北京冬季五輪のスノーボードで不可解な採点やジャッジのミスが相次ぎ、非難が噴出している。男子ハーフパイプで初の金メダルに輝いた平野歩夢(TOKIOインカラミ・新潟県村上市出身)も疑念を隠さず「どこを見ていたのか聞きたい。命を張っている選手のためにも整理させた方がいい」と訴え、主観的な印象を数値化する現行方式の限界を指摘した。
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11日の決勝2回目。平野歩は自身しか大会で決めたことがない「トリプルコーク1440」(斜め軸にした縦3回転、横4回転技)を組み込んだ圧巻の試技をミスなく完走した。だが表示された得点は、平野歩ほどは試技の難度が高くない印象だった首位選手に0・75点及ばず、会場では各国選手や関係者からブーイングが起こった。
米国のテレビ解説者が「あり得ない」と激怒し、会員制交流サイト(SNS)も炎上。3回目に2回目と同じ試技で完成度をより高く通し、4・25点伸ばして優勝した平野歩は「(回転数など)全部を(数値で)測れるようなシステムを整えていくべきだ」と求めた。
▽批判殺到
7日の男子スロープスタイルでも“ミスジャッジ”があった。マックス・パロット(カナダ)が90・96点をマークして優勝を決めた試技。横4回転半技の加点要素でグラブ(板をつかむ技)が認定されたが、実際につかんだのは右膝だった。
わずか2・26点差で2位だった蘇翊鳴(中国)は、今大会でただ一人、横5回転の大技を決めた。蘇を指導する日本人コーチの佐藤康弘さんは「悔しいが、ジャッジも人間だから仕方がない」と潔かったが、SNSでは「蘇は金メダルを盗まれた」と批判が殺到した。
▽危険度増
今大会のハーフパイプは高さが7・2メートルで、2002年ソルトレークシティー五輪より2・3メートルも高い。20年前は横3回転や斜め軸の縦1回転、横2回転半が最高難度だった技も、平野歩が3回とも決めたトリプルコーク1440へと急速に進化した。年々、危険度が増す中で限界を押し上げる挑戦を続ける平野歩は「競技をやる人は命を張ってリスクも背負っている」と、鍛錬の成果が正確に評価されることを切に願った。(共同)