日本大百科全書(ニッポニカ)「建物」の解説
建物
たてもの
建物は土地の定着物であるが、欧米諸国の法の下では、土地と一体をなすものとされているのに対し、わが国の民法の下では、土地とは別個の不動産とされている。その個数は、土地とは異なり登記簿によって定まるのではなく、社会通念によって定められる。一般的には、物理的な連続性が基準とされて、一棟、二棟という数え方をする。もっとも、「建物の区分所有等に関する法律」第1条は、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分をそれぞれ独立の所有権(区分所有権という)の客体となることを認めている。建物は元来、動産である複数の物が一定の構造物を形成して土地に定着しているものであるから、その建築過程のどの段階から土地とは独立の不動産たる建物となるかが問題となる。この点については、工事中の建物であっても、すでに屋根および囲壁を有し、土地に定着した1個の建造物として存在するに至れば足り、床および天井などはこれを備えていなくてもよいとした判例(大審院判決昭和10年10月1日)が参考となる。
[竹内俊雄]