノミクスを特殊召喚する」

　王宮の鉄壁の効果でバージェストマ達は場から離れた場合に除外される効果が発動しない。

王宮の鉄壁を早めにドローできて本当に助かった。

もしこれがもう少し遅かったら壁の数や攻撃の手数が足りなかったかもしれなかった。

「バージェストマ・エルドニアを攻撃表示に変更する

カードを１枚伏せ、魔法カード、サウザンドエナジーを発動する

俺の場に存在する全てのLV２の通常モンスターの元々の攻撃力と守備力を１０００上昇させる

ただし、エンドフェイズ時に俺の場の全てのLV２通常モンスターは破壊されるがな」

「…………あれ？」

「スターダスト・ドラゴン／バスターをリリースし、サウザンドエナジーを無効にした場合はお前の場のモンスターは０になる

しかしスターダスト・ドラゴン／バスターをリリースせずに効果を発動させれば、俺のバージェストマの攻撃力は全て３４００になる

スターダスト・ドラゴン／バスターの攻撃力を上回り、５体の攻撃で終わる」

「…………わたし、出てないよ？」

「ティオの蟲惑魔とトリオンの蟲惑魔が並んだ時にX召喚しないからだろうが」

「…………多かった」

「数を減らすのを優先したんだな、直後に湿地草原を発動されたから破壊されたが

フレシアの蟲惑魔をX召喚していれば生き残ったかもしれなかったが……それで、どうする？」

「………………………………ふん」

　フレシアは不機嫌な顔をしてそっぽを向いた。

もう負けは決まっているのだから好きにしろ、そんな所だろう。

「ではサウザンドエナジーの効果で俺の場のバージェストマの攻撃力は１０００上昇した

全モンスターで攻撃だ」

「…………うぐぅ」

　ついでに手札が０枚の状態でスターダスト・ドラゴン／バスターを戦闘破壊したのでドローした。

ドローしたカードは……魂喰らいの魔刀とオレイカルコスの結界だった。

魂喰らいの魔刀だった場合はこのターンでフレシアを倒せなかったから助かったな。

　魂喰らいの魔刀はLV３以下の通常モンスターにしか装備できない装備魔法カード。

装備モンスター以外の全ての通常モンスターをリリースし、リリースしたモンスターの数×１０００だけ攻撃力が上昇する。

４体リリースすれば攻撃力が４０００も上昇するという、まぁまぁ悪くないんじゃないだろうか？　程度のカードだろう。

問題はリリース対象が全ての通常モンスターという強制という点だろう。

どうせ５体存在するんだったら団結の力でいいじゃんってなる。

　でも別に弱いカードではない、あのカードで良いってなるとはいえな。

それに団結の力と違って、最初に上がった攻撃力から自分のモンスターの数で攻撃力が左右されない。

場のモンスターが１体だけだろうと、３体になろうと決まった攻撃力からは変わらない。

これが最大の利点だろう、団結の力３枚装備させろって話になりそうだけどな。

「…………ふんだ」

　フレシアは拗ねて逃げていった。

なんだかんだで勝てると思っていたのだろう、というか今回は相性で勝ったようなものだしな。

別のデッキだったら相当やばかったかもしれない。

「よう俺、終わったな」

「そうだな俺、終わった

次は……俺だったな」

　俺とこちらの世界の俺、どちらの方が強いかって話だった。

お互いに自分が相手とか、どうやって対策しろっていうんだか。

俺も俺も同じ事を考えているのか、同時に溜息を吐いた。

「いつ始める？」

「少し休みたいし、デッキも考えないといけないし……１時間後ぐらいか？」

「じゃあそうしよう

お互い見えない場所の方が良いし、俺は向こうに行ってるぞ」

　俺は少し離れた場所、フレシア逃げた方に向かった。

どうやら慰めたりするつもりらしい。

　まぁそんな事よりも今は俺の方だ。

さて、どんなデッキを使おうかな？