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妹のために魔法少女になりました 作者:槻白倫

あふたーすとーりー

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かれんとカレンと映画館

お久しぶり過ぎて申し訳無いです。

リハビリがてら、今回はちょい短めに書きました。

ほぼ一年放置してしまって、本当に申し訳無いです……。

 休日。


 これといって特にやる事が無い時、俺は映画を見に行く事がある。


 とはいえ、興味のある映画がやってる時に限る。適当に映画を見て外れを引いた時のがっかり感は凄まじいので、適当に映画を見たい時はDVDをレンタルしたりする。


 なんちゃらビデオとかいう契約して見放題とか言うのはちょっと分からない。深紅が登録しているみたいなので、よく深紅の家で見ているので、実質深紅の家は映画館みたいなところはある。言えばジュースもポップコーンも出て来るし。


 映画館と言えば、碧の家には専用のシアタールームがあり、大きなスクリーンで見る事が出来る。こっちもジュースとポップコーンが出てくるけど、見るのは大抵スプラッター映画なのであまり使用しない。碧はスプラッター系の映画が大好きなのだ。


 ともあれ、今日は気になっていた映画の公開日なので、和泉家(映画館1)浅見家(映画館2)ではなく、本当に映画館に来ている。


「お兄ちゃんが見たかったのってこれ?」


 そう言って、花蓮(・・)がポスターを指差す。


「これ、ホラー映画だよね……」


 ホラー映画が苦手な花蓮(・・)が嫌そうに顔を歪める。


「うん。楽しみだったんだぁ」


 二人の言葉に頷きながら、ぱしゃりとポスターの写真を撮る。


 いつもなら一人で来る映画も、今日は愛しの妹二人と一緒に来ている。


 そう、ダブル花蓮と一緒なのだ!!


 いつか三人で何処か行きたいなぁと思ってたから、嬉しいなぁ。


 因みに、二人とも名前が同じなのでかれん(・・・)カレン(・・・)、と書類上は表記している。漢字は同じだけれど、読み仮名を変えて貰っているらしい。ずっと一緒に居た方がかれんで、また一緒に過ごす事が出来る方がカレンだ。


「よし、行こっか」


「はーい!」


「えぇ……本当に見るの?」


「うん、見るよ」


「大丈夫! 私が付いてるから!」


「うぅ……来なきゃ良かったかも……」


 カレンに手を引かれ、かれんは呻きながら歩く。


 ジュースとポップコーンを買い、シアターへと入る。


 俺を真ん中に挟んで座るので、真ん中の俺が一つだけ買ったポップコーンを持つ。


 因みに、今日見るホラー映画は海外の映画なのだけれど、日本版の主題歌を輝夜さんが歌っているらしく、その関係で貰ったチケットを俺達三人に譲ってくれたのだ。


「これ、私見たことないけど大丈夫かな?」


「大丈夫だと思うよ。続編だけど、単体でまとまってる映画だから。どの話から見ても楽しめるよ」


「そっか! ふふっ、楽しみだなぁ」


「私はどの話から見ても楽しめなさそう……」


「かれん、本当にホラー映画苦手なのね」


「カレンこそ、なんで平気なのよぉ……」


「スリルがあって良くない?」


「スリルならアクションで良いでしょ……」


「アクションはまた別の楽しみ方だよ!」


「どっちもどっちー……」


 二人でお喋りをしながらも、こわごわとしながら俺の手を握るかれんと、ワクワクした様子で俺の手を握るカレン。


 俺としては嬉しいのだけど……どうしよう……ジュース飲めないしポップコーン食べれない……。


 困っている間に予告が始まり、二人は黙ってスクリーンを見る。


 ここまで来たらしょうがない。飲み物は諦めよう。


 飲み物への未練を断つ頃に、映画が始まった。


 開始早々、驚かすシーンが映り、ビビったかれんが俺の手を強く握りしめた。


 びきびきと嫌な音を立てる手。


 そこから、長い長い俺の戦いが始まった。





「ひゃー! 楽しかったねー!」


 映画が終わると、カレンは満足げな表情で言う。


「そ、うだね……」


 どうしてだろうか。片手の感覚が無い。不思議だね。人の手ってこんなに血の気が引くものなんだね。大丈夫かな? さっきから何触っても手に感触が帰って来ないんだけど……。


「も……二度とホラー見ない……っ」


 涙目になって言うかれんに、カレンが笑いながらハンカチで涙を拭う。


「あははっ、次は家で見よっかー! 叫びながら見るホラー映画もいいもんだよ?」


「見ない! 絶対見ないー!」


 カレンの提案に、かれんは涙を流しながら反発する。


 余程怖かったと見えるけど、俺は今の自分の手の状態の方が怖い。


「映画も終わったし、御飯食べてから帰ろっか」


「うん! 私ハンバーグ食べたーい!」


「……温かいスープ飲みたい」


「じゃ、ファミレスにしよっか」


 かれんとカレンは手を繋いで映画館を後にする。


 俺はその後ろを歩く。


「ていうか、サブタイ詐欺じゃ無かった? 天使のせいなら無罪って……そもそも罪認めてたし、無罪にはならないって言ってたし」


「それは思った。でも、ホラーとサスペンスが良い塩梅でストーリーは良かった」


「ビビってた割にちゃんと見てんじゃーん」


「見ないとチケット代勿体無いでしょ。……あー、駄目だ。黙ってると死体が起き上がるシーン思い出しちゃう……」


「あー、あれ怖かったねー。ふとっちょの死体が走って――」


「あー言わないで!! 怖いから!! 思い出しちゃうから!!」


「にっしっしっ、かれん、今日一人で寝られる~?」


「うぅ……良いもん、お母さんと一緒に寝るから……」


 笑顔を浮かべ、困った顔を浮かべ、表情豊かにお喋りを楽しむ二人の妹。


 元が同じだから気も合うのだろう。でも、二人は所々で確かな違いがある。だから元々一人の人間だとしても、同一人物という訳では無い。


 見ての通り、かれんはホラーが苦手なのに対して、カレンはホラーが大好きだ。そこのところは、碧と気が合うらしく、時折一人で碧の家に遊びに行って一緒に映画を見ている。


 二人はもう一人の人間だ。こうやって楽しそうにお喋りをしている二人を見ると、助けられて本当に良かったと思う。


 それに可愛い妹が二人になるという事はやはり嬉しさ二倍だ。毎日楽しいし、二人も楽しそうにしている。


「お兄ちゃん! パンフレット買って帰ろー!」


「兄さん、ステッカー買って深紅さんのバイクに貼ろう」


 言いながら、物販コーナーに足を向ける二人。


 かれん、貼るのは賛成だけど、せめてヘルメットにしてあげて。


「うん、今行くよ」


 笑顔を浮かべる二人の後を追う。


 手の感覚は、未だ戻らない……。





 ※ご飯を食べてる間に治りましたとさ。めでたしめでたし。


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