日本のゲームは外国で売れない? 2010年以降、海外でミリオンセラーとなった和ゲー5選

偽物の洋ゲーより本物の和ゲーを

日本のゲームは海外で売れない?2010年以降、海外で売れた和ゲー5選 - トモダチコレクション 新生活
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※「ゼノブレイド」の表記に誤りがありました。10月13日0時28分に修正しました。

日本で新世紀のポケモンかと思うほどの流行りを見せている「妖怪ウォッチ」シリーズだが、海外では同じように時代をリードすることはできなかった。初代はヒットしなかったし、続編の「妖怪ウォッチ2」もIGN本家を含む海外の多くのメディアで低い評価を受けてしまっている。ゲームの品質と斬新さが当時のポケモンに及ばないという単純な問題も否定できないが、それだけが原因ではない。欧米中心の市場に成長したゲーム業界において、日本のゲームはそもそも受け入れられにくくなった。自分と同じ文化圏のスタジオがたくさんの超大作を出している中、わざわざ極東の異国から出たゲームに手を出そうと思わないのだろう。「ゼノブレイド」、「キャサリン」、「NO MORE HEROES」といった日本の近年の新IPはどれも海外メディアで絶賛されたものの、残念ながらミリオンセラーは夢のまた夢。

「NO MORE HEROES」の主人公トラヴィス・タッチダウン

「マリオ」や「ファイナルファンタジー」といった、海外で長年親しまれているシリーズでもなければ、日本のゲームはもう売れないのか。全体的な時代の流れを考えれば残念ながら「その通りだ」と答えるしかないが、不幸中の幸い、フロム・ソフトウェアの「ソウル」シリーズのような例外も存在する。日本で55万本を突破し、2017年2月に海外でも発売予定の「ペルソナ5」もそういう例外になる素質があると私は見ている。

海外で売れるゲームとそうでないものの違いはどこにあるのか。この記事では、2010年以降に発売されて海外で100万本以上の売上を記録した日本のゲームを5つ紹介する。新IP、もしくはそれまで海外で人気のなかったシリーズでなければならないという条件もつけておこう。なぜこの選出なのかというと、それらがなぜ今になって売れたかを考察し、読者にあるメッセージを伝えたいからだ。

各タイトルの売上本数はVGChartzのデータを基にしている。

トモダチコレクション 新生活 (Tomodachi Life) 海外売上本数:324万本

「トモダチコレクション 新生活」の海外タイトルが"Tomodachi Life"に決まったとき、嬉しさと同時に不安を覚えた。任天堂はこの作品からにじみ出る日本っぽさをあえてアピールする作戦に出たわけだ。大胆な賭けだが、過去にも成功事例がある。90年代、バンダイの「たまごっち」も"Tamagotchi"として欧米に進出して、日本同様に大ヒットした。"Tomodachi Life"が海外で発売された初週は任天堂のタイトルにしては地味な結果を出したが、ロングセラーとなり、新IPであるのにも関わらず海外で300万本を突破することができた。さらに凄いのは、ヨーロッパで同時期に発売したWii Uの超ビッグタイトル「マリオカート8」(206万本)とほぼ同じ売上本数(201万本)を達成したことだ。

スプラトゥーン (Splatoon) 海外売上本数:318万本

このご時世、日本の新IPがいきなり海外でミリオンセラーになるのは珍しいが、300万本以上の売上を記録することはまずない。「トモダチコレクション 新生活」にしても本作にしても、「任天堂だから」と言って片づけてしまいたくなる気持ちもわかるが、消費者はいちいちメーカーを確認していない。誰でもすぐに馴染めるカトゥーンのようなグラフィックと、流行りのTPSに独自の要素を加えたシステムは、老若男女のゲーマーを夢中にさせられる魅力を誇っている。そういう意味では「マリオ」や「ゼルダ」といった有名シリーズの作品でなくとも極めて任天堂らしいゲームといえる。筆者が旅行でイタリアを訪れた際に「スプラトゥーン」に夢中になっている子供たちを見たが、IGN編集部のXboxファンである野口さえもスマートフォンの待ち受け画面をスプラトゥーンにしている。イタリアの子供から日本のコアゲーマーまで虜にすることができれば間違いなく本物だろう。

