むかし、むかし、天平入りの山に古ダヌキがいました。
炭焼小屋のじいさまのところに毎晩遊びに来ていました。
あるとき、タヌキがじいさまに知恵くらべをしようと言ったそうです。
じゃんけんして勝った方から問題を出すことにしました。
じいさまが勝って第一問を出すことになりました。
それは一丁のとうふを百に切って、一こを一口で食べることでした。
タヌキはそんなことは簡単なことだと思って見たら、
一丁を半分にして残りが小さく切ってありました。
それで百だったそうです。
いくらタヌキの口が大きくても、
一丁の半分はタヌキの口には入りませんでした。
それでタヌキの負け。
勝ったので、またじいさまが問題を出しました。
今度は動かないで体を倍にすることでした。
タヌキは早速腹鼓を打って腹をふくらませました。
じいさまは、そっととげのあるバラの小枝を、
ふくらんでくるタヌキの腹に向けておきました。
だんだんふくれてくるタヌキの腹が、
バラの小枝のとげにプッと刺さったから空気が漏れて、
タヌキがいくらふくらましても大きくならず、
だんだん小さくなっていきました。
それで、また、タヌキが負けてしまいましたとさ。