福岡県済生会福岡総合病院
福岡市中央区天神1-3-46
名前 定永 倫明 副院長
職歴経歴 1990年に九州大学を卒業後、九州大学医学部第二外科に入局する。
2年間の研修と大学病院関連病院勤務を経て、2008年から福岡県済生会福岡総合病院に勤務している。
福岡県済生会福岡総合病院の特徴をお願いします。
福岡県済生会福岡総合病院は地域支援病院、三次救急医療機関、地域がん診療連携拠点病院、そして厚労省指定の臨床研修病院です。福岡市内にある非常に大きな基幹病院で、地域の中核となる役割を果たしている病院の一方で、ベッド数は380床とそこまで多くなく、バランスの取れた病院です。診療科の間の垣根が低く、各診療科が協力して診療にあたる体制が整っていますので、総合病院としての強みを発揮しやすい病院だと思います。
定永先生がいらっしゃる消化器外科の特徴をお聞かせください。
福岡市内でも胃がんや大腸がんの手術が多い病院です。特に重症な併存疾患を有する症例が多く、例えば虚血性心疾患や透析中の患者さんなどの重症で、重篤な併存症があったとしても、別の診療科との連携によって、安全に手術を行うことができます。急患手術が多く、消化器外科のほぼ25%が緊急手術です。腸閉塞や急性虫垂炎、消化管穿孔といったものも多いですが、腹部の交通外傷や術後に集中治療を必要としたり、ほかの診療科と連携して治療にあたる必要がある重症例なども多く扱っています。
初期研修医の特徴をお聞かせください。
当院を志望する研修医は「非常に忙しい病院だ」ということが分かっていて、それでもここで経験を積みたいという高い志を持って集まってきています。研修医同士が非常に仲が良く、お互い切磋琢磨して頑張っている印象があります。特徴として、毎週火曜日の救急症例カンファレンスが挙げられます。全ての医師、コメディカルスタッフが講堂に集まり、テーマごとに2年目の研修医が司会をして、1年目の研修医が発表します。今週は破傷風がテーマでした。少ない症例ではありますが、つい最近、発症して人工呼吸器で管理した症例があり、このテーマになりました。発表後には破傷風についてのミニレクチャーがありました。上手なプレゼンテーションを行うのは最初は難しいですが、繰り返し経験していくことが大事です。このカンファレンスは私たちも非常に勉強になりますし、研修医の成長も見ていくことができます。もちろん、ローテートしている先でのカンファレンスもあります。
研修医の先生方の男女比はいかがですか。
当院は1学年12人で、女性は大体2割から3割です。学年によっても異なり、1、2人の年もあれば、多いと4、5人の年もあります。
女性の研修医に対するケアや働きやすい環境作りに関しての取り組みはありますか。
当院は働き方改革の一環として、男性女性に限らず、昨年から当直の翌日は基本的に仕事をオフにして休ませています。女性研修医で体調が悪いときは無理をせずに休ませるようにしています。
指導にあたって、心がけていることを教えてください。
当然ですが、研修医も一人一人個性が違います。活発的な人もいれば、やや内向的な人もいますので、できるだけ個性に応じた指導をするようには心がけています。同じように伝えても捉え方が違うケースもあるかもしれないので、ある程度は配慮しながら指導するようにしています。研修医の中でも1年目、2年目、レジデントである専攻医など、それぞれの立場に応じて指導しないといけません。要求される目標がそれぞれの立場で違いますので、そういったことも意識して指導しています。
今の研修医についての印象はいかがですか。
私たちの頃も学生時代の病院見学はあったのですが、私は行った覚えがなく、周囲の人に聞いても同様です。過去に比べるとシステムが変わっていますが、今の医学生は5年生、6年生のときから病院見学に来たり、研修医の採用面接などを受けたりしていますので、そういう意味ではしっかりしているなという印象があります。
研修医の働き方についてですが、ご指導されている中での印象はいかがでしょうか。
私が研修医のときは休日にも病院に来て症例を見ていましたが、それ自体は苦痛に思っていませんでした。若いときからずっとやっていたからなのですが、ただトータルの時間数などを考えてみると、やはり十分な休養が取れないと精神的に苦痛になることに繋がる場合もあるでしょう。その点、今の働き方改革は非常にいい取り組みです。なお、肉体的に働く時間だけでなく、精神的なケアも大事だと思っています。
研修医の出身地に関して、福岡県出身者の割合は多いですか。
福岡県には医学部のある大学が4大学ありますので、福岡県の大学出身者が多いのは確かです。また、もともとの出身は福岡県で、他県の大学を卒業して戻ってきた人もいますし、福岡県に全く関係ない人もいます。そのため、出身地によって、採用に影響することはありません。