ファイアーエムブレム 覚醒 (Fire Emblem: Awakening) 海外売上本数:147万本

1990年から存在している「ファイアーエムブレム」だが、初めての海外進出まで実に12年間がかかった。"世界の任天堂"というイメージがあるが、「ファイアーエムブレム」だけは最初から海外で売れないと決めつけていただろうか。確かに、シミュレーションRPGは海外でニッチなジャンルで、「マリオ」や「ゼルダ」と同レベルの成功を果たすのは難しそうだ。ストーリー重視のRPGは、それだけローカライズも大変なので、割に合わないと判断したのだろう。結果として、「ファイアーエムブレム」は任天堂のタイトルにしては珍しく外国人に馴染みが薄い。だが、2002年に初めて海外で発売されてからはコアなRPGファンの中で徐々に話題となった。それからさらに10年、「ファイアーエムブレム 覚醒」は発売し、日本(52万本)よりもむしろ海外(147万本)で売れるシリーズになった点が興味深い。日本のRPGが圧倒的に不足している時代に、丁寧に作り込まれた本作が海外のJRPGファンにとって嬉しかったのだろう。これといった新しいスパイスがなくても、こだわって料理すれば必ず客が来る、ということなのだろう。

二ノ国 白き聖灰の女王 (Ni no Kuni: Wrath of the White Witch) 海外売上本数:134万本

レベルファイブがどのようにスタジオジブリとのコラボを実現させたかはさておき、「二ノ国」がスーパーファミコンの頃に出ていれば今頃「クロノトリガー」と肩を並べるくらいの存在になっていたと本当に思う。王道であるはずの「ファイナルファンタジー」はどんどんRPGから離れて失敗し、どこまでも王道を行く「二ノ国」は成功した。日本のゲームが好きな外国人の多くは今も極めてトラディショナルなRPGを求めていることにもっと気づいてほしい。それにしてもジブリの世界を自由に探索できるRPGが日本であまり売れなかったのは不思議でならない。コンソール離れした日本のゲーム市場を悲しく思うと同時に、このような日本らしいゲームが海外で売れたことがとても嬉しい。

ペルソナ4 ザ・ゴールデン (Persona 4: Golden) 海外売上本数:100万本

海外市場を狙う場合、欧米っぽい作品を目指すのは当然と思われるのかもしれない。しかし、それでは日本の開発者が欧米のスタジオにかなわないのも目に見えている。「ペルソナ4」は日本を舞台としたゲームで、極めて日本的なテイストの作品である。なのに、海外でミリオンセラーとなった?「ペルソナ」シリーズが海外でも前々から親しまれていたから? いいえ、このシリーズは第3作目の「ペルソナ2 罰」までジャパンオンリーのタイトルだったし、当時は7万部しか売れていない。「ペルソナ4」が売れたのは、欧米人が絶対に真似できない独特な魅力を有している作品だからだと思う。日本の深夜アニメや学園モノといった、それまでに海外で馴染みの薄かったものがインターネットの普及で一部の人々の中で流行ったことも手伝ったのだろう。だが、たとえそれがなかったとしても、本当に面白いものには普遍性があり、異質であっても受け入れられるということだろう。狙わなくても海外の人々の心を打つことが可能であることを証明している。「ペルソナ5」が引き続きそれを見せてくれるだろう。

これらの5タイトルはいずれも特に海外市場を狙って作られたわけではない。日本で売ろうとして作られたのかというと、別にそういうわけでもない。開発者は独自のセンスを信じて、面白いと思うものを作った。たったそれだけのことだ。それは日本人であるが故に、日本的なテイストになったのかもしれないが、偽物の洋ゲーより本物の和ゲーの方が評価されるのは、世界のどこへいっても同じだと思う。

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