福岡県済生会福岡総合病院を志望するのはどういう医学生が多いですか。
学生時代に1回は見学に来ていますから、そこで自分の志望する、希望する雰囲気に合っている人は選考面接に来て、マッチングで希望するようです。こちらが全く知らない医学生や病院のホームページだけ見て志望してくる医学生は少ないですね。最近は4年生の見学もお受けしています。少ないですが、ときどきいます。多いのは5年生の3月、6年生の4月、5月です。夏休み中は5年生が来ており、ちなみに今日も来ています(笑)。
見学者は毎年、何人ぐらいですか。
正確な数は把握していませんが、私のいる外科だけだと年間60人ぐらいですね。1回ではなく、2回来る学生もかなりいるので、延べ人数です。
先生の研修医時代はいかがでしたか。
私たちの頃は医局に入局する制度でした。医局はそのあとずっとついて回り、同門という形になりますから、教える方も教わる方も既に外科医だという形なんです。そこで外科の基本をしっかり指導してもらったのはもちろん覚えていますが、それ以上に社会人としての礼儀や常識などを厳しく指導してもらったのが今思うと、非常に有り難かったです。
どういう指導が心に残っていますか。
本当に基本的なところとしては時間を守ること、臨床医としてまずは身だしなみをきちんとすること、爪をきちんと切っておくことなどですね。今の私もそういったことを研修医にできるだけ言うようにはしています。
当時はやはり女性で外科に入局する人は少なかったですか。
少なかったですね。私より上の代はさらに少なく、私の頃に増えてきたとはいえ1割もいませんでした。今はその頃の倍ぐらいには増えています。中でも乳腺を専攻したいという女性医師が増えています。
印象に残っている研修医はいますか。
優秀な人からいつまでも心配だなと思う人もいました(笑)。当院は研修医、指導医と一緒に年に1回ほど山登りをします。そのときに別のグループの方が転んで、腕を折ったことがありました。その時当院の研修医が率先して助けに入り、簡単な応急処置としての固定をして、安全に下山するような指示をしていたので、大したものだと感じました。やはり救急外来でそういった患者さんに何度かあたっていたのでしょうね。
研修医の先生方に「これだけは言いたい」ということはどのようなことでしょうか。
非常に急患症例が多いので、とにかく急患の初期対応がきちんとできる研修医になってほしいですし、後輩の指導にも率先して取り組んでもらいたいと思っています。
研修医同士の雰囲気はいかがですか。
1年目と2年目がペアになって当直しますので、1年目と2年目の距離は近いです。2年目が1年目をきちんと指導している姿を見ると、1年違うと大きく違うものだと思いますね。
新専門医制度について、ご意見をお願いします。
昨年度からの制度ですので、皆がよく分かっていないところもありますが、研修の目標設定や研修のシステムを整えることが重要です。一方で、事務手続きの書類の煩雑さなど、色々な制限があったり、私たちが大変になった部分もあります。
どのぐらいの方が専門医研修に残られましたか。
今年度は7人が残りました。当院の基幹病院のプログラムで残った人もいるし、大学病院のプログラムに乗り、大学からの派遣という形であっても当院に残った人もいます。外科が2人、産婦人科が1人、形成外科1人、内科が1人、循環器科が2人でした。
12人中7人は多いですね。
やはり仕事がしやすいというのが大きいのでしょう。ただ、ずっと当院だけというのは良くないです。どこかで大学やほかの病院を回ったうえで、5年後、10年後にスタッフとして当院に戻ってきてほしいですし、そういう人も大勢います。私も5、6年目のときに当院に一回、レジデントのような形で勤務し、そこから13、14年ぐらい経って、戻ってきたんです。若い頃にお世話になった恩返しではないですが、もう一回行きたいなとは思っていました。
医学生にメッセージをお願いします。
臨床実習や病院見学を通して、どういう医師になりたいのかをじっくり考えましょう。それが医師としての原点になります。診療科までを学生のときに決める必要はありませんし、研修医の2年目の後半に専攻の登録をするときでいいのです。色々なことを体験してからで問題ありません。ただ、救急疾患をしたい、がんをしたい、お産を含めた産婦人科疾患をしたい、小児科で子どもを救いたいといった漠然とした将来像を考えておきながらローテートした方が最初のイメージと違うことがあったときに受け止めることができます。そのためにも、色々なことを考えておくことが大事です。
福岡県済生会福岡総合病院のPRをお願いします。
非常に忙しい病院ですが、多くの症例、特に救急症例を通して、充実した研修生活を仲間と一緒に過ごすことができる病院です。病院全体で研修医を教育しますので、宜しくお願いします。